江口洋介さんの歩み 助監督の家に居候した青年が救命病棟24時で16年ぶりの進藤一生に

江口洋介 男性芸能人
写真: Dick Thomas Johnson / CC BY 2.0(Wikimedia Commons)
江口洋介の写真

16年ぶりの進藤一生へ 江口洋介さんが帰ってきた場所

2026年10月12日、フジテレビ系の月9枠で『救命病棟24時』第6シリーズが始まりました。江口洋介さんが演じるのは、孤高の天才救命医・進藤一生です。2013年の第5シリーズ以来13年ぶりの新作で、シリーズが月9枠で放送されるのはこれが初めてです。小島楓役の松嶋菜々子さんとのダブル主演で、ふたりの共演は2010年のスペシャルドラマ以来、およそ16年ぶりになります。今回のテーマは「変わりゆく時代の中で失ってはいけないもの」。医師の働き方改革や世代による考え方の違い、命の選択といった、いまの医療現場の題材が描かれます。

制作決定のコメントで江口さんは、「スクラブを着ると、“また始まるんだな”と気が引き締まります。」と話しています。2026年は、1986年のドラマ『早春物語』から数えて俳優デビュー40周年。その節目の年に、代表作へ帰ってきたことになります。

いまや日本のドラマと映画に欠かせない江口さんですが、出発点は、高校を出て実家を離れ、映画の助監督の家に居候しながら撮影現場へ通う日々でした。そこからの40年をたどってみます。

喫茶店で育った少年が役者を目指すまで

江口洋介さんは東京都豊島区の出身で、所属事務所はパパドゥです。生年月日は長く1967年12月31日とされてきましたが、2026年10月時点の事務所の公式プロフィールでは1968年1月1日と記されています。

子どものころについて江口さんは、『徹子の部屋』に出演した際、母が営む喫茶店によく来ていたお客さんに遊んでもらうような子どもだったと振り返っています。大人たちに囲まれて過ごした時間が、人を見つめる目を育てたのかもしれません。音楽も若いころからの相棒で、ネオアコやハードロック、フォークを好んで聴いてきました。のちの音楽活動やギターの演奏にも、この好きな音楽のルーツが強く表れているといいます。

高校を卒業すると、江口さんは実家を出て役者を目指し始めます。映画を撮っていた助監督の家に居候させてもらいながら、撮影現場へ通う生活を続けました。役者になる前から、作品が生まれる現場を間近で見ていたことになります。

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湘南爆走族で初主演 役名が江口洋助だった偶然

役者として初めて出演したのは、1986年に放送された連続ドラマ『早春物語』(TBS)で、清水隆役でした。同じ年には映画『おニャン子ザ・ムービー 危機イッパツ!』にも出演し、1987年の映画『恋人たちの時刻』では小樽商大の学生役、1988年のNHK正月ドラマ『翼をください』では丸山栄作役を演じています。

そして1987年、東映映画『湘南爆走族』で主人公・江口洋助役に抜てきされ、初主演を果たします。役名と本名がほぼ同じなのは、実は偶然です。「江口」は本名で、原作はすでにヒットしていた漫画でした。デビューしたばかりの新人が、自分と同じ名字の主人公を演じることになったのです。

1988年には、刑事ドラマ『ジャングル』をリニューアルした『NEWジャングル』(日本テレビ)で成田浩平役を演じ、実質的な主役を務めました。1989年の大河ドラマ『春日局』では徳川家光役。1990年には『ザ・刑事』や『都会の森』にも出演し、一作ごとに経験を積み重ねていきます。

東京ラブストーリーの三上健一で人気が一気に

大きな転機は1991年です。フジテレビの『東京ラブストーリー』で、準主役級の三上健一役を演じました。この役で人気と知名度が一気に上がり、1992年には第1回TV-LIFE年間ドラマ大賞の助演男優賞を受けています。

同じ1991年には『101回目のプロポーズ』で星野純平役、1992年には『愛という名のもとに』で神野時男役と、話題作が続きました。江口さんが出演したドラマはいずれも大ヒットし、記録的な視聴率を残しています。1991年にはNHKの土曜ドラマ『新十津川物語 明治篇』で津田照吉役、1992年にはフジテレビのクリスマス・スペシャル『君がいた聖夜』で主演、映画『七人のおたく』では“Macおたく”の田川孝を演じるなど、作品の色もさまざまでした。

このころの江口さんは、俳優と並んでシンガーソングライターとしても活動していました。「愛は愛で」「恋をした夜は」などのヒット曲があり、ドラマと音楽の両方で時代の顔になっていきます。

ひとつ屋根の下と救命病棟24時 江口洋介さんの代表作

1993年、『ひとつ屋根の下』で柏木達也役を演じ、初めて連続ドラマの主役を務めます。第1作の最高視聴率は37.8%。いまもフジテレビのドラマで歴代最高の記録として残っています。1995年の『僕らに愛を!』では井手春海役、1996年のTBS『結婚しようよ』では殿山圭太郎役。映画でも1996年の『スワロウテイル』でリョウ・リャンキ、1998年の『四月物語』に出演し、1997年には続編『ひとつ屋根の下2』も放送されました。

そして1999年、『救命病棟24時』第1シリーズが始まります。江口さんはのちに、このシリーズについて「医療ドラマの中でも“救命”という即断力を求められる現場なので、“特別なドラマを始めたな”と、スタート時はすごく思いました。」と振り返っています。進藤一生は、クールで周りにとても厳しい救命医。この役で第20回ザテレビジョンドラマアカデミー賞の主演男優賞を受け、2001年の第2シリーズ、2005年の第3シリーズでも同じ賞に選ばれました。1つの役で3度の受賞です。

一方で、1999年以降はシンガーソングライターとしての本格的な活動をいったん休みます。役者と音楽を両方続けるなかで、1つの分野に集中しないと作品への向き合い方が中途半端になってしまう場面があると気づいたことが理由だと伝えられています。

白い巨塔からるろうに剣心の斎藤一まで 役の幅が広がる

2000年代に入ると、演じる役の幅がぐっと広がります。2003年の『白い巨塔』(フジテレビ)では里見脩二役、2004年の大河ドラマ『新選組!』では坂本龍馬を演じました。2005年には三谷幸喜さんから声がかかり、舞台『12人の優しい日本人』で初舞台を踏みます。稽古には浴衣を着るのか、楽屋にのれんをかけるのかと江口さんからいろいろ質問されたことを、三谷さんが新聞の連載に書いています。

映画では2008年の『闇の子供たち』で、自分を責めながら事件を追う新聞記者・南部浩行を演じました。2012年からは『るろうに剣心』シリーズで斎藤一を演じ、2021年の『最終章 The Final』『最終章 The Beginning』まで続けています。2014年の大河ドラマ『軍師官兵衛』では織田信長に。2018年の映画『孤狼の血』では一ノ瀬守孝役、同じ年の『コンフィデンスマンJP』では赤星栄介役を演じ、映画版にも登場しました。ドラマでも2017年の『黒革の手帖』で安島富夫役、2018年の『BG〜身辺警護人〜』で落合義明役と、話題作に名を連ねています。

2021年には『ネメシス』の栗田一秋役で、第25回日刊スポーツ・ドラマグランプリ春ドラマの助演男優賞を受賞。主役でも脇役でも、まっすぐな人物でも裏のありそうな人物でも、作品に厚みを出せる俳優として信頼を集めています。

サーフィンに釣りにギター 江口洋介さんの素顔

仕事を離れた江口さんは、体を動かすことが大好きです。なかでもサーフィンは長く続けている趣味の1つ。バスフィッシングも好きで、シマノの釣り具のCMに出たこともあります。『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の「芸能人釣り選手権」には常連として出演していて、第2回から第10回まで優勝がないことをメンバーにいじられるのがおなじみです。

ドラマの外の仕事も長く続けてきました。2005年には、新潟県中越地震後の被災地を取り上げたドキュメンタリー番組のナビゲーターとして現地を取材し、番組のエピソードの1つから映画『おにいちゃんのハナビ』が生まれました。2010年1月から2019年12月までの10年間は『日経スペシャル ガイアの夜明け』の2代目案内人、2012年から2014年までは児玉清さんの後を継いで『世界びっくり旅行社』の2代目司会も務めています。

料理を作るのも好きで、遊びに来た友人に食べてもらうための献立を考えることもあるそうです。付き合いの長い友人として、俳優の唐沢寿明さんや佐藤浩市さん、脚本家の坂元裕二さん、ミュージシャンの稲葉浩志さんの名前が挙がります。

休んでいた音楽活動も、2016年からはミュージシャンの友人が企画したライブへのゲスト出演や単独ライブで、マイペースに再開しました。2023年5月にはInstagram、11月には自身のYouTubeチャンネルも始めています。

沈黙の艦隊も救命病棟24時も 江口洋介さんのいまとこれから

ここ数年は大作への出演が続いています。2023年の映画『沈黙の艦隊』で海原渉役を演じ、2024年からのAmazon Prime Videoのドラマ版、2025年の映画『沈黙の艦隊 北極海大海戦』にも出演。2024年にはNetflixの『忍びの家 House of Ninjas』で俵壮一役を務めました。2025年は『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜南海ミッション』で牧志秀実役、NHKの『シミュレーション〜昭和16年夏の敗戦〜』で西村良穂役を演じています。

2026年は4月からの日本テレビ『タツキ先生は甘すぎる!』で三雲英治役、7月31日公開の映画『開戦前夜』にも出演し、秋の『救命病棟24時』へとつながりました。この先も『沈黙の艦隊 シーズン3』が2027年夏に配信予定とされ、『劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜CAPITAL CRISIS』も控えています。

『救命病棟24時』の新シリーズに向けて、江口さんは「新しい作品をやるような思いでいます。」と話しました。視聴者へのメッセージでは、医師たちが奮闘する姿を通して「希望の光を少しでもお届けできる作品になるんじゃないかなと思っています。」とも語っています。居候から始まった役者人生は、デビュー40周年を迎えました。進藤一生の背中に、その年月の重みが重なって見えます。

写真: Dick Thomas Johnson / CC BY 2.0 (Wikimedia Commonsより)

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