菅田将暉、16歳のフィリップから黒田官兵衛、長編初監督作『死の谷’95』へ

菅田将暉 男性芸能人
写真: Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan / CC BY 2.0(Wikimedia Commons)
菅田将暉の写真

菅田将暉さんが2026年に演じた、二人の軍師

2026年の菅田将暉さんは、戦国の軍師を二人つづけて演じました。大河ドラマ『豊臣兄弟!』では第8回から第23回まで竹中半兵衛を、6月19日公開の映画『黒牢城』では黒田官兵衛を演じています。『黒牢城』は米澤穂信さんの小説を黒沢清監督が映画にした作品で、主演の本木雅弘さん演じる荒木村重に、地下牢へ閉じこめられた天才軍師という役どころでした。

9月には是枝裕和監督の実写映画『ルックバック』で、主人公たちの漫画を受け取る編集者・前田を演じました。藤本タツキさんの漫画が原作で、出口夏希さんと蒔田彩珠さんがW主演をつとめた作品です。さらに2027年には、主演と監督をかねた映画『死の谷’95』の公開がひかえています。

俳優としても歌手としても第一線にいる菅田さんですが、デビューのきっかけは、ほんの偶然の寄り道でした。

大阪府箕面市、サッカーとアメフトの少年時代

菅田将暉さんは1993年2月21日、大阪府箕面市で生まれました。本名は菅生大将さんです。箕面市立西小学校、箕面市立第一中学校を卒業しています。小学生のころはピアノと水泳を習い、地元のサッカーチーム、グリーンフルミネンセFCでボールを追いかけていました。大阪府立池田高校ではアメフト部に入っています。

少年のころはきれいなボーイソプラノでした。ところが声変わりで急に声が低くなり、それがショックで、中学生のころから一時期まったく音楽を聞かなくなったそうです。友だちとカラオケに行ってもほとんど歌わず、歌えたのは家にCDがあった福山雅治さんの「milk tea」だけだったといいます。のちに紅白歌合戦に立つ人の、意外な出発点です。

中学生のころには、大阪の梅田へ遊びに行くたびにスカウトの声がかかっていたそうです。14歳で「アミューズ30周年記念オーディション」に参加し、6万5,368人の応募者の中からファイナリスト31人に残りました。結果は落選でした。

2008年には第21回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストに出て、ファイナリスト12人に選ばれます。このコンテストがきっかけで、いまの事務所トップコートに入ることが決まりました。

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あいさつ回りの寄り道で決まった『仮面ライダーW』

高校1年の春休み、菅田さんは事務所の人といっしょに、テレビ局や雑誌の編集部へあいさつ回りをしていました。たまたま時間が空いたので、近くの東映に立ち寄ります。そこで会ったのが『仮面ライダーW』のプロデューサー、塚田英明さんでした。翌日に最終オーディションがあると誘われて受けたところ、満場一致で合格します。

演じたのは主人公の一人、フィリップです。ふしぎな役で選考が難航していたところに、まっさらな菅田さんがぴたりとはまったと、塚田さんはのちに語っています。2009年9月に放送が始まり、桐山漣さんとのW主演でした。16歳での主演はシリーズ最年少です。

撮影のため上京が必要になり、池田高校は1年で中退しました。2年からは日出高校に編入しましたが、撮影がきびしく、ほとんど通えなかったそうです。そのため同じ学年だった染谷将太さんや仲野太賀さんとも、在学中は一度も顔を合わせていません。レポートと試験で卒業しています。16歳で、知り合いのいない東京での一人暮らしが始まりました。

『共喰い』で知った俳優部という考え方

デビュー直後は、アイドルのような仕事が多かったそうです。流れが変わったのは、年齢制限のある映画『共喰い』のオーディションでした。事務所の反対を押し切って受け、主演に選ばれます。2013年の公開後、第37回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受けました。

菅田さんは、俳優人生の転機に、この作品の青山真治監督との出会いをあげています。衣装部や照明部と同じように、映画の一部門として「俳優部」があるという考え方を学んだそうです。両親役の田中裕子さんと光石研さんからも大きな影響を受けたと話しています。撮影のあいだ、共演の篠原ゆき子さんに教わったフジファブリックの「茜色の夕日」が、映画の登場人物や自分の境遇と重なって、はじめて音がちゃんと聞こえた気がしたそうです。のちの歌の活動につながる出会いでした。

同じ2013年には日本テレビの『泣くな、はらちゃん』『35歳の高校生』に出て、脇役ながら話題になりました。2014年公開の映画『そこのみにて光輝く』では、翌年の高崎映画祭で最優秀助演男優賞を受け、NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』では西門泰介を演じています。映画『海月姫』で女装する役のときは、10kg以上も体重を落としました。

鬼ちゃんと『あゝ、荒野』、2016年からの大ブレイク

2015年はテレビ朝日の『民王』で遠藤憲一さんとW主演をつとめ、NHKの『ちゃんぽん食べたか』でも主演しました。2016年には映画『ディストラクション・ベイビーズ』『セトウツミ』『溺れるナイフ』『何者』が次々に公開されます。ドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』の折原幸人役、そしてauのCM「三太郎シリーズ」の鬼ちゃんで、お茶の間にも顔が広く知られました。オリコンの調査では、2016年度のブレイク俳優1位に選ばれています。

2017年は大河ドラマ『おんな城主 直虎』に初めて出演しました。映画『あゝ、荒野』ではボクサーを演じ、相手役のヤン・イクチュンさんと階級を合わせるため、最大15kgも体重を増やしています。この作品で第41回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を受けました。

2019年の『3年A組-今から皆さんは、人質です-』は、自分から教師役を希望した作品です。ゴールデンタイムの連続ドラマで初めての主演でした。同じ年には映画『アルキメデスの大戦』で数学者を演じ、劇中の数式を実際に解きながら演じたそうです。舞台『カリギュラ』では読売演劇大賞の優秀男優賞と杉村春子賞を受けています。

「見たこともない景色」から紅白へ、歌う菅田将暉さん

歌のきっかけは、2016年に『さんまのまんま』で吉田拓郎さんの「人生を語らず」を弾き語りしたことでした。この演奏をテレビで見ていたレコード会社の担当者から声がかかります。2017年6月、auのCMで流れていた「見たこともない景色」でソロデビューしました。同じ年の4月からは『菅田将暉のオールナイトニッポン』も始まっています。

同じ2017年には、映画『キセキ -あの日のソビト-』で成田凌さん、横浜流星さん、杉野遥亮さんと劇中のグループ「グリーンボーイズ」を組み、CDデビューもしています。2018年には最初のアルバム『PLAY』を出し、オリコンとビルボード・ジャパンの両方で最高2位を記録しました。2019年の「まちがいさがし」で、第70回NHK紅白歌合戦に出場しています。米津玄師さんの「灰色と青(+菅田将暉)」、Creepy Nutsさんとの「サントラ」など、仲間との曲も多い人です。2020年には映画『STAND BY ME ドラえもん 2』の主題歌「虹」も歌いました。

菅田さんは、俳優の仕事は人のため、音楽は自分のためと考えています。2026年1月には、はじめて自分ですべてをプロデュースしたEP『SENSATION CIRCLE』を出しました。

ミシンで息ぬき、仕事の外の素顔

菅田さんの趣味は洋服作りです。祖父が仕立屋だったことから服に興味を持ち、上京してパタンナーの友人と出会ってから、自分でも作るようになりました。お酒が体質に合わないので、仕事のあとにミシンを動かすのが、ビールの代わりのような息ぬきだと話しています。

お笑い芸人を尊敬していて、いちばん好きなのはダウンタウンです。漫画好きでもあり、実写化されたら演じてみたい役に『バビル2世』の浩一をあげています。好物は牛乳で、食事にも合わせるそうです。得意な科目は数学でした。

作品でも、男同士でコンビを組む役が多い人です。『仮面ライダーW』『帝一の國』『dele』、そして漫才師を演じた『火花』。共演者からは、相手の芝居に合わせて変わっていく対応力の高さをよく挙げられています。2020年に『MIU404』へ急きょ出演したのも、空いた予定を知ったプロデューサーからの声に応えたものでした。

『3年A組』で教師を演じたあとは、教員の働き方改革を取り上げた番組『聖職のゆくえ~働き方改革元年~』のナレーションも引き受けています。地元には教員として働く友だちがいて、菅田さん自身もかつて先生を夢見たことがあったからでした。自分の仕事が、人が考えるきっかけの入口になればと話しています。

菅田将暉さんのこれから、監督として撮る『死の谷’95』

2020年代に入っても、菅田さんの幅は広がりつづけています。2021年の映画『花束みたいな恋をした』は、ラブストーリーをやりたいと菅田さん自身が脚本家の坂元裕二さんに伝えたことから生まれた作品です。2022年のドラマ『ミステリと言う勿れ』では久能整を演じ、翌年は映画にもなりました。2023年の『銀河鉄道の父』では宮沢賢治を演じ、アニメ映画『君たちはどう生きるか』では青サギの声を担当しました。

2025年はNetflixの『グラスハート』で真崎桐哉を、フジテレビの『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』で久部三成を演じました。2025年5月には『MUSIC AWARDS JAPAN 2025』で司会もつとめました。2026年4月には映画『人はなぜラブレターを書くのか』が公開され、6月には『菅田将暉のオールナイトニッポンGOLD』でラジオにも帰ってきています。

そして次の大きな仕事が、映画『死の谷’95』です。原作は、俳優部という考え方を教えてくれた青山真治さんの長編小説。青山さんが菅田さん主演での映画化を望んでいた作品を、菅田さん自身が主演し、山田健人さんと共同で監督します。公開は2027年の予定です。16歳で偶然つかんだ役から始まった道は、いま、作る側へとつながっています。

写真: Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan / CC BY 2.0 (Wikimedia Commonsより)

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