吉高由里子さん 原宿でスカウトされた高校生が紫式部と『黒牢城』の千代保を演じるまで

吉高由里子 女性芸能人
写真: acrofan.com / CC BY-SA 3.0(Wikimedia Commons)
吉高由里子の写真

『黒牢城』の千代保とNetflix初主演 いまの吉高由里子さん

2026年6月19日に公開された黒沢清監督の映画『黒牢城』。米澤穂信さんの小説が原作で、黒沢監督にとって初めての時代劇です。本木雅弘さん演じる荒木村重が心の支えにする妻・千代保を演じたのが、吉高由里子さんです。

その少し前、2025年12月からはPARCO劇場の舞台『シャイニングな女たち』に主演しました。作・演出は蓬莱竜太さん。他人の告別式に紛れ込んではビュッフェを食べて帰る女性・金田海を演じ、2026年1月にかけて大阪、福岡、長野、愛知を巡っています。さらにNetflixの新しいシリーズ(タイトル未定)では、Netflix作品に初めて出演し、いきなり主演を務めます。ムロツヨシさんと、倦怠期を迎えた夫婦の岸田かおと岸田衛を演じるロマンティックコメディーで、脚本は大河ドラマ『光る君へ』でも組んだ大石静さんです。発表のとき吉高さんは「恐ろしいような心強いようなメンバーですが、そわそわワクワクしています」とコメントしました。

2024年には大河ドラマで紫式部を演じた吉高さん。ところが芸能界に入ったとき、女優への憧れはまったくなかったといいます。

詩集に残った少女と原宿でのスカウト

吉高由里子さんは1988年7月22日生まれ、東京都の出身です。小学6年生のとき、思いがけない出会いがあります。詩人の銀色夏生さんが用事で訪れた小学校で、新入生のお世話をしている吉高さんをたまたま見かけ、その振る舞いに心をひかれたのです。

銀色さんはのちに吉高さんを探し出し、写真を撮らせてほしいと手紙を送りました。家の前や近所の公園で撮影した写真は、詩集『バイバイまたね』に収められています。その少女がのちに活躍する吉高さんだと銀色さんが知ったのは、友人に教えてもらってからでした。

高校1年生のとき、原宿で買い物をしていた吉高さんは、芸能事務所のウィルコーポレーションからスカウトされます。声をかけてきたのが女性だったので、気を許して連絡先を教えたそうです。女優になりたいという気持ちは、このときまったくありませんでした。その後、事務所がアミューズに吸収合併されたことで、アミューズ所属となります。同じアミューズに所属する女優の村川絵梨さんは中学時代の先輩だったと、吉高さん自身がXでつづっています。

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『紀子の食卓』で新人賞を受けたデビューのころ

最初の映画出演は、2005年公開のオムニバス映画『ZOO』の一編「SEVEN ROOMS」でした。2006年には映画『紀子の食卓』で島原ユカを演じ、第28回ヨコハマ映画祭の最優秀新人賞を受賞します。同じ年にはテレビ朝日『時効警察』の第6話で真弓を演じるなど、ドラマにも少しずつ出演していきました。

10代のころからCMにも登場しています。2004年にはナムコのゲーム『ゼノサーガII』、2004年から2005年にかけてはネスレ日本のキットカットのウェブCMに出演しました。

2007年には映画『転々』でふふみを、2008年には関西テレビのドラマ『あしたの、喜多善男〜世界一不運な男の、奇跡の11日間〜』で宵町しのぶを演じています。同じ2008年には大河ドラマ『篤姫』で於哲を演じ、のちに主演することになる大河ドラマにも、このころ初めて出演しました。また吉高さんには、焼肉店やディスカウントショップ、ガソリンスタンド、コンビニエンスストアでのアルバイト経験もあります。そろばん指導者の資格を持っていて、そろばんの先生として働いたこともあるそうです。

『蛇にピアス』の主演で迎えた大きな転機

大きな転機になったのは、オーディションで主演をつかんだ2008年9月公開の映画『蛇にピアス』です。主人公のルイを体当たりで演じ、第32回日本アカデミー賞の新人俳優賞、第51回ブルーリボン賞の新人賞、第18回日本映画批評家大賞の新人賞を受けました。同じ年の『きみの友だち』では花井恭子を演じ、第23回高崎映画祭の最優秀助演女優賞も受けています。

ここから出演作は一気に増えていきます。2008年はフジテレビ月9『太陽と海の教室』で屋嶋灯里を、2009年はTBS『ラブ♥シャッフル』で早川海里を、関西テレビ『白い春』で西田栞を演じました。映画でも『重力ピエロ』の夏子、『カイジ 人生逆転ゲーム』の石田裕美と話題作が続きます。2009年にはフジテレビのアニメ『ミチコとハッチン』でヴァネッサ・リーの声も担当しました。2010年3月には、CNNが選んだ世界的に名前は知られていないが演技力のある日本の俳優7人にも入りました。

2009年10月期には月9『東京DOGS』のヒロイン・松永由岐に抜擢され、2010年7月期の日本テレビ『美丘 -君がいた日々-』では峰岸美丘を演じ、地上波の連続ドラマで初めて主演を務めています。

『花子とアン』のヒロインに抜擢された吉高由里子さん

2011年には映画『婚前特急』の池下チエ役で、第33回ヨコハマ映画祭の主演女優賞を受賞しました。この年は『GANTZ』の小島多恵、『探偵はBARにいる』の近藤恵、フジテレビ『私が恋愛できない理由』の小倉咲と、映画とドラマの両方で活躍しています。同じ年にはNHK BSプレミアムのドキュメンタリー『吉高由里子 ロンドンの6日間 -マクベスに挑んだわたし-』も放送されました。2012年には『ヒミズ』のミキ、『僕等がいた』の高橋七美と、話題の映画への出演が続いています。2013年には映画『横道世之介』の与謝野祥子役で第68回毎日映画コンクールの女優助演賞を受け、月9『ガリレオ』第2シーズンではヒロインの岸谷美砂を演じました。

そして2014年、NHK連続テレビ小説『花子とアン』で、オーディションなしでヒロインの村岡花子役に抜擢されます。左利きの吉高さんは、右利きだった村岡花子さんに合わせて、ふだんの食事でも右手で箸を持つように変えたそうです。この役で第82回ザテレビジョンドラマアカデミー賞の主演女優賞を受けました。

同じ年の大みそかには、『第65回NHK紅白歌合戦』で紅組の司会を務めています。原宿でスカウトされた高校生が、朝ドラのヒロインと紅白の司会を同じ年にこなすまでになりました。

『最愛』から『光る君へ』の紫式部へ

2015年には『大逆走』で初めて舞台に立ちました。その後もドラマの主演が続きます。2017年の日本テレビ『東京タラレバ娘』で鎌田倫子、2018年の『正義のセ』で竹村凜々子、2019年のTBS『わたし、定時で帰ります。』で東山結衣、2020年の『知らなくていいコト』で真壁ケイト、TBS『危険なビーナス』で矢神楓を演じました。映画では2017年の『ユリゴコロ』の美紗子役で、第41回日本アカデミー賞の優秀主演女優賞を受けています。

2021年のTBS金曜ドラマ『最愛』では真田梨央を演じ、東京ドラマアウォード2022の主演女優賞などを受賞しました。2022年にはNHKの特集ドラマ『風よ あらしよ』で伊藤野枝を演じ、2024年には劇場版も公開されています。

2024年、大河ドラマ『光る君へ』で主人公の紫式部(まひろ)を演じます。平安時代に左手で筆を持つ人はいなかったことから、撮影の半年前から右手で筆を使う稽古を重ね、右手で書く場面を撮影しました。この役で日刊スポーツ・ドラマグランプリの秋ドラマ主演女優賞と、第122回ザテレビジョンドラマアカデミー賞の主演女優賞を受賞。10月にはEテレのアニメ『おじゃる丸』に、まひろ役で声の出演もしています。

吉高由里子さんの素顔は絵とジブリと広島弁

趣味は絵を描くことと音楽鑑賞です。好きな映画はスタジオジブリの作品で、なかでも『天空の城ラピュタ』がお気に入り。好きな色は黒や濃い紫、好きな料理は肉と魚だそうです。広島弁と大阪弁を自在に話せるという特技もあります。2008年には自身が文章を書いたフォトエッセイ『吉高由里子のあいうえお』を出し、福山雅治さんの「蛍」やPerfumeの「TOKYO GIRL」のミュージックビデオにも出演してきました。

好きな女優は永作博美さんで、あんなふうにきれいに大人になっていきたいと話しています。2009年からはファッション雑誌『JILLE』の企画「吉高補完計画」に出演し、アートの分野に挑戦してきました。2012年12月号の時点で、連載でいちばん難しかったのは押し花だったと明かしています。

仲間とのつながりも大切にしています。柴咲コウさんとは『ガリレオ』で共演する前から親しく、下の名前で呼び合う仲。『真夏の方程式』で共演した杏さんとも仲がよく、『花子とアン』で共演したハリセンボンの近藤春菜さんは親友です。役が決まるたびに、数年後には女優を続けていないのではと思うほど深く悩むと語る吉高さん。その真剣さが、一つひとつの役に向き合う姿勢につながっています。

赤毛のアンの島を旅した吉高由里子さんのこれから

2025年9月には、NHK BSプレミアム4Kで『吉高由里子 プリンスエドワード島の旅 〜「赤毛のアン」の世界へ〜』が放送されました。『花子とアン』で、『赤毛のアン』の翻訳者として知られる村岡花子さんを演じた吉高さんが、その作品の世界を訪ねる旅です。2023年4月から2026年5月までは、テレビ朝日・BS朝日の『未来につなぐエール』でナレーターも務めました。2023年の大みそかには『第74回NHK紅白歌合戦』のゲスト審査員として、紅組司会を務めた2014年以来の紅白の舞台に立っています。

CMでは江崎グリコの「アイスの実」や久光製薬の「アレグラFX」、2025年からは池松壮亮さんと共演する大和ハウスの企業CMシリーズ「こっちの世界」にも出演しています。

そしてこれから控えるのが、ムロツヨシさんと夫婦を演じるNetflixの新シリーズです。脚本の大石さんによると、何曲かのオリジナル曲に乗せて描かれ、2人のデュエットもある作品です。配信の時期はまだ発表されていません。女優に憧れていなかった原宿の高校生は、紫式部を演じきったいまも、舞台や配信ドラマといった新しい場所に挑み続けています。次はどんな姿を見せてくれるのか楽しみです。

写真: acrofan.com / CC BY-SA 3.0 (Wikimedia Commonsより)

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