
『銀河の一票』で都知事選に挑んだ黒木華さん
2026年4月20日から6月29日まで、関西テレビ・フジテレビ系の月曜夜10時の枠で放送された『銀河の一票』。黒木華さんはこのドラマで主演を務め、政治家の不正を追ったことですべてを失った、与党幹事長の娘で秘書の星野茉莉を演じました。茉莉が、野呂佳代さん演じるスナックのママ・月岡あかりを東京都知事にしようと選挙に挑む物語で、脚本は蛭田直美さんです。作品はギャラクシー賞の月間賞に選ばれ、放送終盤に行われたオリコンの春ドラマ満足度調査でも1位になりました。
同じ年の7月には、初めての著書となる料理エッセイ『はるの献立日記』を出し、東京芸術劇場の舞台『NORA』では主人公のノラを演じています。ドラマ、映画、舞台、本と、仕事の場所は広がり続けています。
そんな黒木さんの原点は、大阪の高校の演劇部です。大学では役になかなか呼ばれなかった学生が、1,155人が応募したオーディションを経て野田秀樹さんの舞台に立ち、やがて世界の映画祭で賞を受けるまで。その道のりを、作品と役名でたどります。
高槻で育った演劇部のエース
黒木華さんは1990年3月14日、大阪府高槻市で生まれました。本名も同じで、「華」と書いて「はる」と読みます。春のように華やかに生きてほしい、という思いがこめられた名前です。
幼いころから、母に連れられて映画や芝居を見て育ちました。きょうだいやいとこと一緒に地域の児童劇団に入り、そこで演技をほめられたことが、演じることを好きになったきっかけです。小学6年生のときには、朝日放送『探偵!ナイトスクープ』に依頼者として出演したこともあります。足を高く上げる特技で母を驚かせたい、というかわいらしい依頼でした。
高校は、全国大会での優勝経験もある演劇の名門、追手門学院高等学校に進みます。演劇部では1年生のときから3年間、主役を務め、演劇部のエースと呼ばれていました。舞台で積んだこの3年間が、のちの俳優としての土台になっていきます。卒業後の進路も、演技を学べることをいちばんに考えて選びました。
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京都の大学から野田秀樹さんの舞台へ
女優をめざした黒木さんは、映画づくりや演劇を学べる大学として、自宅から通える京都造形芸術大学の映画学科俳優コースに進学しました。そこで林海象さんや東陽一さんに演技を学んでいます。
ところが、学内で作られる作品には、なかなかキャスティングの声がかかりませんでした。そこで在学中の2009年12月、「野田秀樹演劇ワークショップ in 大阪」に参加します。翌2010年にはオーディションに合格し、6月のNODA・MAP公演『ザ・キャラクター』にアンサンブルとして出演し、初舞台を踏みました。これが黒木さんの俳優としてのデビューです。
同じ年の9月には、NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』で、1,155人が応募した娘役のオーディションを勝ち抜きます。野田秀樹さん、中村勘三郎さんとの3人芝居で、ヒロインの娘役を演じました。20歳になったばかりの年のことです。大学で役に呼ばれなかった学生が、デビューの年に、日本の演劇界を代表するお二人と同じ舞台に立ったのです。
『純と愛』『舟を編む』で映像の世界へ
2011年、黒木さんはNODA・MAP『南へ』、阿佐ヶ谷スパイダース『荒野に立つ』、蜷川幸雄さん演出の『あゝ、荒野』と舞台に続けて出演し、演劇界の期待の新人として注目されます。同じ年に映画『東京オアシス』でヤスコを演じ、映像の仕事にも踏み出しました。
2012年には、劇場アニメ『おおかみこどもの雨と雪』で少女期の雪の声を担当し、声優に初めて挑戦します。さらにNHK連続テレビ小説『純と愛』で、ヒロインの同期社員・田辺千香を演じ、テレビドラマに初出演しました。表向きはやわらかいのに、実は腹黒い千香を演じきり、その演技力が評判になって名前が広く知られるようになります。
2013年は、フジテレビ『リーガルハイ』の本田ジェーン、初主演映画『シャニダールの花』の美月響子、『舟を編む』の岸辺みどりと、話題作が続きました。舞台では『飛龍伝』で神林美智子を演じ、主演を務めています。この年の演技で、キネマ旬報ベスト・テンや日本アカデミー賞、ブルーリボン賞など、主な映画賞で合わせて7つの新人賞を受けています。派手さのない、温かみのある和風のたたずまいから、黒木さんはこのころから、昭和的、純日本的と評されることの多い俳優になっていきました。
23歳の黒木華さんがつかんだベルリンの銀熊賞
2014年、黒木さんはオーディションを経て、山田洋次監督の『小さいおうち』に出演します。演じたのは布宮タキです。この役で第64回ベルリン国際映画祭の最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞しました。日本の女優では左幸子さん、田中絹代さん、寺島しのぶさんに続く4人目で、23歳での受賞は日本人で最年少です。映画祭の総評では、黒木さんの演技力は群を抜いていたと評されています。同じ作品で、日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞も受けました。
この年はNHK連続テレビ小説『花子とアン』で安東かよを演じ、エランドール賞の新人賞も受賞しています。2015年の映画『幕が上がる』では、高校と大学で演劇に打ちこみ、舞台からプロの道に入った経歴をふまえて、演劇部の顧問・吉岡美佐子役に選ばれました。
2015年は、TBSの『天皇の料理番』で高浜俊子を演じて語りも担当し、東京ドラマアウォード2015で主演女優賞を受けます。12月公開の映画『母と暮せば』では佐多町子を演じ、日本アカデミー賞の最優秀助演女優賞を2年続けて受賞しました。2年連続での受賞は、余貴美子さん以来の史上2人目です。
主演作が続いた『重版出来!』から『凪のお暇』まで
2016年、岩井俊二監督の『リップヴァンウィンクルの花嫁』で皆川七海を演じ、映画で単独初主演を果たします。岩井監督は黒木さんを、平成の最先端をいく女優だと評しました。同じ年の4月には、TBS『重版出来!』の黒沢心役で連続ドラマにも初主演しています。秋には第29回東京国際映画祭のフェスティバル・ミューズも務めました。
大河ドラマでは、2016年の『真田丸』で梅、2018年の『西郷どん』で西郷糸を演じています。主演作も次々に生まれました。2017年のNHK『みをつくし料理帖』では澪、2018年の映画『日日是好日』では典子、『ビブリア古書堂の事件手帖』では篠川栞子を演じています。同じ2018年の映画『来る』では田原香奈を演じました。
2019年のTBS『凪のお暇』では大島凪を演じ、東京ドラマアウォード2020の主演女優賞や、第2回アジアコンテンツアワードの主演女優賞を受けました。2020年の映画『浅田家!』では川上若奈を演じ、日本アカデミー賞で3度目の最優秀助演女優賞に選ばれています。2018年の日本テレビ『獣になれない私たち』では長門朱里を演じ、東京ドラマアウォード2019の助演女優賞を受けています。
映像で活躍するようになってからも、舞台には立ち続けました。2016年の二兎社『書く女』では樋口一葉を演じて主演を務め、2017年の『ワーニャ伯父さん』ではソーニャ、2019年の『ハムレット』ではオフィーリアを演じています。
『光る君へ』の源倫子と2020年代の黒木華さん
2021年のフジテレビ『イチケイのカラス』では坂間千鶴を演じ、2023年の映画版でも同じ役を演じました。2023年は、主演映画『せかいのおきく』でおきくを演じて第45回ヨコハマ映画祭の主演女優賞を受賞し、『ヴィレッジ』『ほつれる』などとあわせて第15回TAMA映画賞の最優秀女優賞にも選ばれています。ドラマでも、日本テレビ『ブラッシュアップライフ』の森山玲奈、TBS『下剋上球児』の山住香南子と、話題作に続けて出演しました。2022年にはフジテレビ『ゴシップ#彼女が知りたい本当の〇〇』で瀬古凛々子を演じ、主演を務めています。
2024年のNHK大河ドラマ『光る君へ』では、第3回から最終回まで源倫子を演じています。大河ドラマへの出演は3作目でした。同じ2024年の3月末で所属事務所を離れ、その後はフリーランスとして活動しています。
その後も、主演映画『アイミタガイ』の秋村梓(2024年)、2026年の映画『マジカル・シークレット・ツアー』の角田清恵、『時には懺悔を』の民恵、『本当にあった話(の話)』の米良と、出演作が途切れることはありません。2025年にはNHK BSのドラマ『丹下左膳~大岡越前外伝~』で櫛巻きお藤を演じ、舞台『ここが海』では友理を演じました。前年の2024年には、舞台『ふくすけ 2024 -歌舞伎町黙示録-』にも出演しています。
お笑いと料理が好きな素顔とこれから
物静かな印象のある黒木さんですが、大阪出身らしく、かなりのお笑い好きです。千鳥やテンダラーのファンであることを明かし、バナナマンの大ファンでもあります。NHK『あさイチ』では、ふだんは物静かな黒木さんがバナナマンの前でははしゃいでしまうと、マネージャーが明かしていました。気になる若手芸人には金属バットを挙げています。TBSラジオ『ハライチのターン!』などのラジオ番組も好んで聴き、radikoのプレミアム会員です。2018年から2019年にはNHK Eテレ『旅するフランス語』に出演し、ナレーションも担当しました。CMでは、2022年からサントリーの「金麦」で柳楽優弥さんとともにブランドメッセンジャーを務め、2019年からは「ほろよい」のCMにも出演しています。
2026年7月10日には、初めての著書『はるの献立日記』が飛鳥新社から出版されました。自分で作ったものや食べたものを、365日の日記の形でつづった料理エッセイとレシピ集です。
これからの予定も続きます。2026年11月20日には、『ほつれる』でも組んだ加藤拓也監督の映画『日曜のあと』が公開され、黒木さんは主演で麻衣を演じます。2027年1月8日公開予定の『映画 九条の大罪』では九条佳奈子役です。演劇部のエースから始まった黒木華さんの道は、舞台と映像の両方で、これからも広がっていきそうです。
写真: Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan / CC BY 2.0 (Wikimedia Commonsより)


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