
河合優実さん、2028年の朝ドラ主演が決まった俳優
2026年6月4日、NHKは2028年度前期の連続テレビ小説『ほんのモキチ』の主演に、河合優実さんを起用すると発表しました。脚本は宮藤官九郎さん。歌人の斎藤茂吉と妻の輝子をモデルに、一部をフィクションとして組み立て直す物語で、河合さんは奔放で派手好きなテル子を演じます。オーディションではなく、制作側からのオファーでした。
2026年の秋も、河合さんの名前をあちこちで見かけます。10月7日に始まったフジテレビのドラマ『ポリティカルパン』では、大物政治家の娘・小早川雅を演じています。フジテレビの連続ドラマに出るのは、これが初めてです。10月22日にはNetflixのドラマ『俺のこと、なんか言ってた?』の配信も始まり、野々村エマ役で出演しています。CMでも、2026年に始まったサントリー生ビールのシリーズで今野あゆみという役を演じ、10月24日から新しい「あゆみさんの休日」篇が流れています。
河合さんがデビューしたのは2019年2月です。そこから日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞、カンヌ国際映画祭での受賞作の主演、朝ドラの主演決定まで、わずか数年で駆け上がってきました。
練馬区で育ち、ダンスに夢中だった少女時代
河合優実さんは2000年12月19日、東京都練馬区で生まれました。3姉妹の長女です。父は映画好きで、母は社会人演劇をしていた時期もあったそうです。にぎやかな家庭で、両親の影響からドリフターズの番組を見て育ちました。
小学3年生のとき、妹が通っていたダンススタジオに通い始めます。中学に入るといったんダンスから離れましたが、東京都立国際高校では3年間ダンス部で踊りました。ダンスを続けるうちに、表現することそのものの楽しさに気づいていきます。いまも趣味には、ダンスや歌、絵を描くこと、バスケットボール、弾き語りを挙げています。
役者を目指すきっかけになったのは、ミュージカル『コーラスライン』を観たことでした。高校を卒業すると、日本大学芸術学部の演劇学科に進みます。大学の同級生には、のちに同じく俳優として活躍する見上愛さんがいて、いまも交友が続いています。
あこがれの役者には森山未來さんの名前を挙げています。役者としてもダンサーとしても表現の力があり、自分の軸を持って活動する姿勢を尊敬しているそうです。踊ることから始まった河合さんらしい答えです。
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2019年のデビューと、映画で積み重ねた経験
河合さんは2019年2月にデビューしました。この年は、a flood of circleやsupercellなどのミュージックビデオに出演し、5月にはTBSのドラマ『インハンド』第4話で菊池香織を演じて、テレビドラマに初めて出ています。9月には舞台『some day』にも立ちました。
2020年は映画への出演が一気に増えます。『転がるビー玉』では萌子を演じ、『喜劇 愛妻物語』では、高速でうどんを打つ女子高生という印象に残る役で出演しました。内山拓也監督の『佐々木、イン、マイマイン』では苗村を演じ、武正晴監督の『アンダードッグ』にも出演しています。松尾スズキさん作・演出の舞台『フリムンシスターズ』にも参加しました。
2021年1月には毎日放送のドラマ『夢中さ、きみに。』で、初めて連続ドラマのレギュラーをつとめます。5月からはWOWOWの『連続ドラマW さまよう刃』で長峰絵摩を演じ、8月には24時間テレビのドラマスペシャル『生徒が人生をやり直せる学校』で緑川姫希役をつとめました。小さな役でも作品ごとに違う顔を見せ、少しずつ映画の作り手たちの目にとまっていきました。
『由宇子の天秤』『サマーフィルムにのって』で新人賞を総なめ
最初の転機は2021年に公開された2本の映画です。時代劇好きの高校生が仲間と映画づくりに乗り出す青春映画『サマーフィルムにのって』では、伊藤万理華さん演じる主人公の幼なじみで親友のビート板を演じました。春本雄二郎監督の『由宇子の天秤』では、小畑萌を演じています。
この2作での演技が評価され、ヨコハマ映画祭の最優秀新人賞、キネマ旬報ベスト・テンの新人女優賞、ブルーリボン賞の新人賞など、その年の新人賞を次々に受けました。
2022年は、なんと8本の映画に出演します。『ちょっと思い出しただけ』の泉美、『PLAN75』の成宮瑤子、『百花』の田名部美咲、『線は、僕を描く』の川岸美嘉、『ある男』の茜などです。この年は日刊スポーツ映画大賞の新人賞も受けました。King Gnuの「雨燦々」や山下達郎さんの「LOVE’S ON FIRE」のミュージックビデオに出演したのも、この2022年です。NHKのドラマ『17才の帝国』では雑賀すぐりを演じ、松尾スズキさんの舞台『ドライブイン カリフォルニア』ではエミコ役で東京と大阪の劇場に立っています。
初主演が続いた2022年と2023年
主演の機会も巡ってきます。2022年8月、WOWOWのドラマ『ワンナイト・モーニング』の第4話「牛丼」で、河合さんは初めて主演をつとめ、旗本たまこを演じました。
2023年2月には、映画『少女は卒業しない』で長編映画に初主演します。演じたのは山城まなみです。同じ年の5月からは、NHK BSのドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』で、連続ドラマに初主演しました。作家・岸田奈美さんの実話をもとにした作品で、河合さんは岸本七実を演じています。関西が舞台の作品で、流ちょうな関西弁も話題になりました。
11月にはNHKスペシャル「シリーズ“宗教2世” 神の子はつぶやく」で主演をつとめ、木下遥を演じています。この演技で、翌2024年に放送文化基金賞の演技賞を受けました。映画でも、2023年は『ひとりぼっちじゃない』の蓉子、『モダンかアナーキー』のハナと、出演が続いています。汐見夏衛さんの小説『さよならごはんを今夜も君と』のオーディオブックで朗読を担当し、NHK Eテレの『タネの箱舟』ではナレーションをつとめるなど、声の仕事も増えていきました。主演作が続いたこの時期に、河合さんは作品を背負って立つ俳優へと変わっていきます。
2024年、純子役とカンヌで河合優実さんの名が広がる
2024年1月に始まったTBSのドラマ『不適切にもほどがある!』で、河合さんは小川純子を演じました。1986年から2024年へタイムスリップしてしまう昭和の中学教師・小川市郎の娘で、非行を繰り返して父と言い争ってばかりなのに、本当は父親思いという役です。脚本は宮藤官九郎さん、父の市郎を演じたのは、松尾スズキさんの舞台『フリムンシスターズ』と『ドライブイン カリフォルニア』で共演していた阿部サダヲさんでした。昭和の不良少女という役柄が話題を集め、ザテレビジョンドラマアカデミー賞の助演女優賞を受けています。
6月には主演映画『あんのこと』が公開されます。入江悠監督の作品で、河合さんは香川杏を演じました。同じ月には劇場アニメ『ルックバック』で主人公の藤野の声も担当しています。そして9月には、山中瑶子監督の主演映画『ナミビアの砂漠』が公開されました。この作品は、第77回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家連盟賞を受賞しています。
2本の主演映画は高く評価され、河合さんは『あんのこと』で第48回日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞に輝きました。キネマ旬報ベスト・テン、ブルーリボン賞、毎日映画コンクールでも主演の賞を受け、芸術選奨文部科学大臣新人賞にも選ばれています。この年は4月からテレビ東京のドラマ『RoOT / ルート』で主演の玲奈を演じ、10月には映画『八犬伝』で浜路を演じています。
『あんぱん』『旅と日々』、そして2026年のいま
2024年の大みそか、第75回NHK紅白歌合戦でゲスト審査員をつとめた河合さんは、2025年、NHK連続テレビ小説『あんぱん』に出演しました。主人公・朝田のぶの妹、朝田蘭子を、4月から9月まで演じています。大みそかの第76回NHK紅白歌合戦でも、『あんぱん』の特別編のステージに蘭子として登場しました。
映画では、三宅唱監督の『旅と日々』で渚を演じました。つげ義春さんの作品を原作にした映画で、2025年8月のロカルノ国際映画祭で最高賞の金豹賞を受けています。日本映画がこの賞を受けるのは18年ぶりでした。ほかにも『敵』の菅井歩美、『悪い夏』の林野愛美、『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』の桜田花、『ルノワール』の北久理子などを演じ、秋には岩松了さん作・演出の舞台『私を探さないで』で三沢アキラを演じています。
2026年は、1月4日放送のスペシャルドラマ『新年早々 不適切にもほどがある!』で再び純子として登場して幕を開けました。3月からNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』でナレーションを担当し、ディオールのグローバルアンバサダーにも就きました。そして秋には『ポリティカルパン』と『俺のこと、なんか言ってた?』が続きます。主演も脇役も声の仕事も、河合さんは同じ熱量で引き受けています。書く仕事も始まりました。2026年10月には、初めてのエッセイ集『ここから耳を澄ましてみる』を11月28日にリトルモアから出すことが発表されました。2025年から2026年にかけて、さまざまな仕事をしながら自分自身と向き合い、いまの自分の居場所を書きつづった一冊です。
河合優実さんの素顔とこれから
仕事の外の河合さんは、本が好きな人です。好きな本には川上未映子さんの『夏物語』や、坂元裕二さんの『往復書簡 初恋と不倫』を挙げ、村上龍さんや村上春樹さんの小説も読みます。好きになった作家の過去作をさかのぼって読むタイプだそうです。本の文章や映画の字幕を訳す仕事にも興味があり、役者をしていなければ翻訳家を目指したかもしれないと話しています。
好きなアーティストは星野源さんと柴田聡子さんです。星野さんの特集番組ではナレーションをつとめ、柴田さんとは『ボクらの時代』で山中瑶子監督とともに語り合いました。同じ番組には2024年にも、見上愛さん、青木柚さんと3人で出演しています。フジテレビの『ザ・ノンフィクション』をよく見ていたといい、のちにその番組のナレーションも担当しています。食べ物は餃子と小麦が好きで、パンやパスタが大好きだそうです。
この先には、2028年春に始まる『ほんのモキチ』が待っています。宮藤官九郎さんが朝ドラの脚本を書くのは『あまちゃん』以来15年ぶりです。ダンス部で表現の楽しさを知った少女は、朝の顔として、また新しい表情を見せてくれるはずです。
写真: Quejaytee / CC BY 4.0 (Wikimedia Commonsより)


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