
Perfumeが選んだコールドスリープという区切り
2025年12月31日、第76回NHK紅白歌合戦のステージで、Perfumeは「ポリリズム」から「巡ループ」へとつなぐメドレーを披露しました。LEDにはNHKがこれまでの番組で記録してきた3人の姿が映し出され、最後は粒子になって消えていく演出です。この日を区切りに、Perfumeは「コールドスリープ」と名づけた活動休止に入りました。
発表は、メジャーデビュー20周年の記念日にあたる2025年9月21日のことでした。翌日からの2日間は、5年ぶりとなる東京ドーム公演「Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス” Episode TOKYO DOME」が開かれ、2日目が休止前の単独公演としてのラストライブになりました。
あ〜ちゃん(西脇綾香さん)、かしゆか(樫野有香さん)、のっち(大本彩乃さん)の3人は、全員が広島県の出身です。地元のローカルアイドルから始まり、日本のテクノポップを代表する存在になるまでには、アイドルグループとしては異例といわれるほど長い下積みがありました。
広島のアクターズスクールで出会った3人
始まりは1998年12月です。小学4年生だったかしゆかさんとあ〜ちゃんは、ある芸能スクールの体験レッスンで出会いました。年上ばかりのなかで同じ学年はふたりだけ。あ〜ちゃんは初対面のかしゆかさんに、いきなり握手を求めたそうです。
1999年春、テレビ新広島がアミューズと組んで開校したアクターズスクール広島に、3人は第1期生として入学します。このとき、スクール内のユニット「ぱふゅ〜む」が生まれました。名前は、結成当初のメンバー全員の名前に「香」の字が入っていたことに由来します。2001年にのっちさんが加わり、いまの3人がそろいました。のっちさんは前の年のひろしまフラワーフェスティバルで、別のユニットとしてぱふゅ〜むと同じステージに立っていて、かしゆかさんはそのとき初めてのっちさんを知ったそうです。
スクールの開校と同時にダンス講師になったのが、のちに演出振付家として知られるMIKIKOさんです。以後、Perfumeのほぼすべての曲の振り付けを手がけ、「4人目のPerfume」と呼ばれるほど深い関係を築いていきます。
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ビラ配りの日々と中田ヤスタカさんとの出会い
2002年3月、Perfumeはシングル「OMAJINAI★ペロリ」でインディーズデビューしました。広島限定のご当地アイドルとして、商店街の盆踊りや区民まつり、住宅展示場のイベントにも出ています。2枚目の「彼氏募集中」のときには、寒いなかメンバーと母親たちで大量のビラを配ったのに、CDショップのイベントに来たお客さんは2人だけでした。3人がテレビやライブでたびたび話してきた、ファンにはおなじみのエピソードです。
2003年春、中学3年生への進級と同時に上京し、表記をアルファベットの「Perfume」に改めます。同じ年の8月に出したシングル「スウィートドーナッツ」から、サウンドプロデューサーにCAPSULEの中田ヤスタカさんを迎えました。当時のマネージャーが中田さんの曲を聴いて、直接プロデュースを頼みに行ったのがきっかけです。広島時代のアイドル歌謡から、テクノポップへと大きく舵を切りました。
ただ、最初から順調だったわけではありません。テクノポップという音楽を知らなかった3人は、中田さんの「しゃべるように歌って」という指示がつかめず、泣きながらレコーディングを重ねていたといいます。
メジャーデビュー後も続いた長い下積み
2005年9月21日、シングル「リニアモーターガール」でメジャーデビューしました。「近未来型テクノポップユニット」を名乗り、衣装も黒を基調にしたものに変わります。ところが売り上げは約2,500枚。続く「コンピューターシティ」も約4,000枚と、広島限定で出したころと大きくは変わりませんでした。
2006年8月には、メジャーデビューからわずか1年でベストアルバム『Perfume〜Complete Best〜』を発売します。当時のマネージャーは、ベスト盤が出ると事実上の契約終了になる例を見ていたため、メンバーも自分も終わりが近いのではと思っていたと証言しています。
3人はインディーズのころから、秋葉原の路上ライブや小さなイベントで経験を積んできました。スペースシャワーTVの生配信では、畳2畳ほどの狭いスペースで「エレクトロ・ワールド」を踊りきり、「セマイドル」という言葉が生まれています。動画サイトにファンが投稿した映像も少しずつ広まり、アイドルファン以外の人たちにも名前が届き始めました。
Perfumeの名前を広げた「ポリリズム」
大きな転機は2007年です。7月に、ACジャパンとNHKによる環境キャンペーンのCMに3人が出演し、そこで流れた「ポリリズム」が大きな反響を呼びました。9月12日に発売されたシングル「ポリリズム」はオリコン週間チャートで7位に入り、ブレイクのきっかけになります。11月の恵比寿リキッドルーム公演では、幕が落ちて超満員の客席が見えた瞬間、あ〜ちゃんが涙を流したそうです。
2008年4月16日に発売したアルバム『GAME』は、オリコン週間アルバムチャートで1位を獲得しました。テクノのアーティストとしては、YMOの『浮気なぼくら』以来24年11か月ぶりの快挙です。11月には念願の日本武道館で2日間のワンマンライブを成功させ、12月31日の第59回NHK紅白歌合戦に初出場して「ポリリズム」を歌いました。紅白への出場は、2023年まで16年連続で続きます。
ブレイクの前後には、ほかにも追い風がありました。2007年3月から、木村カエラさんが自身のラジオ番組でPerfumeの曲を4週にわたって流し続けます。8月には、アイドルとしては異例の「サマーソニック07」出演を果たし、ロックフェスに立つアイドルの先駆けになりました。2008年2月14日には公式ファンクラブ「P.T.A.」も発足しています。
東京ドームから世界のステージへ
2010年11月3日、Perfumeは東京ドームでワンマンライブを開きました。国内の女性グループとしては、SPEEDに続いて史上2組目のことです。このライブの映像作品は、第15回文化庁メディア芸術祭の審査委員会推薦作品にも選ばれています。
2012年4月には、シングル「Spring of Life」から専用レーベル「Perfume Records」を立ち上げました。同じ年には初の海外単独ツアー「Perfume WORLD TOUR 1st」で、台湾、香港、韓国、シンガポールをまわりました。2013年にはフランスで開かれた広告祭「カンヌライオンズ」に日本人アーティストとして初めてゲストで招かれ、海外向けのサイトがサイバー部門で銀賞を受けています。2014年の「Perfume WORLD TOUR 3rd」ではロサンゼルス、ロンドン、ニューヨークでも公演し、アメリカで初めてのワンマンライブを実現しました。
2019年4月には、アメリカ最大級の野外フェス「コーチェラ」に日本人女性アーティストとして初めて出演します。前の年にNHKホールで始めた、最新の技術と表現を組み合わせた公演「Reframe」も、この年はLINE CUBE SHIBUYAのこけら落としとして行い、音楽とテクノロジーを結ぶ挑戦を続けました。
ネビュラロマンスからPerfumeのいまへ
2024年10月30日にアルバム『ネビュラロマンス 前篇』を、2025年9月17日に『ネビュラロマンス 後篇』を発売しました。後篇に向かう2025年には、日本テレビ系ドラマ『ちはやふる-めぐり-』の主題歌「巡ループ」も配信しています。全国11か所23公演のアリーナツアーを経て、9月の東京ドームへとつながっていきました。
2026年5月15日には、ドキュメンタリー映画『Perfume“コールドスリープ”-25 years Document-』が全国公開されました。2019年ごろから始まった密着に、東京ドーム公演やコールドスリープ発表後の舞台裏が加わった作品です。かしゆかさんは公開前のコメントで「なぜ私たちが、今、コールドスリープするという決断をしたのか、できたのか、という私たちのグループの本当に核になる部分が映してあると思います。」と話しています。
のっちさんも「今回のコールドスリープも挑戦だと思っていて、その決断に至るまでに、3人でもたくさん話し合いました。」とコメントしました。映画の主題歌には、休止前に録音していた新曲「コールドスリープ」が使われています。5月27日には、東京ドーム公演を収めた映像作品「Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス” -完全版-」も発売されました。
リーダーのいない3人が大切にしてきたこと
Perfumeにはリーダーがいません。何かを決めるときも、だれかの意見を押し通すことはなく、3人が同じ立場で話し合ってきました。かしゆかさんはこの関係を、終わりのないジャンケンのようなものだと例えています。ステージのセンターも決まっておらず、1曲のなかでも3人の立ち位置は入れかわります。
上京してから決まった3人の髪型は、みんなでビッグになって覚えてもらうまでは変えないと決めたもので、これまで一度も髪を染めていないそうです。最初は理解できなかった中田さんの曲についても、クラブで観客が楽しそうに踊る姿を見てから自信を持つようになり、いまでは中田さんの存在が欠かせないと語っています。
2015年のドキュメンタリー以来、10年ぶりとなった映画で、3人は自分たちで出した答えをファンに見せました。休止の前後には、ステージ衣装を集めた展覧会や過去の映画のリバイバル上映も開かれました。眠りについたPerfumeが、次にどんな音とダンスで目を覚ますのか。その日を待つ人は、いまも国内外にたくさんいます。
写真: 株式会社スペシャネット / CC BY 2.0 (Wikimedia Commonsより)


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