
福士蒼汰さんの入り口は、友人に付き添った渋谷の一枚
2026年10月、日本テレビ系の日曜ドラマ『ハイド&シーク 0秒前の彼女』が始まりました。主演は福士蒼汰さんです。国家に追われるフリージャーナリストを演じ、逃げながら真実を追う役どころです。主演を重ねてきた福士さんですが、芸能の世界に入ったきっかけは、とても意外なものでした。友人の付き添いで、初めて渋谷に行った日のことです。
福士さんは1993年5月30日生まれ、東京都の出身です。中学まではバスケットボール部で、高校からはダブルダッチ部に入りました。ダブルダッチは2本の縄を回して跳ぶスポーツです。特技にバク転を挙げる福士さんの身のこなしは、この学生時代の部活と地続きなのかもしれません。
渋谷で声をかけられて撮影された写真は、雑誌に載りました。2010年、その写真を見た研音の担当者が福士さんをスカウトします。そして同じ年の9月から、研音に所属することになりました。付き添いで出かけた街での一枚が、俳優の道につながったわけです。
デビュー3か月後に約3千人から選ばれた如月弦太朗
福士さんの俳優デビューは2011年1月に始まったドラマ『美咲ナンバーワン!!』です。演じたのは村野蒼汰役でした。同じ年の4月からは、『生まれる。』で山中裕也役、『シマシマ』で真菰修二役を演じています。
大きな転機はデビューから3か月後に訪れました。『仮面ライダーフォーゼ』の主役オーディションで、約3千人の中から選ばれたのです。この選考には、のちに歌星賢吾役で共演する高橋龍輝さんもいました。相手を選んで受ける最終面接で、福士さんが選んだのは高橋さんでした。2人は渡されたお題のせりふで掛け合いをしています。
2011年9月から2012年8月まで放送された『仮面ライダーフォーゼ』で、福士さんはテレビドラマ初主演を果たしました。役は主人公の如月弦太朗です。映画でも、2011年8月公開の『劇場版 仮面ライダーオーズ WONDERFUL 将軍と21のコアメダル』で初出演し、同じ年の12月公開の『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』で初主演を務めました。劇中のリーゼントが印象に残りすぎて、ふだんの髪型では弦太朗だと気づかれず、子どもに声をかけられることはほとんどなかったそうです。
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『あまちゃん』の種市浩一で広がった福士蒼汰さんの名前
2013年は、福士さんにとって出演作が一気に増えた年です。上半期に放送されたNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で、種市浩一役を演じました。映画では『図書館戦争』の手塚光役、『江ノ島プリズム』の城ヶ崎修太役があります。ドラマでも『スターマン・この星の恋』の星男役、『海の上の診療所』の三崎昇役と続きました。
こうした活躍は数字にも表れています。オリコン調べの「2013年上半期ブレイク俳優ランキング」で1位になり、「2014年ブレイク俳優ランキング」でも第1位に入りました。2014年には、第38回エランドール賞の新人賞も受けています。
2015年には、第38回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞しました。対象になったのは、『好きっていいなよ。』の黒沢大和役、『イン・ザ・ヒーロー』の一ノ瀬リョウ役、『神さまの言うとおり』の高畑瞬役です。デビューから4年ほどで、1つの賞の対象に3本の映画が並んだことになります。この時期の福士さんがどれほど多くの現場に立っていたかが、作品の数からも分かります。
月9初主演の『恋仲』から、話題作が続いた時期
2014年のドラマ『きょうは会社休みます。』では、田之倉悠斗役を演じました。同じ年の『弱くても勝てます 〜青志先生とへっぽこ高校球児の野望〜』では赤岩公康役、アニメ映画『名探偵コナン 異次元の狙撃手』ではケビン・ヨシノ役の声も担当しています。
2015年は、映画『ストロボ・エッジ』で一ノ瀬蓮役を演じました。そして同じ年の7月期には、『恋仲』の三浦葵役でフジテレビの「月9」に初主演します。月9は月曜夜9時に放送されるフジテレビのドラマ枠です。10月公開の『図書館戦争 THE LAST MISSION』では、再び手塚光役を演じました。
その後も話題作が続きます。2016年には映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』で南山高寿役を、ドラマ『お迎えデス。』で堤円役を演じました。2017年にはドラマ『愛してたって、秘密はある。』で奥森黎役、映画『ちょっと今から仕事やめてくる』でヤマモト役を担当しています。映画とドラマを行き来しながら、毎年ちがう役名で名前を見かける時期が続きました。
舞台とアクションで役の幅を広げた福士蒼汰さん
2017年は、福士さんが時代物の役にも挑んだ年でした。映画『無限の住人』では天津影久役を演じています。12月公開の『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』では、5年振りに如月弦太朗として戻ってきました。
舞台にも活動を広げます。2017年11月から2018年2月にかけては、劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 上弦の月で捨之介役を演じました。2020年には『浦島さん』で浦島太郎役、2021年には坂元裕二さんの作・演出による朗読劇に出演しています。2022年の『神州無頼街』では秋津永流役を務めました。
映画のアクションでは、2018年の『BLEACH 死神代行篇』の黒崎一護役と『曇天に笑う』の曇天火役で、ジャパンアクションアワード2019のベストアクション男優優秀賞を受けました。さらに2019年の『ザ・ファブル』ではフード役、2020年の『カイジ ファイナルゲーム』では高倉浩介役を演じています。ドラマでは2020年の『DIVER-特殊潜入班-』で黒沢兵悟役、2021年の『神様のカルテ』で初めての医師役となる内科医の栗原一止役、『アバランチ』で西城英輔役を演じました。
海外作品に監督まで、挑戦を重ねた2020年代
2022年にはAmazon Originalの『星から来たあなた』で東山満役として主演しました。2023年はNHKの『大奥』で、万里小路有功役と、Season2の天璋院・胤篤役を演じています。テレビ東京の『弁護士ソドム』では小田切渉役、Huluの『THE HEAD Season2』ではユウト役も担当しました。
2024年1月公開のReal Soundのインタビューで、福士さんは「自分」というものは「5年前まではゼロに近かった」と振り返り、「人と会うことが自分自身を知るきっかけになりました」と話しました。この年の3月にはWOWOWの「イツキトミワ」で、出演に加えて脚本と監督も務めています。5月公開の映画『湖の女たち』では濱中圭介役を演じました。
2025年の映画『楓』は、スピッツの楽曲「楓」を原案にした行定勲さんの監督作です。福士さんは福原遥さんとのW主演で、双子の兄弟である須永涼と須永恵を一人二役で演じました。2026年1月には、ドラマ『東京P.D. 警視庁広報2係』で今泉麟太郎役、Netflixの『恋の通訳、できますか?』で黒澤ヒロ役を演じました。この作品は福士さんにとって韓国作品への初出演で、キム・ソンホさん、コ・ユンジョンさんと共演しています。5月には映画『TOKYO BURST-犯罪都市-』の村田蓮司役もありました。
『ハイド&シーク 0秒前の彼女』で国家に追われる記者に
『ハイド&シーク 0秒前の彼女』は、2026年10月4日に始まった日本テレビ系の日曜夜10時30分のドラマです。福士さんにとって、日本テレビの連続ドラマの主演は『愛してたって、秘密はある。』以来、9年ぶりになります。
原作は、ミステリー作家の今村昌弘さんが書き下ろした小説『0秒前の彼女』です。ドラマと小説を同時に展開する企画で、逃走と追跡を軸にしたラブミステリーです。福士さんが演じるのは、フリージャーナリストの津倉勇一です。死んだはずの最愛の人から電話がかかってきたことをきっかけに、相手の真実を求めて走り出します。
共演者も多彩です。最愛の人である高木紗奈役を志田彩良さんが、政治団体のカリスマリーダーである兵頭誠役を田中樹さんが演じます。津倉を追う側には、風間俊介さんと成海璃子さんがいます。『あまちゃん』で共演した杉本哲太さんも、叔父役で登場しました。撮影の初日、福士さんは3日間伸ばしたひげ姿で現れたと伝えられています。現場については、和気あいあいと撮影していると話しています。
福士蒼汰さんの素顔と、この先に控える作品
仕事の外での福士さんは体を動かすことと語学に親しんできた人です。特技はバク転と英会話で、英検2級を持っています。第9回ローマ国際映画祭では、英語のスピーチを披露しました。2023年にはU-NEXTの『NoMAD Workout-FUKUトレin NY-』で、トレーナーFUKU役を演じています。
憧れの俳優の1人が岡田准一さんです。その影響で、武術のジークンドーとカリを習い始めました。目標には、時代劇などにも出演して幅のある役者になることを挙げています。『無限の住人』や『大奥』を見ると、その目標に沿った役を重ねてきたことが分かります。写真集も2012年の『After Chicken Rice Go To Merlion』に始まり、2018年の『SOTA FUKUSHI』まで出版してきました。
2024年のインタビューでは、「20代の時のように動き回ることを意識して生きていこうと思います」と話していました。その言葉どおり、2020年代の出演先はテレビ、配信、舞台、海外作品へと広がっています。次の作品としては、2027年冬の公開予定で映画『花臉猫: 修羅道』の清水役が挙がっています。渋谷の一枚から始まった福士さんの役の幅は、これからも広がっていきそうです。
写真: nakashi / CC BY-SA 2.0 (Wikimedia Commonsより)


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