バッテリィズ、M-1準優勝から東京で走り続ける2人
2024年12月、M-1グランプリの決勝。初めて決勝の舞台に立ったバッテリィズは、ファーストステージで合計861点を出し、1位で最終決戦へ進みました。審査員9人のうち8人が95点以上をつける高い評価でした。最後は令和ロマンさんに敗れて準優勝でしたが、この夜をきっかけに、2人の名前は一気に全国へ広がります。
翌2025年の春、2人は大阪のよしもと漫才劇場を卒業し、活動の拠点を東京へ移しました。いまはテレビのMCやリポーター、CM、ドラマへの出演まで、仕事の幅が大きく広がっています。
コンビ名のもとになったのは、野球の「バッテリー」です。2人は同じ草野球チームの投手と捕手でした。NSCに入るまで漫才を知らなかったエースさんと、NSCを中退扱いになってもオーディションで道を開いた寺家さん。少し変わった道を歩んできた2人のこれまでを、たどってみます。
大阪・西成と三重・津、野球に打ちこんだ2人の出発点
エースさんは1994年11月2日、大阪府大阪市西成区の生まれです。本名は角拳都さん。中学生のころはヤングリーグのチーム「オール住之江」に入り、おもに投手として活躍しました。3年生の全国大会では、ベスト4まで勝ち進んでいます。高校は大阪府立泉尾高等学校を卒業しました。身長は182cmで、立ち位置は向かって左です。
お笑いの世界をめざしたのは、明石家さんまさんへのあこがれからでした。ただ、漫才というものを知ったのは、NSCに入ってからだったといいます。のちに漫才で全国に名前を知られることを思うと、なんとも意外な始まりです。
寺家さんは1990年8月7日、三重県津市の生まれです。本名は寺家剛さん。皇學館高等学校を出て、大阪学院大学へ進みました。中日ドラゴンズのファンで、趣味は草野球と競馬、ラーメン店めぐり。身長は177cmです。生まれも育ちも違う2人ですが、野球が好きという一点で、のちに強く結びつくことになります。
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草野球のブルペンで決まったバッテリィズ結成
寺家さんがNSCに入ったのは、大学の同級生に誘われたのがきっかけでした。大阪校の36期生として入学しましたが、出席日数が足りずに中退扱いになります。それでも道をあきらめず、オーディションを受けて吉本興業に入りました。エースさんも、同じNSC大阪校の36期生です。
2人ははじめ、それぞれ別のコンビで活動していました。つながりは、同じ草野球チームでプレーしていたことです。試合中のブルペンで話したことがきっかけになり、2017年にコンビを組みました。
エースさんが投手で、寺家さんが捕手。そこから、コンビ名は「バッテリィズ」に決まりました。2人は大阪よしもとの芸人による草野球チーム「上方ホンキッキーズ」もつくり、運営しています。背番号はエースさんが11番、寺家さんが27番。全国大会への出場をめざして大会に出て、全国1位のチームと4対4で引き分けたこともあります。
野球の腕前は芸人仲間のあいだでも知られていて、2018年にはエースさんがytv運ロワイヤルで優勝。2019年には、アジアカップ台韓日芸能人野球チャリティートーナメントでも優勝を経験しています。
ボケとツッコミを入れかえて見つけたバッテリィズの形
M-1グランプリには、結成した年から毎年挑んできました。ただ、はじめのうちはなかなか結果が出ませんでした。そのころはエースさんがボケ、寺家さんがツッコミという、よくある形の漫才でした。
変わり目は2021年です。M-1の3回戦で敗れたことをきっかけに、エースさんが、ひとまず変えてみようと担当の入れかえを持ちかけました。結成6年目ごろのことです。
いまのネタは、寺家さんが趣味や世の中のルール、観光名所など、身近な話題をおだやかな口調で説明するところから始まります。寺家さんの話はたいてい正しいのに、エースさんにはその良さが分からず、まっすぐにツッコんでいきます。正しいことを言う側が淡々と進め、分からない側が全力で反応する。この逆さまの形が、2人だけの笑いになりました。
この間にも、2020年に上方漫才協会大賞の文芸部門賞を受け、2022年と2023年にはキングオブコントで準々決勝まで進みました。2022年4月には、角拳都さんが芸名を「エース」に改めています。2024年のytv漫才新人賞では、決勝で3位に入りました。M-1グランプリ2023の敗者復活戦をきっかけに、2024年2月からはエバースさんとのツーマンライブを月に1回のペースで続けています。同じ舞台に立つ仲間と、ネタを磨き合う場になりました。
M-1グランプリ2024、バッテリィズが1位で駆けぬけた夜
2024年、バッテリィズはついにM-1グランプリの決勝へ初めて進みます。ファーストステージでは審査員9人中8人から95点以上を集め、合計861点。この年の決勝でいちばん高い点数でした。
審査員の若林正恭さん(オードリー)は「ワクワクするバカが現れた」と話し、寺家さんについても「寺家の漫才のリズムをキープする腕も確か」とたたえました。最終決戦でも、若林さんはバッテリィズに票を入れています。結果は令和ロマンさんに敗れての準優勝でしたが、決勝を見た多くの人の心に、コンビの名前が残りました。
ネタの入り方にも2人らしさがあります。エースさんがやりたいことを話すと、寺家さんが「確かにな」と受けて、エースさんのおっちょこちょいな話をからめていきます。軽自動車の「軽」をアルファベットのKだと思っていた話などがそうです。このつかみの話は、実際にあったことを使うのがこだわりです。
2025年2月には、デビュー発表の「2025年ネクストブレイクランキング」お笑い芸人部門で1位に選ばれました。12月にはオリコンニュースの「2025年 ブレイク芸人ランキング」で2位に入っています。同じ2025年には、第10回上方漫才協会大賞で話題賞も受けました。
大阪を卒業して東京へ、CMとテレビで広がる仕事
2025年2月、2人は3月いっぱいでよしもと漫才劇場を卒業し、東京へ進むと発表しました。3月31日には、コンビとして初めて、なんばグランド花月で単独ライブ「バッテリー」を開きます。翌4月1日から拠点を東京に移し、4月23日には東京で初めての単独ライブ「バッテリィズの東京始球式~2025開幕戦~」を行いました。
テレビでは、テレビ朝日の『夢を叶えるバッテリィズ』でMCを務め、同じ局で『霊視刑事エースの推理日誌〜毎度川北殺人事件〜』も放送されました。2025年10月からは、エースさんがABCテレビの『探偵!ナイトスクープ』に出演しています。
ラジオでは、2025年1月8日に『バッテリィズのオールナイトニッポン』を担当しました。4月からはABCラジオの『がっちゃんこ』で金曜のパーソナリティを務めています。10月からはニッポン放送のポッドキャスト『バッテリィズの東京ブルペン』も始まりました。
CMも次々に決まりました。サントリーの「伊右衛門」では、エースさんが近藤勇、寺家さんが千利休にふんしています。日清食品「カップヌードル」の「叫ぶおじさん」篇や、原田知世さんと共演したサントリー「オールフリー」もあります。スカパー!のプロ野球のCMでは、エースさんがプロ野球選手、寺家さんが記者の役でした。野球好きの2人にぴったりの仕事です。
バッテリィズのいま、リポーターからNetflixドラマまで
2026年に入ってからも、活躍の場は広がり続けています。3月には愛媛朝日テレビの『ふるさとCM大賞えひめ’2026』でMCを担当しました。4月からは、CBCテレビの『なるほどプレゼンター!花咲かタイムズ』でリポーターを務めています。
5月には、毎日放送のドラマ『ネタジョ』第3話に、バッテリィズ本人の役で出演しました。7月にはテレビ愛知で『社長を探せ!企業探偵バッテリィズ』が放送されています。
そして2026年9月17日に配信が始まったNetflixのドラマ『ダウンタイム』では、第1話にコンビ芸人の役でカメオ出演しました。松岡茉優さんと仲里依紗さんが主演し、美容整形の業界を舞台にした全8話の作品です。
寺家さんは2025年7月、三重県の「三重おいないナビゲーター」の第1号に選ばれました。2026年5月からはFM三重で『バッテリィズ寺家の三重においないラジオ』も始まり、ふるさととのつながりも深めています。YouTubeでも「【公式】バッテリィズのネタch」でネタを届けるほか、「バッテリィズ寺家の三重おいない百景」で三重の魅力を紹介しています。
野球を愛するエースさんと寺家さんの素顔とこれから
2人の共通点は、なんといっても野球です。エースさんは阪神タイガース、寺家さんは中日ドラゴンズのファン。草野球のエースさんは7種類の変化球を投げ分ける技巧派の投手で、打席では左右どちらでも打つスイッチヒッターです。漫才での姿とはまた違う顔を、2019年から続くYouTube「バッテリィズの熱狂パワフル草野球」で見ることができます。
エースさんの好きな漫画は『ONE PIECE』、ゲームは龍が如くシリーズで、ももいろクローバーZやYUKIさんの音楽が好きです。芸名を決めるとき、エースさんが最初に考えたのは「たこ焼き」でした。名づけ親のニッポンの社長、辻皓平さんが反対し、いくつか案を出しあった末に「エース」に決まりました。寺家さんはMr.Childrenのファンで、仲間の芸人さんたちと「ミスチル会」を開いています。ネタを作るのは寺家さんの担当です。舞台に出てくるときの出囃子は、ガガガSPの『直球勝負の男』。野球好きのコンビらしい選曲です。
M-1から2年ほどで、2人は大阪の劇場から東京のテレビ、Netflixのドラマにまで仕事を広げました。それでも、ネタの芯にあるのは、寺家さんがていねいに説明し、エースさんがまっすぐ反応するあの形です。草野球のブルペンで始まったバッテリーが、次にどんな球を投げるのか。これからが楽しみです。


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