鹿児島で育った榮倉奈々さんは三味線の準師範
ドラマ『Nのために』から12年。2026年秋、榮倉奈々さんがふたたびテレビドラマの主演に戻ってきました。テレビ朝日の『あにいもうと』で、赤楚衛二さんと並んで物語の真ん中に立っています。その出発点は、中学3年生のときに渋谷の街角で声をかけられたことでした。
榮倉さんは1988年2月12日、鹿児島県で生まれました。所属は研音です。女優として知られていますが、タレント、ファッションモデル、そして実業家という顔も持っています。
子どものころの姿を伝える資料は多くありませんが、中学時代は演劇部に入っていたことが分かっています。人前で役を演じる経験は、芸能界に入る前から始まっていたわけです。
もうひとつ意外なのが、和の芸ごとです。特技は三味線で、藤本流の準師範。民謡では名取りの資格を持っています。準師範も名取りも、流派の中で技を認められた人に与えられる資格です。どちらも長く稽古を重ねないと届かない段位で、華やかなモデルの印象とは違う、地道に積み上げるタイプの一面がうかがえます。
中学3年生で渋谷109の前から芸能界へ
芸能界への入口は、2002年のスカウトでした。中学3年生だった榮倉さんは、渋谷の「109」の前で声をかけられ、この世界に入ります。
最初の大きな舞台は、女性向けのファッション誌『SEVENTEEN』でした。専属モデルとなり、2002年15号から2009年12月号まで、およそ7年にわたって誌面に登場しています。同世代の読者にとっては、雑誌の中のおなじみの顔だったはずです。
モデルの仕事と並行して、映像作品にも出始めます。2003年には映像作品『O-HA-NA 〜夢色絵本〜』、2004年には『nana d-BOMB』を発表しました。16歳の誕生日にあたる2004年2月12日には、写真集『HBD16』も出ています。
2005年からはTOKYO FMのラジオ『SCHOOL OF LOCK!』内の「GIRLS LOCKS!」で第1週を担当し、2010年9月まで続けました。雑誌、映像、ラジオと、10代のうちにさまざまな場所で経験を重ねていったのです。
あわせて読みたい:石橋静河の生い立ちと軌跡はこちら
モデルから女優へ、NHKドラマ『ジイジ』で始まった芝居の道
女優としての一歩は、2004年のNHKドラマ『ジイジ〜孫といた夏〜』でした。演じたのは片岡あたる役で、翌2005年の『ジイジ2〜孫といた夏〜』にも同じ役で出演しています。同じ2004年には映画『スペースポリス』でヒロインのユカリ役も務めました。
2005年にはフジテレビの『危険なアネキ』で田村愛役を演じ、連続ドラマの現場を経験します。そして2006年、フジテレビの『ダンドリ。〜Dance☆Drill〜』で相川要役を演じ、ドラマ初主演を果たしました。
2007年は出演作が一気に増えた年です。映画では『僕は妹に恋をする』でヒロインの結城郁役、『渋谷区円山町』で加藤由紀江役、『檸檬のころ』で秋元加代子役、『阿波DANCE』で川村茜役を演じ、主演作が続きました。
テレビでは『プロポーズ大作戦』で奥エリ役を演じ、テレビ朝日の『めぞん一刻』では七尾こずえ役を演じています。モデル出身の新人という立場から、作品の数をこなしながら役者としての土台を固めていった時期です。
朝ドラ『瞳』のヒロインが大きな転機に
大きな転機は2008年に訪れます。NHK連続テレビ小説『瞳』で、主人公の一本木瞳を演じたのです。朝ドラのヒロインは毎朝、全国の家庭に顔を届ける役目です。この作品をきっかけに、榮倉さんの名前は世代をこえて知られるようになりました。
同じ2008年3月には、初めての書籍『207-ハタチのナナ-』を集英社から出しています。20歳になったばかりの節目に、本という形で自分を表現した年でもありました。
2009年、榮倉さんは「セブンティーン夏の学園祭」で『SEVENTEEN』のモデルを卒業します。中学生のころから続いた専属モデルの仕事に区切りをつけ、女優の道に軸足を移していきました。
その年の1月から放送されたフジテレビの『メイちゃんの執事』では、水嶋ヒロさんとともに主演を務め、東雲メイ役を演じています。7月にはTBSの夏うたドラマSP『幸せの贈り物』で望月瑠璃役を務め、主演作が続きました。モデル卒業の年に主演ドラマが重なったことは、次の時代の始まりを感じさせます。2010年には吹き替えにも挑み、映画『コララインとボタンの魔女 3D』で主人公のコララインの声を担当しました。
榮倉奈々さんが新人賞を手にした『余命1ヶ月の花嫁』
女優としての評価を大きく高めたのが、2009年5月に公開された映画『余命1ヶ月の花嫁』です。瑛太さんとのW主演で、長島千恵役を演じました。
この作品で榮倉さんは、2010年に第33回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞します。同じ年には、『余命1ヶ月の花嫁』『メイちゃんの執事』『幸せの贈り物』で第34回エランドール賞の新人賞も受けました。2010年は、フジテレビの連続ドラマ『泣かないと決めた日』で角田美樹役の主演も務めています。
評価はその後も続きます。2011年公開の映画『東京公園』では富永美優役を演じ、2012年に第26回高崎映画祭の最優秀助演女優賞を受賞しました。岡田将生さんとW主演した『アントキノイノチ』では久保田ゆき役を演じ、この作品はモントリオール世界映画祭のワールド・コンペティション部門でイノベーションアワードを受けています。
さらに『東京公園』『アントキノイノチ』の2作で、第21回日本映画プロフェッショナル大賞の主演女優賞にも選ばれました。助演と主演の両方で賞を受けたことで、作品の中でどんな位置に立っても力を出せる女優として認められていったのです。
甲斐姫から笠原郁まで、役の幅を広げた2010年代
2012年からは、時代劇からアクションまで、演じる世界が一気に広がります。映画『のぼうの城』では甲斐姫を、2013年の『図書館戦争』では笠原郁を演じ、どちらもヒロインを務めました。『図書館戦争』は2015年の『図書館戦争 THE LAST MISSION』へと続いています。
ドラマでは、2012年にTBSの『黒の女教師』で高倉夕子役の主演を、2013年には『確証〜警視庁捜査3課』で高橋克実さんとともに主演を務めました。2014年にはTBSの『Nのために』で杉下希美役を演じ、同じ年に映画『わたしのハワイの歩きかた』でも小山田みのり役で主演しています。
2015年には豊川悦司さんとW主演した映画『娚の一生』で堂薗つぐみ役を、2016年には『64-ロクヨン-』前編・後編でヒロインの美雲役を演じました。同じ2016年にはTBSの『99.9-刑事専門弁護士-』でヒロインの立花彩乃役を務め、2021年の映画版でも同じ役を演じています。
2018年には映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』で安田顕さんとW主演し、加賀美ちえ役を演じました。2020年にはTBSの『テセウスの船』でヒロインの佐野和子役を、映画『糸』で桐野香役を務めています。2015年の劇場アニメ『名探偵コナン 業火の向日葵』では宮台なつみ役を担当し、テレビ朝日やBS朝日の『地球の目撃者』シリーズではナレーターも務めました。
ブランドの立ち上げと12年ぶりの主演作『あにいもうと』
2020年代に入ると、榮倉さんは女優の仕事に加えて新しい挑戦を始めます。2022年にはTBSの『オールドルーキー』で新町果奈子役を演じ、Amazon Prime Videoの『モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形〜』では佐藤加奈役で出演しました。
2023年10月6日には、アパレルブランド「newnow」を立ち上げたことを発表しました。新たにつくった「株式会社LAND NK」のCEOにも就いています。2024年からは、みずほ銀行、MTGの「ReFa」、味の素AGFの「AGFインスタントコーヒー」などのCMにも起用されました。
そして2026年、テレビ朝日に新しくできた土曜22時のドラマ枠、その第1作『あにいもうと』で主演を務めることになります。放送は2026年10月17日に始まりました。テレビドラマの主演は、2014年の『Nのために』以来12年ぶりです。赤楚衛二さんとのW主演で、2人は今作が初共演です。
榮倉さんが演じるのは、港町の汐見崎市民病院で働く総合内科医の春木奈緒。赤楚さんは、妹を支えながら造船所で働く青年、園田修司を演じます。脚本は吉田紀子さんです。主演の発表にあたり、榮倉さんは「まさか12年ぶりとは…と驚いています。」とコメントしていました。
ONE PIECE好きの素顔と榮倉奈々さんのこれから
仕事の外の顔も、少しのぞいてみます。榮倉さんは漫画『ONE PIECE』が大好きで、コミックスも持っています。映画では、『余命1ヶ月の花嫁』で一緒に仕事をした廣木隆一監督の『ヴァイブレータ』がお気に入りの一本です。
家では「そぼろ」という名前の犬と、「テトラ」という名前のオスのベンガル猫を飼っています。テトラのことは「てっちゃん」と呼んでかわいがっているそうです。尊敬する女優は篠原涼子さん、俳優は西田敏行さん。仲のよい友人には絢香さん、長澤まさみさん、水川あさみさんらの名前があがっています。
もともと運動は好きではなかったそうですが、『図書館戦争』のアクションのために半年ほど訓練を受けたことで、体を動かすのが好きになりました。トライアスロンへの参加を目標に掲げたこともあります。役のために始めたことが、自分の楽しみに変わったのです。
スカウトから20年あまり。モデル、朝ドラのヒロイン、映画賞、そしてブランドの立ち上げと、榮倉さんは歩みを止めずに新しい場所へ進んできました。12年ぶりの主演作『あにいもうと』で見せる春木奈緒の姿は、その先の活躍を占う一作になりそうです。


コメント