スピッツが約3年半ぶりに届ける新作『kettle』
2026年11月25日、スピッツの18作目となるオリジナルアルバム『kettle』が発売されます。前作『ひみつスタジオ』から約3年半ぶりの作品で、全13曲を収録。TBS系金曜ドラマ『Tシャツが乾くまで』の主題歌「見知らぬ糸」、キリン午後の紅茶のCMソング「キツネノボタン」、TVアニメ『SPY×FAMILY』Season 3のオープニング主題歌「灯を護る」が入ります。
「見知らぬ糸」は2026年8月7日に配信され、Billboard JAPAN Hot 100で5週連続トップ10入りしました。2027年3月6日からは、横浜アリーナを皮切りに全国13都市28公演をまわるツアー『SPITZ JAMBOREE TOUR 2027 “kettle”』も予定されています。アルバムのデラックスエディションには、2026年のファンクラブ会員限定ツアー「GO!GO! スカンジナビア vol.9」のライブ音源7曲を収めたCDも付きます。
ボーカルとギターの草野マサムネさん、ギターの三輪テツヤさん、ベースの田村明浩さん、ドラムの﨑山龍男さん。1987年の結成から一度もメンバーが変わっていない4人です。いまも新しい曲で世代を越えて聴かれるバンドですが、はじまりはパンクでした。
美大のサークルで出会った2人と幼なじみ
1986年の春、草野さんと田村さんは東京造形大学で出会い、同じ音楽サークルに入りました。先輩たちの演奏に刺激を受けてパンクをやろうと決め、バンドを組みます。「365歩のマーチ」をパンク調にするなど、遊び心のあるアレンジで演奏していたそうです。のちに「ザ・スピッツ」と名前を変えたこのバンドは、草野さんがTHE BLUE HEARTSの「人にやさしく」を聴き、自分のやりたいパンクを先にやられてしまったと感じたことで活動を止めました。
1987年、草野さんは武蔵野美術大学に入り直します。それでも田村さんとの縁は続いていて、ある日、草野さんがライブハウスで演奏できる本格的なバンドの話を持ちかけました。田村さんは上京していた幼なじみの三輪さんを誘い、三輪さんは文化服装学院のフォークソング部で一緒だった﨑山さんを誘います。
こうして生まれたのがスピッツです。1987年7月17日、文化服装学院の夏祭りで初めてのライブを行いました。その後は新宿ロフトを目標に、新宿JAMや渋谷ラ・ママ、屋根裏といったライブハウスに出演し、1988年5月からは歩行者天国でも演奏を重ねていきます。
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ブルーハーツの影から抜け出すまで
インディーズ時代のスピッツは、ビートパンクと呼ばれる音を鳴らしていました。ただ、THE BLUE HEARTSの影響からはなかなか抜け出せず、渋谷ラ・ママの店長からは、二番煎じでは先がないと言われてしまいます。草野さん自身も、観客をあおるスタイルは自分に似合わないと感じていました。
転機になったのは、イギリスのシンガーソングライター、ドノヴァンの音楽です。強く影響を受けた草野さんは、アコースティック・ギターを手にするようになります。この時期には、のちのデビュー曲「ヒバリのこころ」もすでに生まれていました。1988年には、ソノシート『鳥になって/UFOの見える丘』を自主制作しています。
1989年7月12日には、新宿ロフトでのワンマンライブで300人を集めます。12月からは同じ新宿ロフトで毎月のライブを開き、翌年にはロフトのインディーズレーベルから初めてのCD『ヒバリのこころ』を出しました。多くのレコード会社から声がかかるなか、4人は自分たちの考えが変えられてしまうことを心配し、レコード会社より先に事務所を決めたいと伝えたそうです。
チャートに入らなかったデビューからの3年
1991年3月25日、スピッツはシングル「ヒバリのこころ」とアルバム『スピッツ』を同時に発売し、ポリドールからメジャーデビューしました。収録曲の「ニノウデの世界」がFM802のヘビーローテーションに選ばれ、音楽雑誌でも取り上げられましたが、オリコンチャートには入りませんでした。同じ年には初めてのホールツアー『名前のないツアー』を開き、1992年5月には公式ファンクラブ「スピッツベルゲン」が生まれています。
その後も「夏の魔物」「魔女旅に出る」、アルバム『名前をつけてやる』『惑星のかけら』と作品を重ねます。1993年には初めて外部のプロデューサーとして笹路正徳さんを迎え、アルバム『Crispy!』から切り出したシングル「君が思い出になる前に」で、初めてオリコンチャートに名前が載りました。
1994年には、のちに大きく羽ばたくことになる「空も飛べるはず」と「青い車」を発表します。アルバム『空の飛び方』は再び笹路さんをプロデューサーに迎えて作られ、収録曲の「スパイダー」もシングルとして切り出されました。
「ロビンソン」と「チェリー」が鳴りやまなかった時代
1995年、11枚目のシングル「ロビンソン」が、スピッツにとって初めてのオリコントップ10入りを果たしました。チャートには通算30週以上も入り続け、約162万枚を売り上げるミリオンセラーになります。続く「涙がキラリ☆」も初登場2位を記録し、アルバム『ハチミツ』は初のオリコン1位を獲得して、こちらもミリオンセラーになりました。
1996年には、ドラマ『白線流し』の主題歌に2年前の「空も飛べるはず」が使われ、出荷し直したシングルがオリコン1位を取ってミリオンセラーになります。この曲は、ザテレビジョンドラマアカデミー賞の主題歌賞にも選ばれました。同じ年に出した「チェリー」も約161万枚を売り上げ、続く「渚」は初登場1位を記録しました。夏には奥田民生さんやウルフルズとの野外ライブ『ガッツな息子がキラリ☆』にも出演しています。
「ロビンソン」は第37回日本レコード大賞で優秀作品賞を、『ハチミツ』はベストアルバム賞を受けています。1995年の夏からは、ファンクラブ会員限定のライブ「GO!GO!スカンジナビア」も始まり、数年ごとに開く恒例のライブになっていきます。
ライブとイベントを大切にしてきた歩み
ブレイクのあとも、スピッツはライブの場を大事にしてきました。1997年には、大阪を中心とする関西で主催イベント「ロックロックこんにちは!」を始め、2000年からは仙台でも開催します。仙台のイベントは2010年から「ロックのほそ道」と名前を変え、同じ年には東京で「新木場サンセット」も始まりました。
1999年には、バンドの音を突きつめるために、ロサンゼルスで初めての海外レコーディングを行いました。1999年に出たベストアルバム『RECYCLE Greatest Hits of SPITZ』は、累計200万枚を超えるロングセラーになっています。
2009年には、さいたまスーパーアリーナと大阪城ホールで初めてのアリーナ単独公演を開きました。2014年にはバンド単独として初めての日本武道館公演を行い、2017年には結成30周年のアリーナツアー『SPITZ 30th ANNIVERSARY TOUR “THIRTY30FIFTY50″』で全国をまわっています。その間の2013年には、横浜赤レンガパークで16年ぶりの野外単独ライブ『スピッツ 横浜サンセット2013』を開き、2015年にはその映像が劇場でも公開されました。
朝ドラからアニメまで広がるスピッツのいま
2019年、NHK連続テレビ小説『なつぞら』の主題歌「優しいあの子」が生まれました。同じ年、公式YouTubeチャンネルの「ロビンソン」のミュージックビデオが、90年代に出た邦楽の曲として初めて再生回数1億回を超えます。その後「チェリー」「空も飛べるはず」も1億回を突破しました。2021年にはデビュー30周年を記念して、TBS『NEWS23』のエンディングテーマ「紫の夜を越えて」を配信し、『劇場版「きのう何食べた?」』の主題歌「大好物」も届けています。
2023年には『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の主題歌「美しい鰭」を手がけ、アルバム『ひみつスタジオ』を発売。2024年11月から2025年1月にかけては、東京・六本木で初めての大規模展覧会『SPITZ, NOW! 〜ロック大陸の物語展〜』も開かれました。
2025年10月に配信した「灯を護る」について、草野さんは作品の根底に流れる哀しみから逃げない歌にしたかったと語り、「きちんと作品に寄り添えてたらいいなあと思います」とコメントしています。2026年の「見知らぬ糸」でも、ドラマとあえて「リンクし過ぎない」ように作ったと明かし、「ちゃんと寄り添えますように」と言葉を添えました。
スピッツという名前にこめたもの
バンド名のスピッツは、草野さんが高校時代から温めていた名前です。短くてかわいいうえにパンクっぽいこと、犬種の日本スピッツのように弱いのによく吠えるというパンクバンドらしい意味もこめられています。「SP」の音で始まる名前にしたかったとも語っています。
4人のルーツもさまざまです。三輪さんと田村さんは静岡県藤枝市で育った幼なじみで、﨑山さんは栃木県佐野市の出身です。草野さんは2018年1月に始まったTOKYO FMのラジオ番組『SPITZ 草野マサムネのロック大陸漫遊記』で、ロックの魅力を語ってきました。2026年9月22日には、番組から生まれたイベント「ロク漫祭」を有明アリーナで開き、海外のTeenage FanclubやRide、羊文学と同じステージに立っています。2007年には、メンバー自身が書いた本『旅の途中』も出しました。
2026年はメジャーデビューから35年の年です。結成から39年、同じ4人で鳴らす音は、新作『kettle』と2027年のツアーへとつながっていきます。


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