綾瀬はるか、広島の農家の娘が大河主演と紅白司会4回にたどり着くまで

綾瀬はるか 女性芸能人
写真: Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan / CC BY 2.0(Wikimedia Commons)
綾瀬はるかの写真

広島の畑で育った綾瀬はるかさん

2025年の大みそか、第76回NHK紅白歌合戦の司会席に綾瀬はるかさんの姿がありました。紅白の司会は6年ぶりで、通算4回目です。2026年は主演映画が3本公開され、10月2日からは型破りな弁護士にふんした『ファーストボイス』が全国で上映されています。

大河ドラマの主演も、カンヌ国際映画祭に出品された映画も経験してきた綾瀬さんですが、出発点は広島の農家です。1985年3月24日に広島市で生まれ、安佐南区で育ちました。実家は季節ごとにいろいろな野菜を作る農家で、綾瀬さんは、自分の家族をこよなく農業を愛する一家だと話しています。

脚本家で小説家の和田竜さんとは、小学校と中学校の同窓です。2014年に和田さんと対談したときには、帰省すると頬かむりをして畑仕事を手伝い、出荷する野菜の重さを量って袋に詰める作業が好きだと語っています。華やかな画面の向こうにある、土に近い暮らしが綾瀬さんの根っこにあります。

部活を休む口実から始まった芸能界

芸能界に入ったのは2000年です。第25回ホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受け、デビューが決まりました。オーディションには友達に誘われて参加したもので、乗り気になった理由は部活を休む口実になるからだったといいます。

受賞したときは蓼丸綾(たでまる あや)という名前でした。芸名はインターネットで募集し、集まった1万6千件の中から本人とスタッフで選んで、2001年2月28日に「綾瀬はるか」に決まりました。

同じ2001年、日本テレビのドラマ『金田一少年の事件簿』の二ノ宮朋子役で女優として歩き出します。2001年から2002年にはTBSのバラエティ『品庄内閣』にレギュラー出演しました。2003年にはフジテレビ系のドラマ『僕の生きる道』で杉田めぐみ役を演じ、初めて連続ドラマのレギュラーをつかみます。同じ年にはTBSの『ブラックジャックによろしく』で椿理沙子役、日本テレビの『幸福の王子』で光石繭役と、毎クールのように連続ドラマに出て経験を積んでいきました。

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世界の中心で、愛をさけぶのヒロインに抜擢

大きな転機は2004年です。TBSのドラマ『世界の中心で、愛をさけぶ』で、ヒロインの廣瀬亜紀役に抜擢されました。同じ作品の映画版では長澤まさみさんがヒロインを演じていて、二人は何かと比べられることが多かったそうです。のちに映画『海街diary』で姉妹として共演し、綾瀬さんは長澤さんを「まさるちゃん」と呼ぶほど親しくなりました。

この年の12月には、ディズニー映画『Mr.インクレディブル』でヴァイオレットの日本語吹き替えを担当しています。2018年の続編『インクレディブル・ファミリー』でも同じ役を務めました。

2005年の年末には第47回日本レコード大賞の司会を任され、2006年1月期のTBSドラマ『白夜行』ではヒロインの唐沢雪穂を演じます。同じ2006年の誕生日、3月24日には小林武史さんのプロデュースによるシングル「ピリオド」で歌手デビューし、オリコンチャートで初登場8位を記録しました。2005年には映画『戦国自衛隊1549』で濃姫を演じ、TBSの『あいくるしい』では真柴みちる役、2006年の日本テレビ『たったひとつの恋』では月丘菜緒役と、ヒロインを任される作品が増えていきました。女優の枠にとどまらない活躍が、この頃から始まっています。

ホタルノヒカリとJINで見せた二つの顔

2007年、日本テレビのドラマ『ホタルノヒカリ』で雨宮蛍役を演じ、初めて連続ドラマの単独主演を務めます。作品はヒットし、2010年にパート2が放送され、2012年には映画版も公開されました。

2008年はフジテレビの『鹿男あをによし』で藤原道子役を演じています。撮影中は人生について考えることが多く、共演した児玉清さんと深夜まで語り合ったことが何度もあったそうです。同じ年には映画『ICHI』で主人公の市を演じ、映画『ハッピーフライト』では斉藤悦子役で出演しました。TBSの『ROOKIES』では御子柴響子役を演じ、映画『僕の彼女はサイボーグ』では題名どおりの「彼女」を演じました。2009年のTBS『MR.BRAIN』では由里和音役で出演しています。

2009年にはTBSの『JIN-仁-』で橘咲役を演じ、2011年の『JIN-仁- 完結編』まで同じ役を務めました。この年は映画『おっぱいバレー』で寺島美香子役を演じ、アニメ映画『ホッタラケの島 〜遥と魔法の鏡〜』では主人公の遙の声を担当しています。コメディの主人公から、江戸の町で生きる女性まで。20代前半のうちに、演じる役の幅が一気に広がっていきました。

八重の桜から義母と娘のブルースへ続く代表作

2013年、NHK大河ドラマ『八重の桜』で主人公の新島八重を演じ、大河ドラマ初出演で主演を果たしました。その年の大みそかには第64回NHK紅白歌合戦で紅組司会を務め、震災復興支援曲「花は咲く」を歌っています。

2015年は、映画『海街diary』で4姉妹の長女、香田幸を演じました。この作品は第68回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に正式出品されています。2016年からはNHKの大河ファンタジー『精霊の守り人』で短槍使いの用心棒バルサを演じ、殺陣にも挑みました。第1シーズンから最終章まで、3シーズンを演じ切っています。紅白歌合戦の紅組司会は、2015年と2019年にも務めました。

2014年の『きょうは会社休みます。』の青石花笑役、2017年の『奥様は、取り扱い注意』の伊佐山菜美役を経て、2018年にはTBSの『義母と娘のブルース』で岩木亜希子役を演じ、2020年、2022年、2024年のお正月にスペシャルドラマが放送されるほどの人気作になりました。2021年の『天国と地獄〜サイコな2人〜』、2022年に月9初主演となった『元彼の遺言状』と主演作が続きます。2023年には映画『レジェンド&バタフライ』の濃姫役と『リボルバー・リリー』の小曾根百合役が評価され、第48回報知映画賞の主演女優賞を受けました。

綾瀬はるかさんのいま 2026年は主演映画が3本

ここ数年は、声の仕事にも活躍の場を広げています。2025年は大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』で九郎助稲荷として語りを担当し、アニメ映画『野生の島のロズ』では主人公ロズの日本語吹き替えを務めました。同じ年の夏にはNHKのドラマ『ひとりでしにたい』で山口鳴海役を演じ、10月にはMrs. GREEN APPLEの「GOOD DAY」のミュージックビデオにも出演しています。

2026年は主演映画が続きました。4月17日公開の『人はなぜラブレターを書くのか』では現代の寺田ナズナ役、5月29日公開の『箱の中の羊』では甲本音々役を演じています。2024年11月公開の主演映画『ルート29』のトンボ役に続いて、映画での主演が途切れません。

そして10月2日に公開されたのが『ファーストボイス』です。舞台はバブル景気のさなかの1989年。勝ち目がないと言われたハラスメント裁判に挑んだ弁護士たちの実話に着想を得た物語で、綾瀬さんは、お金にならない案件ばかり引き受けてしまう弁護士の朝日道子を演じています。監督は前田哲さんで、ファーストサマーウイカさん、松本穂香さんと共演しました。配給は松竹とワーナー・ブラザース映画で、主題歌はちゃんみなさんの「History」です。

戦争の記憶を聞き続ける素顔

綾瀬さんが長く続けている仕事に、戦争体験の聞き取りがあります。2005年、TBSの戦後60年の特別企画「ヒロシマ」で広島の実家を訪れ、それまで原爆のことを語らなかった祖母から、初めて話を聞きました。2010年からは『NEWS23』で「綾瀬はるか『戦争』を聞く」のシリーズが始まり、2025年には戦後80年の特別番組『なぜ君は戦争に?』にも出演しています。

福島との縁も続いています。『八重の桜』で会津藩出身の八重を演じてから被災地の支援を続け、2014年からはNHKで『ふくしまに恋して』が放送されています。会津若松市の会津まつりでは、会津藩公行列に参加してきました。復興のシンボルとして生まれた八重桜の新しい品種には「はるか」の名がつけられています。

仕事ぶりはとても真面目で、演技について納得がいくまで監督と話し合うことも多いそうです。天然だと言われることもありますが、本人は天然ではないと話しています。寒がりで夏も冷房よけのスリッパが欠かせないこと、小さいころからカマキリが苦手なことも明かしています。『笑点』のお正月特番には2017年から7年続けてゲスト出演し、2020年には林家木久扇さんの指導で古典落語「たらちね」を披露しました。NHK BSの旅番組『ハルカカナタ』では、フランス、ハワイ、イタリアを訪ねています。

これからの綾瀬はるかさん

部活を休む口実で受けたオーディションから、四半世紀がたちました。その間に、大河ドラマの主演、紅白歌合戦の司会4回、カンヌ国際映画祭への出品作と、ほかの人にはなかなかたどれない道を歩いてきました。

役柄の幅も大きく広がっています。2005年の映画『戦国自衛隊1549』で演じた濃姫を、18年後の『レジェンド&バタフライ』でもう一度演じたことは、その歩みをよく表しています。2023年の濃姫や小曾根百合のような強い女性を演じたかと思えば、2025年のロズでは声だけで観客を引きこみ、2026年の『ファーストボイス』では信念を胸に法廷に立つ弁護士になりました。毎年の夏に届く戦争の聞き取りの番組や、福島とのつながりも、作品と同じように積み重ねてきた綾瀬さんの仕事です。

尊敬する女優として八千草薫さん、松たか子さん、深津絵里さん、樹木希林さんの名前を挙げている綾瀬さん。年齢を重ねるごとに深みを増した先輩たちのように、これからもさまざまな役で驚かせてくれるでしょう。まずは公開中の『ファーストボイス』で、朝日道子の奮闘を見届けてみてください。

写真: Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan / CC BY 2.0 (Wikimedia Commonsより)

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