
『花子とアン』の醍醐亜矢子、『VIVANT』の乃木明美、『侍戦隊シンケンジャー』のシンケンピンク。高梨臨さんと聞いて思いうかべる役は、見てきた番組によってちがうと思います。けれど高梨臨さんはもともと芸能界に憧れていたわけではなかったそうです。中学校を卒業した春休みに原宿でスカウトされた人が、カンヌ国際映画祭の出品作で主演を務めるまでに、どんな作品を重ねてきたのか。順番にたどります。
高梨臨さんの生い立ち、千葉県船橋市で漫画家に憧れた子ども時代
高梨臨さんは1988年12月17日生まれ、千葉県船橋市の出身です。子どものころに好きだったのは、『美少女戦士セーラームーン』のセーラーマーズでした。同じころに夢中になったのが漫画家という夢です。漫画の道具をそろえるほど打ちこみましたが、ストーリーを考える才能がないと気づいて、あきらめたといいます。
中学生のころはモーニング娘。の大ファンでした。部活動はバドミントン部で、中学と高校で続けています。中学時代には駅伝部にも所属していました。趣味にもランニングとバドミントンをあげています。高校は千葉県立松戸国際高等学校です。
好きなアイドルを応援していた中学生が、数年後には自分もアイドルグループに加わることになります。当時の高梨臨さんには思いもよらない話だったかもしれません。
原宿の竹下通りでスカウト、高梨臨さんがオーディションでつかんだグランプリ
本人の話では、もともと芸能界に憧れていたわけではありませんでした。きっかけは中学校を卒業したあとの春休みです。サーカスを観に行った帰りに、原宿の竹下通りでスカウトされました。そこから芸能界に興味を持ち、仕事を始めています。
2005年にはフジテレビの番組『アイドル道』の企画「世界制服計画 FINAL」のオーディションに参加して、グランプリになりました。その年の末にはアイドルグループのピンクジャムプリンセスの結成に加わります。2006年4月にはPink Jam PrincessとしてCD『パイナップルプリンセス』を出しました。グループで発売したCDはこの1枚です。
そのあとは演じる仕事が増えていきます。2007年3月の舞台『ひみつきち』では、ヒロインのエリを演じました。7月には日本テレビの『探偵学園Q』の第4話と第5話で小椋絵美菜を演じ、11月の舞台『GOOD‐BYE JOURNEY』ではジャンヌ・ダルクを務めています。アイドルグループから俳優へ、仕事の中心が少しずつ移っていった時期です。
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契約タレント第1号から『GOTH』の森野夜、そしてシンケンピンクへ
2007年6月、高梨臨さんは事務所を移り、JTBエンタテインメントの契約タレント第1号になりました。JTBの旅行冊子の表紙モデルなどを務めています。2008年4月から2009年3月までは、フジテレビの『めざましテレビ』の「MOTTOいまドキ!」に、リポーターの「いまドキ★ムスメ」として出演しました。
ドラマと映画の役も続きます。2008年はTBSの『ROOKIES』で猪俣雪乃を、『ドラマ 鉄道むすめ〜Girls be ambitious!〜』で橘らいかを演じました。12月に公開された映画『GOTH』では、森野夜を演じています。
2009年2月から2010年2月までは、テレビ朝日の特撮ドラマ『侍戦隊シンケンジャー』に、白石茉子 / シンケンピンクの役で出演しました。この役は放送のあとも続きます。映画『侍戦隊シンケンジャー 銀幕版 天下分け目の戦』、Vシネマ(映画館ではなくビデオ向けに作られた作品)の『帰ってきた侍戦隊シンケンジャー 特別幕』、2011年の映画『天装戦隊ゴセイジャーVSシンケンジャー エピックon銀幕』でも演じています。『仮面ライダーディケイド』の第24話と第25話にも、同じ役で登場しました。2009年10月には写真集『Rin』も発売しています。
高梨臨さんの主演作がカンヌへ、『ライク・サムワン・イン・ラブ』の明子
シンケンジャーのあとは、まったくちがう役が並びます。2010年のテレビ東京『宇宙犬作戦』では、087型アンドロイドのオハナを演じました。2011年のVシネマ『仮面ライダーW RETURNS 仮面ライダーエターナル』ではミーナを、舞台『トラストいかねぇ』では紗江を演じています。2012年のTBS『パパドル!』では岡本なゆみを演じました。
大きな節目になったのが、2012年の映画『ライク・サムワン・イン・ラブ』です。アッバス・キアロスタミ監督が日本を舞台に撮った作品で、高梨臨さんは主演の明子を演じました。作品は第65回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されています。高梨臨さん自身もこの役で第27回高崎映画祭の最優秀新人女優賞を受賞しました。
同じ2012年には映画『今日、恋をはじめます』の山内有砂、『生きてるものはいないのか』のリョウコも演じています。2014年には『醒めながら見る夢』の亜紀、『KILLERS キラーズ』の久恵でヒロインを務め、『わたしのハワイの歩きかた』では吉村茜を演じました。映画の出演が続いた時期です。
連続ドラマ初主演の『放課後グルーヴ』と『花子とアン』の醍醐亜矢子
テレビドラマでは、2013年4月期のTBS『放課後グルーヴ』で桐生真琴を演じ、連続ドラマに初めて主演しました。そして大きく注目されたのが、2014年のNHK連続テレビ小説『花子とアン』です。吉高由里子さんが演じるヒロインの友人、醍醐亜矢子を好演しました。スピンオフの「朝市の嫁さん」にも出演しています。
そのあとも連続ドラマの出演が続きます。日本テレビの『ヒガンバナ』シリーズでは伊東凛を演じました。2015年の『Dr.倫太郎』では川上葉子を、『5→9〜私に恋したお坊さん〜』では山渕百絵を演じ、2016年のテレビ朝日『不機嫌な果実』では竹田久美を演じています。
2017年は活躍の幅が広がった年でした。2月に発売された雑誌『andGIRL』3月号から、同誌のレギュラーモデルになります。4月期の『恋がヘタでも生きてます』では茅ヶ崎美沙を演じ、約4年ぶりに連続ドラマで主演しました。7月期の『あいの結婚相談所』では、シスター・エリザベス / 猪田花子の役でヒロインを務めています。この年、『日経トレンディ』誌が選ぶ「ヒット人」に、竹内涼真さん、みやぞんさんとともに選ばれました。
大河ドラマ『西郷どん』から『VIVANT』の乃木明美、桂由美さん役へ
2018年の『西郷どん』では、ふきの役でNHK大河ドラマに初めて出演しました。同じ年のスペシャルドラマ『犬神家の一族』では、野々宮珠世を演じています。そのあとも、2020年の『ディア・ペイシェント〜絆のカルテ〜』の真野万里、2021年の映画『夏への扉 -キミのいる未来へ-』の佐藤みどり、2022年のフジテレビ『PICU 小児集中治療室』の羽生仁子と、話題の作品への出演が続きました。
2023年7月16日に放送が始まったTBSのドラマ『VIVANT』では、乃木明美を演じています。同じ年にはU-NEXTの配信ドラマ『MALICE』で林遣都さん、佐藤隆太さんとトリプル主演を務め、谷村夏帆を演じました。テレビ朝日の『単身花日』では桜木ゆり子を演じています。
2024年にはテレビ東京の『夫を社会的に抹殺する5つの方法 Season2』で主演の日野美咲を演じました。ドラマ『はれのひ シンデレラ ウェディングドレスを日本へ! ある女性の挑戦』では、主演として桂由美さんを演じています。映画『コットンテール』ではさつきを演じました。2025年には大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の知保の方と、テレビ朝日『ムサシノ輪舞曲』のヒロイン、武蔵原環を演じています。
将棋は免状初段、書道は5段、高梨臨さんの素顔
高梨臨さんの趣味でよく知られているのが将棋です。日曜日にテレビの将棋講座を見たことがきっかけで始めました。将棋の免状は初段で、これは功労者や普及に貢献した人に贈られるものです。好きな攻め方は矢倉の棒銀だそうです。2014年には羽生善治さんの名人就位式で花束を贈る役を務め、2018年にはNHK BSプレミアムの『一・二・三!羽生善治の大逆転将棋』で司会も担当しました。趣味が仕事につながった形です。
特技は書道で、5段の腕前です。歌うことも特技にあげています。運動では、2017年のJALホノルルマラソンでフルマラソンに初めて挑戦しました。目標の5時間を切る、4時間50分39秒で完走しています。
好きなものの話も親しみやすいものばかりです。好物はイチゴで、ブログの名前にも使いました。ぬいぐるみが好きで、専用の洋服を買って着せ替えるほどです。とくにクマのぬいぐるみが好きだそうです。憧れの俳優にはマット・デイモンさんの名前をあげています。歌手の愛内里菜さんの大ファンでもあり、2010年9月のラストライブを見に行ったことをブログにつづりました。
久しぶりの舞台『シャープさんフラットさん』と高梨臨さんのこれから
高梨臨さんの仕事は演じるだけではありません。2018年にNHKで放送された映画『バーニング』の日本語吹替では、チョン・ジョンソさんが演じたヘミの声を担当しました。2023年に配信が始まったLeminoの番組『the FACE 〜100まで愛して〜』ではMCを務めています。2025年には第23回ベストフォーマリストの女性部門に選ばれました。2026年2月からはちふれ化粧品の「ちふれ」のCMにも起用されています。
2026年の大きな仕事のひとつが、舞台『シャープさんフラットさん』です。6月19日から7月19日までの日程で、東京、名古屋、大阪をまわる公演として発表されました。ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの作品をマギーさんが演出し、柄本時生さんが主人公の劇作家を演じる舞台です。高梨臨さんの役は日田美果です。出演が発表されたときのコメントでは、舞台に立つのはおよそ15年ぶりで、緊張のほうが大きいけれど、精いっぱい楽しみたいと話していました。
原宿でスカウトされたときには、芸能界に憧れていたわけではなかった高梨臨さん。アイドルグループ、特撮ヒーロー、カンヌ国際映画祭の出品作、大河ドラマ、そして久しぶりの舞台と、仕事の場所を広げてきました。次はどんな役に出会うのか、新しい作品を待ちたくなります。
写真: Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan / CC BY 2.0 (Wikimedia Commonsより)


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