音尾琢真、バック転と声と歌で俳優へ TEAM NACS最年少が『VIVANT』に出るまで

NHKの大河ドラマに3作、連続テレビ小説には2027年度前期の放送予定まで入れて2作。ドラマ『VIVANT』にも第8話で出演した音尾琢真さんは、演劇ユニットTEAM NACSのメンバーです。そんな音尾琢真さんが俳優を選んだ理由は、少し変わっています。バック転ができて、声がよくて、歌が好き。この三つを足すと俳優になる、と考えたのです。高校の男子新体操部の部長が全国の作品に出るようになるまでの道のりを、順に見ていきます。

音尾琢真さんの生い立ち、旭川の男子新体操部で部長に

音尾琢真さんは1976年3月21日、北海道旭川市で生まれました。生まれてまもなく深川市に移り、小学校に入るころに旭川市へ戻っています。

進学した北海道旭川西高等学校では、男子新体操部に入りました。3年生のときには部長を務めています。同じ高校の先輩には、TEAM NACSのリーダーの森崎博之さんと、映画で何度も組むことになる白石和彌監督がいます。

高校では国語の先生に朗読の声をほめられたこともありました。卒業後は大阪芸術大学を受験して合格します。ただ、そこには進まず、1994年に地元北海道の北海学園大学へ入学しました。学部は経済学部です。芸術の大学に受かった人が経済学部へ進んだのに、舞台への道はこの大学で開けていきます。

バック転と声と歌、音尾琢真さんが俳優を選んだ理由

大学に入った音尾琢真さんが所属したのが、北海学園大学の演劇研究会です。きっかけは自分にできることの足し算でした。バック転ができる。朗読をほめられるほど声がいい。歌が好き。歌って踊ってセリフも言える職業、つまり俳優をやればいい。出発点はそのくらい軽い気持ちだったようです。

そこに重なったのが、1本の舞台です。演劇研究会の先輩の森崎博之さんと佐藤重幸さん(現在の戸次重幸さん)は、すでに稲田博さんが主宰する劇団イナダ組に入っていました。2人に誘われ、同期の大泉洋さんと一緒に舞台を見に行った音尾琢真さんは、強い衝撃を受けて自分も入団します。出演の記録には、1995年6月の第10回公演『NO FUN』が残っています。

そして1996年、演劇研究会で仲のよかった森崎博之さん、安田顕さん、戸次重幸さん、大泉洋さんと5人で、演劇ユニットを結成しました。当時の表記ではTEAM-NACSです。音尾琢真さんはこの5人の中で最年少でした。

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北海道のテレビとラジオに出続けたころ

結成からしばらく、音尾琢真さんの仕事の場所は北海道でした。北海道テレビの『水曜どうでしょう』には不定期で出演し、noちゃんの声とスーツアクターも担当しています。スーツアクターとは着ぐるみやスーツを着て演じる人のことです。『いばらのもり』『ドラバラ鈴井の巣』にも出演しました。2003年には『ハナタレナックス』の放送が始まりました。

ラジオでも声を届けました。2002年に『音尾琢真のアタヤンPUSH!』が始まり、2006年からは『音尾琢真のアタックヤング』が2011年まで続いています。どちらもSTVラジオの番組です。2002年ごろまでは「音尾タクマ」の名前でラジオに出ていたこともありました。

事務所の面では2000年に戸次重幸さんと一緒に、当時の事務所からCREATIVE OFFICE CUEへ移っています。映画では鈴井貴之監督の2001年『man-hole』でひったくり男を、2003年『river』で横井茂を演じました。舞台でも、劇団イナダ組の公演に続けて立っています。

2004年の東京初進出、TEAM NACSの舞台が転機に

大きな節目は2004年です。5月、TEAM NACSの第10回公演『LOOSER〜失い続けてしまうアルバム〜』が東京のサンシャイン劇場で上演されました。これが東京への初進出です。この年の12月には大手事務所のアミューズと業務提携を結びました。北海道の仕事はCREATIVE OFFICE CUE、北海道の外の仕事はアミューズが手がける形です。同じ2004年にはスタジオジブリの映画『ハウルの動く城』で城の門番の声も担当しています。

ここから全国のドラマへの出演が増えていきました。2005年にNHKの『望郷』で海老原少尉、『秘太刀 馬の骨』で飯塚孫之丞を演じ、テレビ朝日の『相棒』season4第7話では下薗司を演じています。2007年の『暴れん坊ママ』では小南学、2008年の『貧乏男子 ボンビーメン』ではチャぎーを演じました。

2008年には東京へ移り住みます。翌2009年公開のTEAM NACS FILMS『N43°』では、「神居のじいちゃん」の監督と脚本を自ら担当しました。俳優の枠に収まらない仕事は、このころから広がっています。

『龍馬伝』から『なつぞら』へ、ドラマで広がった役の幅

2010年には、大河ドラマ『龍馬伝』で望月亀弥太を演じました。同じ年の日本テレビ『Mother』では加山圭吾を演じています。2013年のTBS『とんび』では葛原鉄矢を演じました。2015年には2度目の大河ドラマ『花燃ゆ』で品川弥二郎を、第1回から第43回まで演じています。

2017年のTBS『陸王』では城戸明宏を演じました。2019年は連続テレビ小説『なつぞら』の戸村菊介です。この役は同じ年の特別編『なつぞらSP 秋の大収穫祭「十勝男児、愛を叫ぶ!」』でも演じました。同じ2019年のNHK BSプレミアム『八つ墓村』では、田治見要蔵と田治見久弥の2役を演じました。

2023年には3度目の大河ドラマ『どうする家康』で鳥居元忠を演じています。配信作品では、2022年の『仮面ライダーBLACK SUN』でコウモリ怪人、2024年の『極悪女王』で阿部四郎さんの役を演じました。

朗読をほめられた声は、語りの仕事にもつながっています。2015年の『100分de名著』で朗読を担当し、2019年の『ETV特集』ではナレーションを務めました。AIRDOの機内オーディオ番組では、2005年からパーソナリティを担当しています。紀行番組『行くぞ!最果て!秘境×鉄道』には旅人として出演しました。

白石和彌監督の常連として、映画『孤狼の血』『ひとよ』へ

映画で欠かせない名前が、高校の先輩でもある白石和彌監督です。音尾琢真さんは白石和彌監督の作品の常連です。出演欄でいちばん古いのは、2016年の『日本で一番悪い奴ら』の国吉博和です。2018年の『孤狼の血』と2021年の『孤狼の血 LEVEL2』では吉田滋を演じています。

続けて見ると、役の幅に驚きます。2018年の『止められるか、俺たちを』では赤塚不二夫さんの役を演じました。2019年は『麻雀放浪記2020』の麻雀番組のプロデューサー、『凪待ち』の村上竜次、『ひとよ』の丸井進と3本に出ています。2022年の『死刑にいたる病』は滝内、2024年の『碁盤斬り』は徳次郎、『十一人の賊軍』は仙石善右エ門です。

歴史上の人物も多く演じてきました。2017年の『関ヶ原』の福島正則、2023年の『レジェンド&バタフライ』の豊臣秀吉、2024年の『もしも徳川家康が総理大臣になったら』の石田三成です。2021年の『るろうに剣心 最終章 The Final』では呉黒星を演じました。福澤克雄監督の2019年『七つの会議』の三沢逸郎も、この時期の出演作です。

『VIVANT』のヤスダ、そして2026年の『ヤンドク!』『九条の大罪』

TBSのドラマ『VIVANT』では、2023年9月3日放送の第1シーズン第8話に出演しました。役はヤスダで、孤児院の施設長という立場の人物です。同じ2023年には『マイホームヒーロー』の窪も演じ、この役は翌2024年の映画版でも演じています。

2024年以降も出演は途切れません。2024年の『ジャンヌの裁き』の寿就一、『ブルーモーメント』の佐竹尚人、2025年のTBS『キャスター』の山井和之と、民放の連続ドラマが続きました。映画では2025年に『ババンババンバンバンパイア』の立野長次郎、『盤上の向日葵』の上条庸一を演じています。舞台では2025年に、KAAT神奈川芸術劇場プロデュースの『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』に出演しました。

2026年は1月に始まったフジテレビ『ヤンドク!』で大友真一を演じました。Netflixの『九条の大罪』には4月から嵐山の役で出ています。同じ4月の映画『人はなぜラブレターを書くのか』では大橋秀行さんの役を演じ、6月のテレビ朝日『ダブルエッジ〜甦った男』では馬飼野隆一を演じました。

カレーと釣りとオッティ・オットマン、音尾琢真さんの素顔とこれから

仕事の外の音尾琢真さんも、なかなかにぎやかです。カレーが大好きで、毎日3食カレーでも平気なほどです。ただし辛いものは苦手で、辛口のカレーは食べられません。釣りも大好きで、釣りのために仕事をしていると言うほどです。TEAM NACSの中では最年少で、自他ともに認める末っ子体質ですが、見た目から最年長にまちがわれることもあります。「音尾」は全国で30軒ほどの珍しい苗字で、ルーツは滋賀県長浜市高月町のお寺の山号、音尾山にあるそうです。目と目の間が離れていることにちなんだキャッチコピーは、大泉洋さんの提案で生まれました。

ソロ舞台では日系人ミュージシャンのオッティ・オットマンに扮しました。自作の曲を持って2011年と2014年にツアーを行い、2012年にはライブ盤のCDも出しています。歌が好きだったことが、ここにつながっています。

出演の予定も並びました。白石和彌監督の映画『BYE BYE LOVE 探偵はBARにいる』は2026年12月25日公開予定で、役は森剛介です。2027年1月8日公開予定の『映画 九条の大罪』では、嵐山義信を演じます。そして2027年度前期の放送予定の連続テレビ小説『巡るスワン』で、松木崇の役を担当します。バック転と声と歌を足して選んだ道は、2度目の朝ドラまで続いています。

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