
令和ロマン、M-1連覇のあとに約2万人のKアリーナへ
2026年5月16日、令和ロマンは神奈川のKアリーナ横浜で単独ライブ「RE:IWAROMAN」を開きました。約2万人が入る大きな会場で、コンビにとっては2019年以来の単独ライブで、2人の出会いから10年の節目にあたる集大成として開かれました。ライブの途中には、髙比良くるまさんが初めて監督と脚本を手がけた短編映画『BREAK SHOT』がサプライズで上映されました。
令和ロマンは、M-1グランプリで2023年と2024年に続けて優勝しました。大会の歴史で初めての2連覇です。ボケのくるまさんと、ツッコミの松井ケムリさん。2人はもともと、慶應義塾大学のお笑いサークルの先輩と後輩でした。
サークルの飲み会でたまたま2人きりになり、そのままコンビを組んだのが始まりです。大学のサークルから日本一の漫才師へ。そして映画監督や声優の仕事にまで広がっていった2人の歩みを、順にたどってみます。
練馬のラグビー少年と横浜の卓球少年、2人の出発点
くるまさんは1994年9月3日、東京都練馬区の生まれです。本名は髙比良直樹さん。本郷中学校・高等学校ではラグビー部に入り、おもにフランカーというポジションでプレーしました。一人っ子で、子どものころは毎週『踊る!さんま御殿!!』を見るのが楽しみだったそうです。明石家さんまさんやとんねるずさん、ビートたけしさんのような、とにかくしゃべって笑わせる芸風に強く影響を受けました。高校を出て1年間浪人し、慶應義塾大学文学部に入りました。
受験のいきさつも少し変わっています。ラグビー部の同期が慶應や早稲田を記念に受けると話していたので、自分も一緒に受けてみたら合格した、と振り返っています。
ケムリさんは1993年5月29日、神奈川県横浜市の生まれです。本名は松井浩一さん。桐朋中学校・高等学校では卓球部に入り、団体戦で東京都ベスト8まで勝ち進みました。大学浪人のころ、楽しみだったのはテレビの『アメトーーク!』を見る時間だけだったといいます。そこからお笑いの良さに気づき、興味を持つようになりました。その後、慶應義塾大学法学部法律学科に進んでいます。
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慶應のお笑いサークルで生まれた魔人無骨
2人が出会ったのは、慶應義塾大学のお笑いサークル「お笑い道場O-keis」です。くるまさんはやる気にあふれ、同時に9つほどのコンビを組んでいました。一方のケムリさんは、バンドサークルの総合音楽研究会でベースを担当し、お笑いよりもバンド活動に力を入れていました。
ケムリさんが3年生、くるまさんが2年生のとき、飲み会の席で2人きりになり、その流れでコンビを結成します。最初の名前は「魔人無骨」。名づけたのはケムリさんで、戦国武将の森長可が使ったとされる槍「人間無骨」から取りました。自分たちの名前で検索しやすいように、「人間」を一段上の「魔人」に変えたそうです。
大学時代にはお笑いサークル日本一を決める「NOROSHI」にも出場し、2015年の「大学生M-1グランプリ」では準優勝しました。その後、くるまさんはケムリさんのNSC入学に合わせて大学を中退し、2人そろってプロの道へ進みます。自分の都合でやめることになった大学の学費は、在学中にアルバイトや派遣の仕事をたくさんこなして、全額自分で払ったそうです。
NSC首席から令和初日の改名へ
2017年、2人はNSC東京校に23期生として入りました。2018年2月の「NSC大ライブTOKYO 2018」では、同期133組の中で優勝し、首席で卒業します。8月には初めての単独ライブ「CO-OP OLYMPIA」をヨシモト∞ホールで開きました。
12月には、ヨシモト∞ホールのいちばん上のクラス「ファーストクラス」に上がります。芸歴1年目での昇格は、異例の早さでした。ただ、翌2019年6月にはセカンドクラスに下がり、順調なだけの道ではありませんでした。
同じころ、コンビ名を変える決心をします。「魔人無骨」という名前には、お客さんや周りから、怖い、読めないといった声が多く寄せられていました。先輩のたかしさん(トレンディエンジェル)に強くすすめられ、その場にいた徳井健太さん(平成ノブシコブシ)から元号を入れてみてはと助言を受けます。こうして、新しい元号が始まった2019年5月1日から「令和ロマン」になりました。同じく新元号を名前に入れていた先輩の令和喜多みな実さんには、事前に連絡を取っています。7月には『ゴッドタン』の「一目置かれている芸人」で2位に選ばれました。
神保町の劇場で磨いた令和ロマンの漫才
2020年1月、2人は新しくできた神保町よしもと漫才劇場の所属メンバーになり、2月には初代のSクラスに入りました。同じ年には、第7回NHK新人お笑い大賞で優勝しています。stand.fmの番組『令和ロマンのご様子』や、YouTubeの「official令和ロマン」が始まったのもこの年です。
ラジオでも名前を広げていきます。2020年の大みそかに放送された『三四郎のオールナイトニッポン』の企画で、もっとも活躍した演者に選ばれ、2021年2月に『令和ロマンのオールナイトニッポン0』を担当しました。
ネタ作りは、くるまさんがテーマと大まかな流れを考え、それをもとに2人で話し合って仕上げることが多いそうです。大喜利はケムリさんのほうが得意なので、細かなボケはケムリさんが考え、穴埋め問題のように作っていきます。漫画『【推しの子】』やドラマ『下町ロケット』『SHOGUN 将軍』など、大ヒット作を題材にした漫才も得意です。
ABCお笑いグランプリでは2022年と2023年に2年続けて準優勝しました。M-1グランプリの敗者復活戦をきっかけに、2023年はほぼ毎月、ヤーレンズさんとのツーマンライブ「ヤレロマ」を開いています。2組は、いつか一緒に決勝の最終3組に残ることを目標にしていました。
M-1グランプリでトップバッター優勝、そして史上初の2連覇
2023年、結成6年目の令和ロマンは、M-1グランプリの決勝に初めて進みます。出番は、一般に不利といわれる1番手でした。それでも648点を取り、3位で最終決戦へ。最後はヤーレンズさんと4票対3票の接戦になり、令和ロマンが優勝しました。トップバッターでの優勝は中川家さん以来で、芸歴5年9か月での優勝は、それまでの最短記録を塗りかえるものでした。目標どおりヤーレンズさんと最後に競い合えたことを、2人は自分たちが目指した世界だったと話しています。
2024年3月には神保町の劇場を卒業し、7月には第45回ABCお笑いグランプリで優勝。M-1王者がそのあとABCお笑いグランプリを制したのは、大会の歴史で初めてでした。
そして2024年12月、前の年の王者としてM-1グランプリに挑みます。2年続けて1番手となったファーストラウンドで850点を取り、2位で最終決戦へ。5票を集め、M-1史上初の2連覇を成しとげました。同じ2024年には、くるまさんがマヂカルラブリーの野田クリスタルさんと即席のコンビを組んだ『THEゴールデンコンビ』でも優勝しています。
令和ロマンのいま、映画監督と声の仕事へ
いまの2人は、漫才の外にも活躍の場を広げています。TBSの『ラヴィット!』には、2024年4月から木曜の隔週レギュラーとして出演しています。テレビ朝日の『永野&くるまのひっかかりニーチェ』も2024年10月から続いています。
くるまさんは2025年10月公開の映画『ミーツ・ザ・ワールド』で奥山譲の役を演じ、これが初めての映画出演でした。2026年7月公開の映画『チルド』では室田の役を務めています。初監督作の『BREAK SHOT』は、全編がドライブレコーダーの視点で進む会話劇です。オダギリジョーさんや高良健吾さん、森川葵さんが出演し、ケムリさんも軽トラックの運転手の役で登場しました。2026年7月31日から渋谷のシネクイントなどで劇場公開され、シンガポールの映画祭「World Film Carnival Singapore」の短編部門では作品賞、プロデューサー賞、脚本賞を受けています。
ケムリさんは、2026年7月公開の『トイ・ストーリー5』の日本語吹き替え版で、デジタルマップのおもちゃ、アトラスの声を担当しました。9月公開の劇場アニメ『我々は宇宙人』ではバタ原の役を演じています。9月からはBSよしもとで冠番組『松井ケムリの路地酔い気分。』も始まりました。2025年10月からはABCテレビの『探偵!ナイトスクープ』で探偵も務めています。
漫画とバンドが好きな2人の素顔とこれから
くるまさんは漫画が大好きで、『モテキ』『ハイキュー!!』『アイシールド21』を特に好きな作品に挙げています。映画『BLUE GIANT』に心を動かされてから、ジャズ・ファンクをよく聴くようになりました。芸名の「くるま」は、運転免許を持っていないことを覚えておくためにつけた名前です。その免許は、2023年3月に取りました。野球は横浜DeNAベイスターズを応援しています。2024年11月には著書『漫才過剰考察』を出し、同じ年にForbes JAPAN 30 UNDER 30に選ばれています。
ケムリさんはオードリーのファンで、尾崎豊さんやASIAN KUNG-FU GENERATION、BUMP OF CHICKENの音楽が好きです。コンビでもアジカンの「リライト」をカバーしたことがあります。友人3人と立ち上げたYouTube「僕らの別荘」にも出演しています。2026年には『ナマケモノの朝は、午後からはじまる。』『ちがうちがう』と2冊の本を出しました。
くるまさんには、いつかお笑い以外の音楽や演劇も交わる漫才の劇場をつくりたいという夢があります。M-1については、また大会が盛り上がらなくなってきたら出るかもしれない、と含みを残しています。サークルの先輩と後輩から始まった2人が、次にどんな舞台を見せてくれるのか。これからも目が離せません。
写真: Kst01 / CC BY-SA 4.0 (Wikimedia Commonsより)


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