マツコ・デラックス、ゲイ雑誌の編集者から冠番組の顔へ 中村うさぎさんが見いだした文才

マツコ・デラックス その他
写真: ユーラシア国際映画祭 Eurasia FILM 増山麗奈 Rena Masuyama / CC BY 3.0(Wikimedia Commons)
マツコ・デラックスの写真

マツコ・デラックスさんが毎週テレビにいる理由

月曜の夕方はTOKYO MXの『5時に夢中!』、夜は日本テレビの『月曜から夜ふかし』。TBSの『マツコの知らない世界』、テレビ朝日の『マツコ&有吉 かりそめ天国』、TBSの『週刊さんまとマツコ』。2026年のはじめの時点で、マツコ・デラックスさんはこの5本のレギュラー番組を抱えていました。『かりそめ天国』では有吉弘行さんと、『月曜から夜ふかし』では村上信五さんと並んで座ります。共演の明石家さんまさんは、マツコさんが黒柳徹子さんと並んで、芸能界で別格の人としてよく名前を挙げる相手です。

テレビで見ない週はないほどのマツコさんですが、もともとは雑誌の編集者でした。会社を辞めて千葉の実家にこもっていた時期もあります。そこから人前に出るまでの道のりは、文章から始まりました。

このページでは、美容の仕事からゲイ雑誌の編集部、作家の中村うさぎさんとの出会い、そして冠番組を次々に持つようになるまでを、番組名や本の題名を交えてたどります。

千葉の高校から美容の専門学校へ

マツコさんは1972年10月26日、千葉県千葉市稲毛区に生まれました。本名は松井貴博さんです。通っていた高校では、のちにSMAPのメンバーになる木村拓哉さんと同級生でした。木村さんはその後、別の高校へ転校しています。

高校を出たあとは美容専門学校に進み、卒業後は美容の仕事に就きます。ところが働くうちに、何か違うと感じるようになりました。生まれ育った千葉の家は、のちに編集部を辞めたマツコさんが戻ってくる場所にもなります。

ブレイクする前には、バスガイドや人工スキー場「ザウス」の従業員など、さまざまなアルバイトも経験しています。20代のころは映画『女囚さそり』に強い影響を受け、主演の梶芽衣子さんの黒ずくめのスタイルをまねて、仲間と寸劇に興じていたそうです。のちのマツコさんにつながる、表現することへの関心は、このころから芽生えていたのかもしれません。

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ゲイ雑誌Badiの編集部で書くことを覚えた

美容の仕事に違和感を抱えていたころ、マツコさんは自分の考えを堂々と発信する同性愛者の姿を見て奮い立ちます。そして、ゲイ雑誌『Badi』の編集部に転職しました。『Badi』は『薔薇族』『SAMSON』『G-men』と並ぶ雑誌で、マツコさんはここで記者や編集者を務めています。

取材をして、記事を書き、誌面をつくる。この編集部での仕事が、のちのマツコさんの土台になりました。ものごとを独自の角度から言葉にするテレビでの姿も、原点はこの編集部の日々にあります。マツコさんの記事を読んでいた人の中に、のちに人生を変える出会いの相手がいたからです。

28歳で編集部を辞めたマツコさんは、千葉の実家に戻り、引きこもりの生活を送るようになります。表に出る仕事をするつもりは、まだなかった時期です。それでも、編集部で取材をしては言葉にしてきた経験は、思わぬ形で次の扉を開くことになりました。

中村うさぎさんに見いだされたマツコ・デラックスという名前

転機は、作家の中村うさぎさんからの声かけでした。編集者時代のマツコさんの記事を読んでいた中村さんは、自分がホストを務める対談集『人生張ってます』のゲストにマツコさんを選びます。さらに中村さんは、マツコさんは文章を書くべき人だと、その文才を高く評価しました。

2002年ごろから、マツコさんは女装した姿でタレント活動とコラムの執筆を始めます。同じ年、ソニー・マガジンズから初めての著書『アタシがマツコ・デラックス!』を出しました。その後も『世迷いごと』『デラックスじゃない』『あまから人生相談』などを出し、中村さんとの共著『うさぎとマツコの往復書簡』はシリーズになっています。共著には生物学者の池田清彦さんとの『マツ☆キヨ』もあります。雑誌では『週刊女性』の「週刊女装」、『サンデー毎日』の「うさぎとマツコの往復書簡」などの連載を持ち、コラムニストのナンシー関さんとも対談しました。

芸名の由来は、それまでのニックネーム「マツコ」がシンプルすぎるので、少しだけ豪華にしようと「デラックス」を付けたことだと、『かりそめ天国』で語っています。候補にはマツコ・ロワイヤル、マツコ・インターナショナル、マツコ・ユニバーサルもありましたが、文字数が多すぎるなどの理由で外れました。

5時に夢中!のコメンテーター席から始まったテレビの道

テレビに初めて出たのは2000年、フジテレビの『ワンナイR&R』の前身にあたる『エブナイ』でした。大きな転機は2005年、TOKYO MXの情報番組『5時に夢中!』のコメンテーターとしての登場です。

きっかけをつくったのは、当時番組のMCだった徳光正行さんでした。いとこのミッツ・マングローブさんからマツコさんの話を聞いていた徳光さんが、急いで代わりの出演者を探していたスタッフに推薦したのです。『5時に夢中!』には、2026年も月曜のレギュラーとして出演していて、その付き合いは20年をこえました。

2009年には、フジテレビで初めての冠番組『マツコの部屋』が始まりました。それまでマツコさんは、マネジメントもタレント活動も一人でこなしていました。ミッツさんのおじにあたる徳光和夫さんから、事務所には入ったほうがいいと助言を受けて、事務所に所属します。その前後には、TBS系『ピンポン!』の金曜コメンテーター(2006年から2009年)を務め、2009年からはフジテレビ系『ホンマでっか!?TV』のスタジオレギュラーとして2020年まで出演しました。2011年には文化放送で冠ラジオ番組『井筒とマツコ 禁断のラジオ』も始まっています。

怒り新党と月曜から夜ふかしで迎えたブレイク

2010年代に入ると、マツコさんの冠番組が一気に増えます。2011年にはテレビ朝日の『マツコ&有吉の怒り新党』とTBSの『マツコの知らない世界』、2012年には日本テレビの『月曜から夜ふかし』、2013年にはフジテレビの『アウト×デラックス』が始まりました。2010年にはTokyo SuperStar Awardsでブレイクスルー賞を受けています。

ドラマにも出ています。初めてのドラマ出演は2010年12月、米倉涼子さん主演のテレビ朝日系『ナサケの女〜国税局査察官〜』でした。2012年4月には日本テレビの『三毛猫ホームズの推理』で連続ドラマに初出演しています。2016年の『第67回NHK紅白歌合戦』には、タモリさんとともにスペシャルゲストとして登場しました。

2017年4月には『怒り新党』のあとを受けて、有吉弘行さん、久保田直子アナウンサーとの『マツコ&有吉 かりそめ天国』がスタート。2019年の時点でレギュラー番組は8本にのぼりました。2021年4月からは、明石家さんまさんと組む『週刊さんまとマツコ』も始まっています。ほかにも、日本テレビの『マツコ会議』(2015年から2023年)、テレビ朝日の『夜の巷を徘徊する』(2015年から2021年)など、マツコさんの名前を冠した番組は数えきれません。

赤べことBerryz工房を愛するマツコさんの素顔

マツコさんはハロー!プロジェクトのファンで、とくに、それぞれの個性が面白いとBerryz工房を気に入っています。中森明菜さんの大ファンでもあり、テレビでの共演をきっかけに、新潟のご当地アイドル「Negicco」も応援してきました。

車にもくわしく、2016年のル・マン24時間レースを現地で見たことを明かしています。地図が好きで、地図を愛好するようになってからは旅行に行かなくなったそうです。福島県会津地方の郷土玩具「赤べこ」も集めていて、一時は80体近くありましたが、2025年10月の時点では多くを手放し、手もとに残るのは5体ほどだと話しています。大相撲の宝富士関が「マツコ・デラックス似の力士」と評判になり、2012年に『月曜から夜ふかし』で初共演したこともありました。

だれに対しても特別にかしこまった敬語は使わないのが信条ですが、美輪明宏さんには自分から敬語を使い、同じ局に美輪さんがいると聞けば必ず楽屋へあいさつに行くそうです。尊敬する人には、元NHKアナウンサーの加賀美幸子さんの名前も挙げています。小泉今日子さんやYOUさんとは長い付き合いです。満島ひかりさんとは2004年ごろに仕事で知り合い、2010年ごろから2人とも忙しくなったことで、おたがいを気にかけ合ってきたと2022年の『マツコ会議』で振り返っています。

異形の人こそテレビへ、マツコ・デラックスさんのこれから

マツコさんには、テレビに出るべきなのは平坦で中庸な人ではなく、異形の人、特殊な存在の人間こそふさわしいという持論があります。自分の立ち位置をよく知ったうえで、その役目を引き受けてきたことが、この言葉からも伝わってきます。

2020年にはテレビとの付き合い方について、長居をするつもりはないけれど、世話になったところが続くかぎり付き合おうと思っている、という趣旨の話をしていました。その言葉どおり、2005年から続く『5時に夢中!』、2011年からの『マツコの知らない世界』、2012年からの『月曜から夜ふかし』と、長く続く番組を支え続けています。2016年からは『徹子の部屋』の周年スペシャルでSPサポーターを務め、2024年からも続けています。別格と仰ぐ黒柳さんの番組を、隣で支える役どころです。2026年1月27日には、Netflixの新作発表会「Next on Netflix 2026」で、マツコさんが主宰するNetflixシリーズ『ブラックオークション〜禁断の入札〜』が発表されました。選ばれた人だけが落札者として招かれる、地下の秘密の社交場を舞台にしたオークション番組です。配信は2026年、Netflixでの世界独占と発表されました。

編集部の机からテレビの真ん中へ。文章で世に出たマツコさんが、これからどんな言葉を放つのか、注目が集まります。

写真: ユーラシア国際映画祭 Eurasia FILM 増山麗奈 Rena Masuyama / CC BY 3.0 (Wikimedia Commonsより)

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