阿部寛、ノンノのカリスマモデルが不遇の3年を越えて『TRICK』『VIVANT』の名優に

阿部寛 男性芸能人
写真: Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan / CC BY 2.0(Wikimedia Commons)
阿部寛の写真

阿部寛さんが『VIVANT』と『イクサガミ』で見せた存在感

2026年7月26日、TBSの日曜劇場『VIVANT』の第2シーズンが始まりました。阿部寛さんが演じるのは、2023年の第1シーズンに続いて公安の野崎守。第1シーズンから3年ぶりの続編です。

2025年11月には、岡田准一さんが主演とプロデューサーを務めたNetflixシリーズ『イクサガミ』に、岡部幻刀斎役で出演しました。シーズン2の制作決定にあたっては「岡田准一さんと藤井道人監督がNetflixで時代劇を制作されると伺い、自ら志願して参加させていただいた本作。」とコメントしています。2025年はドラマ『キャスター』で主演の進藤壮一を演じ、映画でも『ショウタイムセブン』の折本眞之輔、『キャンドルスティック』の野原、『俺ではない炎上』の山縣泰介と、主演作が続きました。

身長189cm、日本を代表する俳優のひとりとなった阿部さん。けれどその道のりは、決して一直線ではありませんでした。

横浜で育った理工学部生がノンノのカリスマモデルに

阿部さんは1964年6月22日、神奈川県横浜市で3人きょうだいの末っ子として生まれました。横浜市立三ツ沢小学校、横浜市立松本中学校、神奈川県立白山高等学校を経て、一浪ののち中央大学理工学部電気工学科に進みます。父は寡黙な技術者で、世界最大級のダンプカーの建造に携わっていたそうです。

1985年、大学在学中に姉のすすめで「集英社第3回ノンノボーイフレンド大賞」に応募し、優勝します。応募の決め手は、優勝賞品の車がほしかったからという、なんとも正直なものでした。ここから雑誌『ノンノ』『メンズノンノ』のカリスマモデルとして、一気に時の人になります。1990年と1992年には、阿部さんの名前を冠したセーターの本まで出版されたほどの人気でした。

1987年には、南野陽子さん主演の映画『はいからさんが通る』で伊集院忍を演じて俳優デビュー。1988年にはアルバム『ABE』もリリースし、アイドルとしても活動しました。華やかな出発でしたが、ここから思いがけない回り道が始まります。

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二枚目の役しか来なかった不遇の3年

ところが、俳優としての歩みは順調ではありませんでした。モデル出身という肩書きと整った顔立ちから、回ってくるのは決まりきった二枚目の役ばかり。本人はのちに、当時の役柄をフェラーリで乗り付けるような役だったと振り返っています。さらに背が高すぎて、女性とのツーショットが撮りにくいという問題もあり、ドラマの仕事は少しずつ減っていきました。

3年ほど仕事に恵まれない時期が続きます。この頃に始めた古武術が、のちの仕事につながっていきました。そんな中、かつて一世を風靡した有名人を探すバラエティ番組『あの人は今!?』の取材で、捜索される側になってしまいます。この出来事が、阿部さんが一念発起するきっかけになりました。

本人の著書によると、1992年、NHKドラマ『チロルの挽歌』に高倉健さんが主演すると聞き、名前のつかない端役でも出演を希望したそうです。何か小さなことでもヒントを得たいという思いでした。役名は「作業員C」。思うようにいかない時期にも、自分から学びに行く姿勢を手放しませんでした。

つかこうへいさんの舞台と大河ドラマが開いた転換期

流れが変わったのは1993年です。つかこうへいさん作・演出の舞台『熱海殺人事件 モンテカルロ・イルージョン』で、部長刑事役として主演しました。この舞台は1996年まで続き、1998年と2002年にも上演されています。

1994年には、あこがれだった役所広司さんと映画『大阪極道戦争 しのいだれ』で共演し、主演作『凶銃ルガーP08』とあわせて、日本映画プロフェッショナル大賞の特別賞を受けました。

1995年、NHK大河ドラマ『八代将軍吉宗』で有能な老中・松平乗邑を演じたのをきっかけに、時代劇への出演も増えていきます。大河ドラマではその後も、1999年の『元禄繚乱』で堀部安兵衛、2003年の『武蔵 MUSASHI』で祇園藤次、2005年の『義経』で平知盛、2009年の『天地人』で上杉謙信と、重要な役どころを立て続けに任されました。1993年のドラマ『運命峠』では柳生十兵衛を、1996年から始まったNHKの金曜時代劇『天晴れ夜十郎』では主人公の碑夜十郎を演じています。二枚目だけではない役者として、少しずつ信頼を積み上げていった時期です。

『TRICK』の上田次郎で阿部寛さんが再ブレイク

2000年、仲間由紀恵さんとダブル主演したテレビ朝日のドラマ『TRICK』が始まります。阿部さんが演じたのは上田次郎。劇中では自身のモデル時代の写真を自虐ネタとして何度も使うなど、とことん三枚目を演じきりました。これが大当たりし、シリーズは2014年の『トリック劇場版 ラストステージ』まで続く人気作になります。上田次郎が書いたという体裁の本『どんと来い!超常現象』まで出版されました。

ここから出演作が一気に増えていきます。2001年の『HERO』では芝山貢を演じ、『できちゃった結婚』『アンティーク 〜西洋骨董洋菓子店〜』『五瓣の椿』でギャラクシー賞テレビ部門の個人賞を受賞。2003年の『最後の弁護人』では主人公の有働和明、2004年の『アットホーム・ダッド』では主人公の山村和之を演じました。2005年の映画『姑獲鳥の夏』で榎木津礼二郎を演じたことをきっかけに、原作者・京極夏彦さんの作品の文庫版で解説を書いたこともあります。

2005年の『ドラゴン桜』では桜木建二、2006年の『結婚できない男』では桑野信介を演じ、どちらもザテレビジョンドラマアカデミー賞の主演男優賞に輝きます。2006年にはアニメ映画『真救世主伝説 北斗の拳 ラオウ伝 殉愛の章』で、ケンシロウの声にも挑みました。

『テルマエ・ロマエ』で日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞

2008年には、映画『歩いても 歩いても』の横山良多と『青い鳥』の村内先生で、毎日映画コンクールの男優主演賞を受けました。2009年から2011年にかけて放送されたNHKの『坂の上の雲』では秋山好古を演じ、2010年のTBSドラマ『新参者』では加賀恭一郎を演じます。加賀恭一郎は、のちに映画『麒麟の翼 〜劇場版・新参者〜』『祈りの幕が下りる時』へと続く当たり役になりました。

2012年の映画『テルマエ・ロマエ』では、古代ローマ帝国の浴場設計技師ルシウス・モデストゥスを演じます。この作品などで、ヨコハマ映画祭の主演男優賞、ブルーリボン賞の主演男優賞、そして第36回日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞を受賞しました。

2015年からはTBSのドラマ『下町ロケット』で、佃航平を演じ、東京ドラマアウォード2016の主演男優賞を受賞。同じ年には、京都国際映画祭2016で三船敏郎賞も受けました。2016年の映画『エヴェレスト 神々の山嶺』では、岡田准一さん演じる深町誠とともに、羽生丈二を演じています。2021年には『ドラゴン桜』の続編で再び桜木建二を演じました。2022年にはニューヨーク・アジアン映画祭で、日本人として初めてスター・アジア賞を受けています。2023年は『VIVANT』の野崎守でザテレビジョンドラマアカデミー賞の助演男優賞を受け、大河ドラマ『どうする家康』では武田信玄を演じました。

焼き芋と軽すぎるホームページで知られる素顔

愛称は「アベカン」。1998年の『アベちゃんの悲劇』、2002年の『アベちゃんの喜劇』と、自分の歩みをつづったエッセイも出しています。趣味はテニスと古武術で、20代のモデル時代から、トレーニングジムで心と体を鍛えることを続けています。

大好物は焼き芋です。多いときは1日に3〜4本食べると2018年ごろから話していて、スーパーに行くたびにたくさん買ってしまうため、阿部さんが来店すると店員さんが焼き芋を隠すようになった、という話もあるほどです。2022年には、自分のモノマネをする芸人さんとテレビで共演した際、滑舌について注意しようとして「滑舌」という言葉をかんでしまい、スタジオを笑いに包んだこともありました。

インターネットでは「阿部寛のホームページ」も有名です。シンプルで軽く、どのページもほぼ一瞬で表示されることで知られ、回線の速さを確かめる目安として使う人がいるほど。もとはファンサイトでしたが、本人と事務所が認めて公式サイトになりました。阿部さん自身も、このホームページをとても気に入っているそうです。2018年に台湾で花蓮地震が起きたときには、1000万円を寄付しています。尊敬する俳優は大滝秀治さんで、ドラマ『最後の弁護人』で共演を果たしました。

阿部寛さんがキャリア40周年に挑む新しい役

2026年10月30日には、森田剛さん主演の映画『見上げてごらん』が公開されます。漫画制作の現場を舞台にした人間ドラマで、阿部さんは馬場明を演じます。12月25日公開の『SUKIYAKI 上を向いて歩こう』では、ジャズの世界にいた中村八大さん(岡田准一さん)に歌謡曲という新しい挑戦を突きつけるプロデューサーの鍋山を演じます。役づくりでは、渡辺晋さんを参考にしたそうです。古い建物での撮影もあり、「何十年も前の空気感にすごくワクワクしました。」とコメントしています。

そして2027年2月5日には、主演映画『ハッピーリスト』が公開予定です。外山文治監督の作品で、阿部さんが演じるのは、40年ぶりに社会へ踏み出す59歳の江川太郎。永瀬廉さんとは初共演です。俳優としてのキャリアが40周年を迎える2027年に、『VIVANT』などで見せる力強い演技から一転、繊細な表情で太郎を演じます。作品については「失ってしまった時間は取り戻せなくても、人はそこからもう一度、自分の人生を始めることができる。」と語っています。2027年11月には映画『腹をくくって』の公開も控えています。

賞品の車がほしくて応募したモデルコンテストから、およそ40年。二枚目の役しか来なかった時期を越えて、三枚目もヒーローも演じきる阿部さんの挑戦は、まだまだ続きます。

写真: Dick Thomas Johnson from Tokyo, Japan / CC BY 2.0 (Wikimedia Commonsより)

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