
『VIVANT』の乃木卓、『おっさんずラブ』の牧凌太、『世界は3で出来ている』で一人で演じた三つ子。林遣都さんと聞いて思いうかべる役は、人によってちがうと思います。そんな林遣都さんの俳優の道は、中学3年生の修学旅行から始まりました。渋谷駅のホームでスカウトされた滋賀県の中学生が、どんな作品を重ねてきたのかを順番にたどります。
林遣都さんの生い立ち、修学旅行の渋谷駅でスカウトされた中学3年生
林遣都さんは1990年12月6日生まれ、滋賀県大津市の出身です。幼いころに始めた野球を、趣味と特技にあげています。中学3年生のときには友だちとバンドを組み、高校に進むと軽音楽部でギターを担当しました。好きなミュージシャンには峯田和伸さんの名前をあげています。
芸能界に入るきっかけは2005年、中学3年生の修学旅行でした。東京を訪れたとき、渋谷駅のホームでスカウトされたのです。当時は班で行動していて、同じ班の女子生徒が渋谷に行きたいと言ったことが大きかったそうです。2017年の映画の舞台あいさつでは、その同級生への感謝を話しています。
その一言がなければ、渋谷駅のホームに立つこともなかったかもしれません。修学旅行の班行動が、そのまま俳優の道につながったことになります。
映画『バッテリー』で主演デビュー、その年の新人賞を次々に受賞
スカウトから2年後の2007年、林遣都さんは映画『バッテリー』の主演で俳優デビューします。演じたのは主人公の野球少年、原田巧です。この映画の公開日にあたる2007年3月10日を、林遣都さんは自分のデビュー日としています。
初めての映画で、演技は高く評価されました。第31回日本アカデミー賞の新人俳優賞、第81回キネマ旬報ベスト・テンの日本映画新人男優賞、第22回高崎映画祭の最優秀新人賞、第17回日本映画批評家大賞の新人賞を受賞しています。デビューの年に、これだけの新人賞が並びました。
同じ2007年の8月には、フジテレビの『千の風になって ドラマスペシャル 第1弾「家族へのラブレター」』で福原康平を演じ、テレビドラマにも出演しました。映画の主演で名前を知られた林遣都さんは、ここから映画とドラマの両方で役を重ねていきます。
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10代はスポーツ映画の主演が続き、連続ドラマへ広がった役
10代のころの林遣都さんは、身体能力の高さを見込まれてスポーツ映画に出ることが多くありました。役作りのトレーニングはかなりきびしいものだったといいます。2008年には『ちーちゃんは悠久の向こう』の久野悠斗、『DIVE!!』の坂井知季、北乃きいさんとダブル主演の『ラブファイト』の立花稔と、主演作が3本公開されました。
2009年には映画『風が強く吹いている』で蔵原走を主演で演じます。同じ年の『小公女セイラ』の三浦カイト役は、初めての連続ドラマでした。2011年にはWOWOWの『コヨーテ、海へ』の北村春哉役でテレビドラマに初めて主演し、『荒川アンダー ザ ブリッジ』の市ノ宮行(リク)役で連続ドラマにも初めて主演しています。この作品は2012年に映画にもなり、同じ役で主演を続けました。
2010年の映画『パレード』では小窪サトルを、ドラマ『美丘-君がいた日々-』では橋本太一を演じました。2012年は映画『闇金ウシジマくん』の小川純、『悪の教典』の前島雅彦も演じています。2014年にはNHKのドラマ『銀二貫』で主演の松吉を務めました。野球少年から始まった役の幅が、20代に入って少しずつ広がっていったことが作品名からも分かります。
デビュー10年で語ったイメージを覆す思い、『しゃぼん玉』とハムレット役
2017年はデビューから10年の節目でした。この年の3月4日に公開された主演映画『しゃぼん玉』は、乃南アサさんの小説が原作です。林遣都さんが演じた伊豆見翔人は、犯罪を重ねてきた男性です。逃亡先の宮崎県の山奥で老婆と出会い、自分の人生を見つめ直していきます。公開初日の舞台あいさつでは、デビュー10周年の喜びを話しました。
この時期の取材では自分のイメージを覆していきたいと語っています。その言葉のとおり、2017年の仕事はさまざまです。連続テレビ小説『べっぴんさん』の河合二郎を演じ、映画『青禾男高』の柴田役で初めて中国映画に出演しました。NHKの『精霊の守り人』シリーズではシュガを2016年から演じ、『HiGH&LOW』シリーズでは日向紀久として映画にも出ています。
舞台でも役を広げています。2016年の『家族の基礎〜大道寺家の人々〜』で大道寺益人を演じ、2017年には『子供の事情』のホジョリン、『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』のハムレットを続けて演じました。2019年の舞台『熱帯樹』では主演の勇を務めています。2022年の舞台『セールスマンの死』ではハッピーを演じました。
『おっさんずラブ』の牧凌太で話題に、一人三役の『世界は3で出来ている』
2018年、林遣都さんはテレビ朝日のドラマ『おっさんずラブ』で牧凌太を演じます。この役で第22回日刊スポーツ・ドラマグランプリの助演男優賞を受賞しました。役は2019年の『劇場版 おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』、2024年の『おっさんずラブ -リターンズ-』へと続いていきます。2020年7月に330人が投票した「浴衣が似合う俳優ランキング」で1位になったのも、このドラマの影響でした。
2019年には大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の大横田勉を演じました。同じ年の10月からは連続テレビ小説『スカーレット』に大野信作役で出演し、2020年3月まで演じています。
2020年6月11日に放送された『世界は3で出来ている』は、林遣都さんが単独で出演したフジテレビのドラマです。一卵性の三つ子である望月勇人、泰斗、三雄の3人を一人で演じました。この作品は第58回ギャラクシー賞のテレビ部門で大賞を受賞しています。ギャラクシー賞は、放送の優れた番組などに贈られる賞です。そのあとも2020年の『姉ちゃんの恋人』の吉岡真人、2021年の『ドラゴン桜』第2シリーズの坂本智之と、話題のドラマへの出演が続きました。
林遣都さんが演じた『VIVANT』の乃木卓と、北野武役を務めた音楽劇
主演映画も続きます。2021年には『犬部!』の花井颯太を演じ、小松菜奈さんとダブル主演の『恋する寄生虫』では高坂賢吾を演じました。2022年のドラマ『初恋の悪魔』では、仲野太賀さんとダブル主演で鹿浜鈴之を演じました。そして2023年7月から9月にかけてTBSで放送された『VIVANT』で演じたのが、乃木卓です。
監督の福澤克雄さんには、出演した『ドラゴン桜』のときから魅了されていたと、林遣都さんは2023年のインタビューで話しています。モンゴルでの撮影はきびしいものでしたが、その環境が作品の世界に入りやすくしてくれたそうです。役については「1つ1つのシーンに覚悟を持って挑みました」と振り返りました。2026年7月26日に放送が始まった第2シーズンにも、同じ乃木卓役で出演しています。
同じ2023年には音楽劇『浅草キッド』で主演の北野武役を務めました。明治座、新歌舞伎座、愛知県芸術劇場で上演された作品です。2024年の舞台『帰れない男〜慰留と斡旋の攻防〜』でも主演を務め、2025年には舞台『やなぎにツバメは』で修斗を演じています。映像と舞台を行き来する仕事のしかたが、ここにも表れています。
書道の特技を打ち明けた話も、仕事の外で見せる林遣都さんの素顔
林遣都さんには思わず笑ってしまう話もあります。野球のほかに特技として書道も公表していましたが、のちに、少しかじった程度だと打ち明けました。NHKの高瀬耕造アナウンサーに似ているという声がネットに出ていることも、本人の耳に入っているそうです。
共演をきっかけにした友だちづきあいも知られています。松下洸平さんとは『スカーレット』の共演から仲を深めました。髙橋海人さんとは『姉ちゃんの恋人』の共演で友人になり、おたがいの家を行き来するほどの仲です。
旅の番組でも顔を見せています。2010年にはBS日テレの『世界水紀行スペシャル 水と氷の大地 林遣都アラスカを行く』でアラスカを旅し、2014年にはTBS系の『チキュウノハテ〜星降る砂漠と幻の花園・南米大陸へ〜』でロケのリポーターを務めました。2017年にはWOWOWのドキュメンタリーでナレーションも担当しています。2025年8月からはBS-TBSの『奈良ふしぎ旅図鑑』でふしぎ案内人を担当し、同じ月には特別番組『林遣都 技と心にふれる法隆寺旅』も放送されました。2026年3月1日には公式のInstagramも始めました。
朗読劇から2027年公開予定の主演映画へ、林遣都さんのこれから
映画では2023年の『隣人X 疑惑の彼女』で笹憲太郎を、2024年の『身代わり忠臣蔵』で斎藤宮内を演じました。2025年にはフジテレビのドラマ『明日はもっと、いい日になる』で蔵田総介を演じました。2026年の出演作には、小栗旬さんが主演を務めたNetflixのシリーズ『ガス人間』、『教場 Reunion』があります。『京都人の密かな愉しみ Rouge 継承』では、シリーズで演じてきた若林ケント幸太郎を演じています。
舞台の仕事も続きます。2026年9月に東京のフジテレビ本社にある球体展望室で上演するものとして発表されたのが、オリジナル朗読劇『春、君と逢えたら』です。林遣都さんが主演を務め、中江功さんが演出を担当します。さらに映画『モネ 時の海を渡った絵』では主演の園部龍を演じ、2027年10月15日の公開が予定されています。
修学旅行の班行動がきっかけでスカウトされた中学生は、映画の主演から始まって、ドラマの一人三役や舞台の主演までこなす俳優になりました。次はどんな役で、これまでのイメージを覆してくれるのか、新しい作品を待ちたくなります。
写真: Ogiyoshisan / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commonsより)


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