内村光良さんが24時間テレビの総合司会に立った夏
2026年8月29日から30日にかけて、日本テレビの『24時間テレビ49 愛は地球を救う』が放送されました。総合司会を務めたのは内村光良さん。羽鳥慎一さん、水卜麻美アナウンサーと並んで、テーマ「わたしの家族の話〜あなたは誰を想う?〜」の24時間を進行しました。内村さんは『24時間テレビ』と『FNS27時間テレビ』の両方で、総合司会やコーナーの司会を務めてきた人でもあります。
同じ2026年には、2月23日放送の『ザ・イロモネア』では、ピン芸人としてトリで出場し、2回目の100万円を手にしています。5月にはぴあアリーナMMで『LIFE! ON STAGE 〜マーベラーに捧げるコント〜』に立ち、11月には毎年恒例の主催ライブ『内村文化祭』が「’26旅姿」と題して金沢、福岡、東京をめぐります。
司会でもコントでも、いまも第一線にいる内村さん。けれども出発点は、熊本の山あいで8ミリカメラにふれた映画好きの少年でした。お笑い芸人になるつもりで上京したわけではなかったのです。
熊本の酒屋で育った映画少年
内村さんは1964年7月22日、熊本県球磨郡上村(現在のあさぎり町)で生まれました。小学4年生のときに人吉市の小学校へ転校し、人吉市立第二中学校、熊本県立人吉高校へと進んでいます。
映画との出会いは、父親が趣味で買った8ミリカメラと映写機でした。中学生のころに観たチャップリンの『街の灯』と『ロッキー』に心をつかまれ、映画監督を志すようになります。中学の文化祭では映画をモチーフにした劇を上演し、脚本・演出・主演を一人でこなしました。肌は小さいころから白く、小学校の担任の先生から、歌舞伎役者になるといいとすすめられたこともあったそうです。
高校時代には、実家の酒屋の仕事を手伝ってもらったお金で撮影機材をそろえ、自主映画を撮って上映するようになります。『卒業』『小さな恋のメロディ』『明日に向って撃て!』を加えた5本を、いまも不動のベスト5に挙げています。思春期から高校時代のことは、のちに自伝的小説『アキオが走る』(1996年)に書いています。
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映画学校の漫才の授業で生まれたウッチャンナンチャン
高校を出た内村さんは、映画監督を目指して横浜放送映画専門学院(現在の日本映画大学)の演劇科に第9期生として入学します。ここで出会ったのが、南原清隆さん、出川哲朗さん、入江雅人さんたちでした。出川さんからは、この学校のころから「チェン」と呼ばれ続けています。専門学校のころは、横浜の大学に通っていたいとこで、のちに放送作家になる内村宏幸さんと一緒に暮らしていました。
在学中の1984年、漫才の授業をきっかけに南原さんとコンビを結成しました。講師をしていた内海桂子さん・好江さんの勧めでマセキ芸能社に所属し、『お笑いスター誕生!!』に出演します。活動の初めのころにかけていたメガネは、南原さんと顔が似ているのでメリハリをつけるようにと、番組のスタッフに言われてかけたものでした。素の自分を前に出す南原さんとは対照的に、内村さんはキャラクターを演じきって笑いを取る「憑依芸人」と呼ばれるタイプです。松本人志さんは、そのキャラクターの引き出しの多さを高く評価しています。
一方で、映画の夢も手放してはいませんでした。在学中にはぴあフィルムフェスティバルに作品を応募しています。結果は落選でしたが、この思いはのちに監督として実を結ぶことになります。
ショートコントと夢で逢えたらで駆け上がった90年代
ウッチャンナンチャンは「ショートコント」というスタイルを確立し、とんねるずやダウンタウンらと並んで「お笑い第三世代」の一角としてバラエティ界を引っぱりました。『夢で逢えたら』への出演をきっかけに、内村さんはスタジオコントにこだわるようになります。
『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』では、満腹ふとるや九州男児、マモーといったキャラクターを次々に演じました。マモーとミモーの掛け合いから生まれた「マモーミモー 野望のテーマ」は大ヒットしています。ジャッキー・チェンさんに似ていることから、「ウッチー・チェン」に扮して、でたらめな中国語と体を張ったアクションで笑わせるコントもありました。
『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』では、内村さんの強い希望でコントライブのコーナーが設けられました。1998年にはこの番組から生まれたポケットビスケッツのメンバーとして『第49回NHK紅白歌合戦』に初出場。1999年には企画「ドーバー海峡横断部」の遠泳リレーで横断に成功しました。のちに、人生でいちばんきつかった仕事として振り返っています。
内村プロデュースからイッテQへ続くピンの時代
2000年代に入ると、内村さんの活動はピンが中心になります。2000年に始まった『内村プロデュース』は2005年まで続き、出川さんによると、内村さんはこの番組のころから急に社交的になって、打ち上げや芸人仲間との飲み会を楽しむようになったそうです。
2007年2月には『世界の果てまでイッテQ!』、2009年4月には『スクール革命!』が始まり、どちらもいまも続いています。さまぁ〜ずと組んだ『内村さまぁ〜ず』は、2012年にDVDのリリース本数でギネス記録に認定されました。『新ウンナンの気分は上々。』の企画で、バカルディを「さまぁ〜ず」に、海砂利水魚を「くりぃむしちゅー」に改名させたのも内村さんです。
コントへの情熱も途切れませんでした。志村けんさんから、ずっとコントをやったほうがいいと声をかけられたことが『笑う犬』シリーズにつながったといいます。ただ、そのとき志村さんはかなり酔っていて、言ったことを覚えていなかったそうです。2012年にはNHKで『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』が始まり、宇宙人総理や三津谷寛治といったキャラクターが生まれました。
映画監督と紅白の総合司会、内村光良さんの二つの夢
2006年、内村さんは自ら脚本を書いた『ピーナッツ』で映画監督としてデビューし、主人公の秋吉光一も演じました。2013年には『ボクたちの交換日記』、2016年には原作・監督・脚本・主演を務めた『金メダル男』(知念侑李さんとダブル主演)、2023年には『夏空ダンス』を発表しています。2019年には初の書き下ろし長編小説『ふたたび蝉の声』も出しました。
俳優としては、1992年の映画『七人のおたく』の近藤みのる役で日本アカデミー賞新人俳優賞を受けています。ドラマ『西遊記』では沙悟浄を演じ、小学生のころから見てきた連続テレビ小説には、2019年の『なつぞら』でなつの父とナレーションを兼ねて出演しました。映画『SING/シング』ではバスター・ムーンの声を担当し、2024年の劇場アニメ『トラペジウム』では伊丹秀一の声も演じています。
2017年からは『NHK紅白歌合戦』の総合司会を4年続けて務めました。芸人ではタモリさん以来2人目です。桑田佳祐さんは自身のラジオで、内村さんを紅白の神主にたとえてその温かさをほめています。2024年の『第75回NHK紅白歌合戦』では、ゲスト審査員と「放送100年 特別企画 歌って踊ろう! KIDS SHOW」の司会を務めました。2019年2月には人吉市民栄誉賞を受けました。
優しさの鬼と呼ばれる素顔
内村さんは、番組ですべった後輩を収録のあとに叱ったり、ダメ出しをしたりしないことから「優しさの鬼」と呼ばれています。周りが批評をしていても、あそこは良かったよね、と必ず良いところを見つけるそうです。悩むことはあっても最後は楽観的で、売れなかった時代も、なんとかなると考えていたといいます。街を歩いていてもあまり気づかれず、2021年の時点でも電車を使っていて、Suicaにはいつも5,000円以上をチャージしていると話しています。
好きな食べ物はチャーハン。自分で作る料理の中で唯一自画自賛できるメニューで、豆ご飯と並んでおふくろの味だと『イッテQ!』で語っています。音楽ではサザンオールスターズが好きで、桑田さんのミュージックビデオ「白い恋人達」にも出演しました。『銀河英雄伝説』の大ファンで、演じてみたいキャラクターにヤン・ウェンリーを挙げたこともあります。欅坂46のファンでもあり、紅白や『内村文化祭』でダンスを披露してきました。
体を張ることもいといません。35歳のときにはスーツ姿のまま50メートルを6秒8で走り、50歳を過ぎてもバック転や鉄棒の大車輪を成功させています。故郷への思いも深く、人吉市限定の情報誌『どぅぎゃん』には創刊号から毎年2回寄稿を続けています。
還暦をこえてもコントの舞台を手放さない内村光良さん
2017年から毎年続く『内村文化祭』は、2024年に「’24還暦」と題して熊本城ホールでも開かれました。2026年の「’26旅姿」は、11月に金沢市文化ホールを皮切りに福岡、浅草公会堂をまわります。さらに2027年3月から4月には、東京建物 ぴあ シアターで作・演出・出演を務める舞台『Time moves on 〜みどりと急須の精〜』が予定されています。
コント番組のブームが1990年代の終わりに落ち着いたあとも、内村さんは『笑う犬』『爆笑レッドシアター』『LIFE!』とスタジオコントを作り続けてきました。放送作家の高須光聖さんは、コントが大好きな芸人と聞いて真っ先に浮かぶのは内村さんだと話しています。『ザ・イロモネア』には2008年、ピン芸人「ザ・テルヨシ」として漫談で挑み、本戦の最後の挑戦で敗れたこともありました。それから18年後の2026年、ひとりで100万円をつかんだことになります。
本人も、スタジオコントは「得意分野なので続けていきたい」と語っています。映画少年だった人吉の高校生は、いまもカメラの前でいくつものキャラクターを演じ分けています。次の舞台でどんな人物が生まれるのか、楽しみに待ちたいところです。


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