珠城りょう、3度目の受験で宝塚へ、入団9年目の月組トップから『VIVANT』へ

『VIVANT』の廣瀬瑞稀、大河ドラマ『べらぼう』のとよしま、『ファーストクライ 母子救命救急班』の間山千夏。ドラマで見かける珠城りょうさんは、宝塚歌劇団の月組でトップスターを務めた人です。入団9年目でのトップ就任は、男役では天海祐希さんに次ぐ速さでした。ところが宝塚との出会いは新聞に載っていたバスツアーの広告で、音楽学校には3度目の受験でようやく合格しています。愛知県蒲郡市のスポーツ少女が歩いてきた道を、順番にたどります。

珠城りょうさんの生い立ち、蒲郡で育った根っからのスポーツ少女

珠城りょうさんは1988年10月4日生まれ、愛知県蒲郡市の出身です。高校は光ヶ丘女子高等学校で、身長は172cmあります。愛称は「りょう」「たまき」です。のちに蒲郡市から特別表彰を受けることになりますが、それはまだずっと先の話です。

子どものころの珠城りょうさんは、とにかく体を動かしていました。3歳で水泳を習い始め、小学生になるとバスケットボールに取り組みます。中学ではハンドボールの主将も務めました。水の中からコートへ、種目を変えながらスポーツを続けていて、根っからのスポーツ少女だったと紹介されています。

この話は、のちの舞台姿につながって見えます。宝塚に入ってからの珠城りょうさんは、恵まれた体格とダイナミックなダンスで早くから注目を集めました。172cmの背丈に加えて、小さいころから水泳やバスケットボール、ハンドボールで体を動かしてきた経験も、舞台の上で生きたのかもしれません。ただ、このころの珠城りょうさんの話に、宝塚はまだ出てきません。出会いは思いがけない所からやってきます。

新聞広告のバスツアーで出会った宝塚、3度目でつかんだ音楽学校の合格

きっかけは新聞で見つけた「宝塚観劇バスツアー」の広告でした。興味をひかれた珠城りょうさんはツアーに参加し、そこで初めて宝塚の舞台を見ます。そして、自分もあのステージに立ちたいと、すっかり心をつかまれました。一枚の広告がスポーツ少女の行き先を変えたことになります。

宝塚の舞台に立つには、まず宝塚音楽学校に入らなければなりません。ここからの道のりは短くありませんでした。合格できたのは3度目の受験です。これで最後にしようと決めて受けた試験で、ようやく願いがかないました。2006年に音楽学校へ入学します。

2008年に音楽学校を卒業した珠城りょうさんは、宝塚歌劇団に94期生として入団しました。入団時の成績は18番です。初舞台は月組公演『ME AND MY GIRL』で、2008年の3月から5月まで宝塚大劇場に立ち、5月から7月には東京宝塚劇場でも同じ作品に出演しています。そのあと配属されたのが月組でした。退団までの13年あまりを、珠城りょうさんはこの月組で過ごします。

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新人公演の主演を重ね『月雲の皇子』へ、月組で積み上げた下積みの7年

入団して間もない珠城りょうさんは、役を少しずつ広げていきます。2009年にはバウホール公演『二人の貴公子』でスターヴリングを、『エリザベート』の新人公演でジュラを演じました。新人公演とは若手だけで本公演と同じ作品を演じる公演のことです。2010年の『HAMLET!!』ではレアティーズを演じました。

同じ2010年、霧矢大夢さんと蒼乃夕妃さんのトップコンビが大劇場でお披露目をした『THE SCARLET PIMPERNEL』で、パーシー・ブレイクニーを演じて新人公演の初主演を果たします。その後も2012年の『エドワード8世』のデイヴィッド、『ロミオとジュリエット』のロミオ、2013年の『ルパン』のアルセーヌ・ラウール・ルパンと、新人公演の主演が続きました。2014年には2013年度の新人賞を受けています。

2013年の『月雲の皇子』では、木梨軽皇子を演じてバウホール公演の初主演を飾りました。この舞台は好評で、同じ年の12月には天王洲 銀河劇場で再演されています。2015年の『Bandito』ではサルヴァトーレ・ジュリアーノを演じ、東上公演の初主演も果たしました。東上公演とは宝塚から東京に上がって行う公演のことです。同じ年の『1789-バスティーユの恋人たち-』ではマクシミリアン・ロベスピエールを演じ、次の大きな役目が近づいていました。

入団9年目で月組トップスターに、珠城りょうさんが見せた異例の速さ

転機は2015年の『舞音-MANON-』『GOLDEN JAZZ』です。5期上の先輩がいる中で、トップスターの龍真咲さんに次ぐ月組の2番手に上がりました。2016年の『激情』ではドン・ホセを演じ、全国ツアーの初主演を経験します。そして2016年9月5日付で、月組トップスターに就任しました。入団9年目での就任は、男役では入団7年目でトップになった天海祐希さんに次ぐ速さで、近年では極めて異例とされました。

相手役は引き続き愛希れいかさんです。『アーサー王伝説』のアーサーでお披露目をし、2017年の『グランドホテル』のフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵で大劇場のお披露目を迎えました。『All for One』のダルタニアン、2018年の『カンパニー』の青柳誠二、『BADDY』のバッディと、印象のちがう役が並びます。同じ年の『エリザベート』では10代目のトートを演じました。

2018年の『エリザベート』のあとは美園さくらさんが相手役になり、2019年の『夢現無双』で新免武蔵を演じて、新しいトップコンビの大劇場お披露目を迎えます。2020年の『赤と黒』のジュリアン・ソレルと続き、2021年の『桜嵐記』で楠木正行を演じました。同年8月15日、『桜嵐記』『Dream Chaser』の東京公演千秋楽をもって美園さんと同時に退団します。公演日程の変更があり、当初の予定より半年遅れての卒業でした。

大海原に放り出された感覚、宝塚を卒業した珠城りょうさんの再出発

退団後の珠城りょうさんはケイパークに所属し、芸能活動を再開します。2021年11月に『Greatest Moment』で舞台に戻り、2022年にはコンサート『CUORE』、舞台『8人の女たち』に出演しました。同じ2022年のドラマ『マイファミリー』では東堂亜希を演じています。

2023年は仕事の幅が大きく広がった年です。退団後初の主演舞台『マヌエラ』で永末妙子を演じ、映画『わたしの幸せな結婚』では桂子を演じました。秋には『天翔ける風に』の三条英、年末には『初恋』の敷島早苗と、舞台の役も続きました。

宝塚で男役を務めてきた人にとって、この変化はどれほど大きかったのでしょうか。2026年のOggiのインタビューで、珠城りょうさんは当時をふり返っています。「芸能界ではガラッと環境が変わりましたし、大海原にバーンと放り出された感覚でしたね。」と話し、「でも結局は、目の前のことをコツコツ積み重ねて場慣れしていくしかない。」と続けました。トップスターまで務めた人の言葉だけに、地道な一言が印象に残ります。

『VIVANT』の廣瀬瑞稀から大河『べらぼう』へ、珠城りょうさんの広がる役

映像の仕事で広く知られる作品のひとつが、TBSの『VIVANT』です。2023年の放送で第6・7・9・最終話に登場し、別班の一員、廣瀬瑞稀を演じました。2026年に放送が始まった第2シーズンにも、同じ廣瀬瑞稀役で出演しています。

ドラマの仕事はこのあとも続きます。2024年の『アンチヒーロー』では沢原麻希を演じました。2025年には大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の第1回から第10回に、とよしま役で出演します。同じ2025年の『人事の人見』では植木奈緒子を、2026年7月から9月に放送した『ファーストクライ 母子救命救急班』では間山千夏を演じました。

舞台も止まりません。2024年には『20世紀号に乗って』でリリー・ガーランドを演じ、2025年12月からは『忠臣蔵』で明治座や御園座、梅田芸術劇場などをまわりました。2026年には『エリザベート TAKARAZUKA30th スペシャル・ガラ・コンサート』で、宝塚時代にも演じたトートをふたたび務めています。ミュージカル『ラパチーニの園』では乳母兼家政婦のリザベタを演じ、「秘めた想いを抱える女性の役は新鮮です。」と語りました。宝塚の男役から乳母兼家政婦まで、演じる役の幅はここまで広がっています。

コールドプレイと地元のおせんべい、仕事の外で見せる珠城りょうさんの素顔

舞台の上の華やかさとはちがう顔も、インタビューから見えてきます。2023年にOggiで、元タカラジェンヌの力丸莉帆さんと話した記事です。退団してからは休みが取りやすくなったそうで、朝はゆっくり起きて、天気がよければカフェへふらっと出かけることもあると話していました。現役のころは数少ない休日を美容院や体のメンテナンス、仕事用の服の買い物にあてていたといいます。

買い物も自分で行きます。「普通にスーパーに行ったりもするけど、全然バレないんです(笑)」という言葉には、トップスターだった人とは思えない気さくさがあります。音楽は「ずっとコールドプレイが好きで」と話し、インストゥルメンタルの曲もよく聴くそうです。美容では韓国コスメが好きで、新大久保のお店で店員さんにいろいろ聞いて買っているといいます。

地元の話も出てきます。小さいころから「一色屋」というお店のおせんべいをよく食べていて、食べ始めると止まらず1袋食べてしまうのだそうです。そんな地元の蒲郡市からは、2022年に特別表彰を受けました。バスツアーに参加した少女が、ふるさとの市から表彰される人になったわけです。

舞台『ハムレット』が控える珠城りょうさん、これから見せる新しい役

次の舞台として発表されているのが、2027年の『ハムレット』です。水戸芸術館が主催する「新しいシェイクスピア劇の創造事業」の作品で、主演は池岡亮介さん、翻訳は小田島創志さん、演出は大澤遊さんが担当します。水戸芸術館ACM劇場で2027年1月29日から31日と2月5日から7日、東京芸術劇場 シアターイーストで2月11日から14日に上演される予定です。

珠城りょうさんと『ハムレット』には縁があります。入団3年目の2010年に、宝塚の『HAMLET!!』でレアティーズを演じていたからです。当時は月組の若手だった人が、およそ17年後に別の形で同じ物語の舞台に立つことになります。

Oggiのインタビューで、珠城りょうさんは「卒業して数年経った今、続けることに大きな意味があるんだなと実感しています。」と語り、「人生一度きりしかないですからね!」とも話していました。新聞の広告を見てバスに乗り、3度目の受験で音楽学校に入り、月組のトップスターから映像の世界へ。そうやって環境を変えてきた珠城りょうさんが、次の舞台でどんな人物を見せてくれるのか、楽しみに待ちたくなります。

参考:珠城りょうの詳しいプロフィール(Wikipedia)

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