
2026年11月11日、高畑充希さんは12年ぶりのアルバム『I’m All Yours』を発売します。映画『国宝』の春江役では第49回日本アカデミー賞の優秀助演女優賞を受け、『ウィキッド』シリーズではエルファバの日本語吹替も担いました。歌でも芝居でも第一線を走る高畑さんですが、小学生から中学生にかけては、舞台や芸能事務所のオーディションを十数回受けて、すべて落ちていました。
東大阪で育った高畑充希さん 小学生で決めた舞台女優の夢
高畑充希さんは1991年12月14日、大阪府東大阪市で生まれました。舞台を観るのが好きな両親の影響で、小学生のころから舞台女優を目指すようになります。幼いころから『オペラ座の怪人』や蜷川幸雄さんの作品に親しみ、『レ・ミゼラブル』などミュージカルのサウンドトラックを好んで聴いていました。
夢のために、コーラスを習い、クラシックの先生について声楽も学びます。ただ、小学校から中学校までの間に受けたオーディションは十数回、そのすべてが不合格でした。それでも高畑さんは、もし受からなかったら早稲田大学の演劇研究会に入ろうと考え、小学校低学年から塾に通って勉強を重ね、四天王寺中学校へ進みました。
中学では軽音部でボーカルを担当し、全国の中学・高校の軽音楽系クラブが競うスニーカーエイジのグランプリ大会にも出場しています。芝居への思いと歌への思いは、この頃からいっしょに育っていたのでしょう。
応募9621人の中から主演に 中学生でつかんだデビュー
道が開けたのは2005年、中学在学中のことです。ホリプロが創業45年を記念して開いた『山口百恵トリビュートミュージカル プレイバック part2〜屋上の天使』の出演者オーディションで、高畑さんは9621人の応募者の中から主演のすもも役を勝ち取りました。シンデレラガールとして女優デビューを果たします。
2007年には四天王寺高校ではなく東京の八雲学園高等学校に進み、本格的に女優の仕事を始めました。同じ年、高畑さんのデモテープを聴いたコブクロの小渕健太郎さんがその歌声に惚れ込み、自らプロデュースを申し出ます。2007年6月、シングル「大切なもの」で、「みつき」の名前で歌手デビューしました。
「大切なもの」は、高畑さん自身が玉城ミチル役で出演した映画『ドルフィンブルー フジ、もういちど宙へ』の主題歌に、同じシングルの「ひとつだけ」は木皿泉さん脚本のドラマ『セクシーボイスアンドロボ』の主題歌に選ばれています。女優と歌手、ふたつの道を同時に歩き出した年でした。
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6年間演じたピーターパン 舞台で力をつけた10代
2007年から2012年までの6年間、高畑さんはミュージカル『ピーター・パン』で8代目ピーターパンを務めました。さらに『奇跡の人』のヘレン・ケラー役、『美男ですね』の桜庭美男・美子の二役、『コーヒープリンス1号店』のコ・ウンチャン役と、舞台で次々に主演を任されていきます。デビューからずっとショートカットで、ピーターパンの印象もあってボーイッシュなイメージが定着していました。
映像の仕事も少しずつ増えていきます。TBS『3年B組金八先生』第8シリーズでは田口彩華役を演じ、2008年には毎日放送「ドラマ30」の通算100作目『ナツコイ』でヒロインの後藤なつきに抜擢されました。主題歌の「夏のモンタージュ」は竹内まりやさんの作詞・作曲で、高畑さんが歌っています。2010年には日本テレビ『Q10』で河合恵美子を演じました。
2010年4月には法政大学キャリアデザイン学部に進み、写真サークルに入ります。舞台の主演を重ねながら、しばらくは落ち着いた大学生活を送っていました。
『ごちそうさん』の歌声で高畑充希さんの名前が全国へ
大きな転機は、大学4年だった2013年11月に訪れます。NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』で、ヒロインの義妹・西門希子を演じることになったのです。オーディションで出演が決まったあと、高畑さんが出ていたミュージカル『スウィーニー・トッド』を観た脚本家の森下佳子さんがその歌声に惚れ込み、高畑さんに当てて歌の場面を書き足しました。
劇中歌「焼氷有り〼の唄」で見せた歌と芝居は、一気に注目を集めます。2014年3月には、劇中歌やこれまでのシングル、出演作で歌った曲を集めたアルバム『PLAY LIST』を「高畑充希」名義で発売。同じ年、『未来ロケット』でバラエティ番組に初めてレギュラー出演し、7月には『軍師官兵衛』の糸役で大河ドラマにも初めて出ています。
2015年は、フジテレビ『問題のあるレストラン』の川奈藍里役でザテレビジョンドラマアカデミー賞助演女優賞を受賞。ディズニー映画『シンデレラ』では主人公エラの吹替を務めました。長く出演を望んでいた蜷川幸雄さん演出の舞台『靑い種子は太陽のなかにある』にもヒロインとして立ち、読売演劇大賞の優秀女優賞と杉村春子賞を受けています。
2564人から選ばれた『とと姉ちゃん』の小橋常子
2016年4月、高畑さんは応募者2564人のオーディションを経て、連続テレビ小説『とと姉ちゃん』のヒロイン・小橋常子を演じます。これが連続ドラマ初主演でした。激動の昭和を駆け抜ける常子を演じきり、橋田賞新人賞を受けています。
同じ年の6月には、岩田剛典さんと共演した『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』で河野さやかを演じ、映画でも初主演。この作品で第40回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞しました。映画『怒り』の薫役、月9『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の日向木穂子役も重なり、ORICON STYLEの年間ブレイク女優ランキングでは1位に選ばれています。
2017年には日本テレビ『過保護のカホコ』の根本加穂子役で、民放の連続ドラマに初主演。2019年の『同期のサクラ』では北野サクラを演じ、ザテレビジョンドラマアカデミー賞主演女優賞を受けました。映画『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』の安堂美咲役では、第43回日本アカデミー賞の優秀助演女優賞にも選ばれています。
『ウェイトレス』から『国宝』へ 30代の高畑充希さん
30代に入っても、舞台は高畑さんの大切な場所です。2021年にミュージカル『ウェイトレス』で主演のジェナを演じて菊田一夫演劇賞を受賞し、2022年には『ミス・サイゴン』でキムを演じました。2025年4月からは『ウェイトレス』の再演で、東京、名古屋、大阪、福岡の劇場を回りました。
映像では、2023年の映画『バービー』でバービーの吹替を担当し、声優アワードの外国映画・ドラマ賞を受賞。2024年には大河ドラマ『光る君へ』で藤原定子を、Prime Videoの『1122 いいふうふ』では主演の相原一子を演じました。
2025年6月公開の映画『国宝』では、主人公・喜久雄の幼なじみの春江を演じ、日本アカデミー賞の優秀助演女優賞を受賞。10月公開の実写版『秒速5センチメートル』では篠原明里を演じました。2026年3月公開の『ウィキッド 永遠の約束』でもエルファバの吹替を続け、最終章について「とても胸がきゅっとなり、人生を考えさせられるような壮大な物語になっています」と語っています。
読書と舞台観劇が好き 仕事の外の高畑充希さん
高畑さんの趣味は、読書、舞台観劇、そして食べることです。子どものころから親しんできた舞台は、演じる場所であると同時に、観て楽しむ場所でもあり続けています。
髪型の移り変わりも、ファンにはおなじみです。デビューからショートカットでしたが、2011年の終わりごろから伸ばし始め、舞台『アリス・イン・ワンダーランド』ではツインテールに。『とと姉ちゃん』の宣伝ポスターでは長い髪を三つ編みにしていました。2019年の『メゾン・ド・ポリス』では20センチほど切って初めての刑事役に臨み、2021年12月には自身のInstagramで、さらに短いショートカット姿を公開しています。
仕事仲間との縁も長く続いています。月9での共演をきっかけに、有村架純さん、森川葵さんとは共演後も3人で誕生日を祝う仲になりました。『Q10』で共演した前田敦子さん、柄本時生さん、池松壮亮さんとはフジテレビ『ボクらの時代』に4人そろって出演しています。NHK『おげんさんといっしょ』での「お父さん」役も、多くの人に親しまれてきました。
12年ぶりのアルバム『I’m All Yours』と20周年のステージ
2025年8月30日、高畑さんはデビュー20周年を記念したプロジェクトの第1弾として、配信シングル「Over You」を発表しました。そして2026年11月11日、ユニバーサル ミュージック移籍第1弾となるアルバム『I’m All Yours』を発売します。椎名林檎さんが舞台『宝飾時計』のために書いた「青春の続き」、Penthouseの大原拓真さんと浪岡真太郎さんによる「令和Lady恋愛賛歌」に加え、石崎ひゅーいさん、尾崎世界観さん、日食なつこさん、Bialystocksさんらの書き下ろしを収めた全9曲の予定です。
2027年1月11日には、東京ガーデンシアターで『高畑充希 20th Anniversary Project「I’m All Yours」Premium Live』を開きます。ワンマンライブは、2015年の10周年ライブ以来12年ぶりです。アルバムについて高畑さんは「今まで歌ってこなかったようなタイプの曲も収録されているので、私のことをよく知らない方にも楽しんでいただけたら嬉しいです」とコメントしています。
十数回のオーディションに落ちた少女は、9621人の中から主役をつかみ、舞台、朝ドラ、映画、吹替へと歌と芝居の場所を広げてきました。20周年の節目に届くのは、尊敬するアーティストたちが高畑さんのために書いた歌です。新しい声に出会える日を、楽しみに待ちたいと思います。
写真: Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan / CC BY 2.0 (Wikimedia Commonsより)


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