堤真一、真田広之の付き人から『やまとなでしこ』『ALWAYS』へ 27年ぶり日曜劇場主演

堤真一さん、27年ぶりの日曜劇場主演から秋の『もうパパ!』へ

2026年4月、TBSの日曜劇場『GIFT』が始まりました。主演の堤真一さんが演じたのは、大学でブラックホールを研究する宇宙物理学者・伍鉄文人です。頭は切れるのに、思ったことをそのまま口にして周りとぶつかってしまう人。そんな伍鉄が、3年間勝ちのない車いすラグビーチーム「ブレイズブルズ」と出会い、日本一にすると言い出すところから話が動きます。堤さんの日曜劇場主演は、1999年の『ザ・ドクター』以来、約27年ぶりでした。

放送前のコメントで堤さんは、この作品の主役は車いすラグビーだと話し、「あくまでも僕はうまくサポートする立場でいたいと考えています。」と語っていました。チームのエース・宮下涼を演じたのは山田裕貴さんです。日本車いすラグビー連盟が監修し、選手役の俳優たちは撮影に入る何か月も前から練習を重ねて撮影にのぞみました。

2026年10月からは、ABCテレビ・テレビ朝日系の『もうパパ!』で、原菜乃華さん演じる娘・紀子の父親、多良山良詫を演じています。脚本は『虎に翼』の吉田恵里香さんです。主役も脇役も自在にこなす堤さんですが、その始まりはアクション俳優の養成所と、ある大スターの付き人でした。

甲子園のそばで育った足の速い野球少年

堤さんは1964年7月7日、兵庫県西宮市で生まれました。阪神甲子園球場の近くで育ち、家は球場から歩いて2キロほどのところにありました。「真一」という名前には、真実一路に生きてほしいという父の願いがこめられています。

少年時代はとにかく足が速く、西宮市の小学校の連合体育大会では、学校別リレーでいつもアンカーを任されていました。小学校から中学校までは野球に打ちこみ、高校1年生まで野球部にいました。野球だけをしていれば安心できたので、夢中で練習していたそうです。高校1年で野球部をやめたあとは、自分はこの先どうやって生きていくのだろうと、将来への不安を初めて感じたといいます。

1983年に西宮市立西宮東高等学校を卒業します。もともとは人前に出るのが大の苦手で、いまでも人前で演じることが恥ずかしくなるときがあるといいます。のちに舞台の真ん中に立つ人が、最初は目立つことを好まない少年だった。そこに堤さんの意外な一面があります。

あわせて読みたい:志田未来の生い立ちと軌跡はこちら

JACに入り、真田広之さんの付き人をつとめた日々

高校を出た1983年、堤さんは友人に誘われて、千葉真一さんが主宰するジャパンアクションクラブ(JAC)の養成所オーディションを受けました。運動神経のよさもあって合格し、18歳で京都養成所の第1期研修生になります。翌1984年5月には選抜クラスに選ばれて上京し、JACの14期生として正式に入団しました。同期には浅利俊博さんや岡元次郎さんらがいます。同じ年、ミュージカル『ゆかいな海賊大冒険』で初舞台を踏んでいます。

JAC時代の堤さんは、真田広之さんの付き人でした。クーラーボックスに真田さんの好きなジュースを入れて持ち歩き、いつでも渡せるようにしていたそうです。いまでも真田さんの前に出ると緊張して、付き人のころの気持ちに戻ってしまうと話しています。

転機は1985年12月です。坂東玉三郎さん主演の舞台『天守物語』に、黒衣(くろご。黒い衣装で舞台の道具の出し入れなどをする役目)として参加しました。そこで坂東さんから、芝居心があるからお芝居をしなさいと何度も声をかけられ、本気で役者を目指すようになります。約4年いたJACを、1987年に退団しました。

風呂なしアパートで7年以上、舞台にかけた20代

『天守物語』に心をつかまれ、舞台に関わって生きていこうと決めた堤さん。20代は風呂なしのアパートで一人暮らしをし、昼は稽古、夜は工事現場や飲食店でアルバイトという毎日でした。そのアパートには7年以上住んでいたといいます。

JACを出てからは、TPT(シアタープロジェクト・東京)の舞台を中心に、デヴィッド・ルヴォーさん、蜷川幸雄さん、野田秀樹さん、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんら、名だたる演出家の作品に出ていきます。イギリス人演出家のルヴォーさんからは、お客さんはお前ではなく、役と役の関係や話の流れを見に来ている、だから相手との会話を成立させることに集中しろと教わりました。役者の仕事は自己主張ではない。この考えは、ここで身についたものです。

映像の仕事も少しずつ増えました。1987年にNHKドラマスペシャル『橋の上においでよ』で、23歳にしてテレビドラマ初主演。同じ年に『独眼竜政宗』で大河ドラマに初めて出て、1988年の『武田信玄』では武田義信を演じます。1992年には五社英雄監督の遺作となった映画『女殺油地獄』で河内屋与兵衛を、1994年には野田さんのNODA・MAP旗揚げ公演『キル』で主演をつとめました。

『ピュア』と『やまとなでしこ』でお茶の間に届いた堤真一さん

1996年1月、堤さんはドラマ『ピュア』でヒロインの相手役を演じます。民放の連続ドラマに出るのはこれが初めてでした。舞台が中心だった堤さんをテレビで見られるのは珍しく、一気に注目を集め、人気を得ていきます。同じ年にはSABU監督の映画『弾丸ランナー』で長編映画初主演。ここからSABU監督の長編では5作続けて主演をつとめました。1997年には舞台『キル』『ピアノ』の演技で、第32回紀伊國屋演劇賞の個人賞を受けています。

2000年7月に、いまの所属事務所シス・カンパニーへ移りました。同じ年、フジテレビの月9ドラマ『やまとなでしこ』で、松嶋菜々子さん演じるヒロインの相手役・中原欧介を演じます。数学者の道をあきらめ、魚屋で働く青年です。平均視聴率26.4%、最高34.2%の大ヒットになり、堤さんの名前は一気に広まりました。

その後も『恋ノチカラ』『ランチの女王』『GOOD LUCK!!』と人気ドラマに次々と出演します。漫画『恋は雨上がりのように』の店長は、連載の最初のころ『やまとなでしこ』の堤さんをモデルに描かれていたそうです。

『ALWAYS』の鈴木オートと『容疑者Xの献身』の石神

映画でも、堤さんは代表作を重ねていきます。2005年の『ALWAYS 三丁目の夕日』では、自動車修理工場「鈴木オート」の社長・鈴木則文を演じました。仕事に誇りと情熱を持つ、昭和のお父さんです。シリーズは3作つくられ、累計の興行収入は110億円をこえました。堤さんはこの役などで、第29回日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞を受けています。

2008年の『容疑者Xの献身』では、天才数学者で高校教師の石神哲哉を演じました。役づくりのために前髪を白く染め、髪の一部をそり落として撮影にのぞんでいます。監督の西谷弘さんは、堤さんの芝居を見て、映画の編集を組みかえたと明かしました。この作品と『クライマーズ・ハイ』で報知映画賞の主演男優賞を受け、主演と助演の両部門を受賞したのは史上4人目でした。

2013年にはNHKドラマ『とんび』の市川安男役で、国際エミー賞の最優秀俳優賞のファイナリストに選ばれます。俳優部門での日本人の選出は初めてでした。2014年の朝ドラ『マッサン』では「やってみなはれ!」が口ぐせの鴨居欣次郎を、2021年の大河ドラマ『青天を衝け』では平岡円四郎を演じ、退場後には「円四郎ロス」という言葉も生まれました。2021年の映画『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』では、裏の顔を持つNPO代表・宇津帆を演じ、日本アカデミー賞の優秀助演男優賞に選ばれています。

古武道の黒帯に薪ストーブ、堤真一さんの素顔

仕事の外の堤さんは、とても多趣味です。特技は古武道で、柳生心眼流の黒帯を持っています。柔術や剣術も得意です。趣味には薪ストーブ、神社やお寺めぐり、キャンプ、料理、写経、サウナ、カメラ、DIYなどが並びます。犬を飼っていて、ドキュメンタリー番組を見るのも好きだそうです。

野球少年だった堤さんは、大の阪神タイガースファンでもあります。子どものころは周りに巨人ファンが多かったのですが、小学2年生のとき、甲子園のこんなに近くに住む自分が阪神を応援しなくてどうするのかと思い立ち、阪神ファンになると宣言しました。2013年5月には甲子園で始球式をつとめ、ノーバウンドのストライクを投げています。2015年には、『マッサン』で鴨居欣次郎を演じた縁から、サントリーのウイスキーアンバサダーにも就任しました。

ふだんは関西弁で話し、トーク番組では共通語を使います。自他ともに認める「なで肩」で、主演舞台『才原警部の終わらない明日』では、役のコードネームが「なで肩」になったこともありました。後輩からの信頼も厚く、中村倫也さんは人生に大きな影響を与えた先輩の一人として、堤さんの名前をよくあげています。

原点は舞台、堤真一さんがこれから見せる顔

ここ数年の堤さんは、出演作の幅がさらに広がっています。2025年は映画『室町無頼』の骨皮道賢、『ババンババンバンバンパイア』の織田信長、三宅唱監督の『旅と日々』のべん造と、時代劇から喜劇まで出演が続きました。7月公開の『木の上の軍隊』では山田裕貴さんとダブル主演。終戦を知らないまま、沖縄・伊江島のガジュマルの木の上で生き抜いた日本兵2人の実話をもとにした作品で、堤さんは宮崎から来た上官・山下一雄を演じました。映画化の発表に寄せたコメントでは「沖縄が戦争で大きな被害を受けたことは知っていましたが、長い年月が経った今だからこそ、細かいことまでつまびらかにしていかなくてはならない、とあらためて感じました。」と話しています。

2025年秋には朝ドラ『ばけばけ』で、ヒロインの一家を支える雨清水傳を演じました。『マッサン』以来、約10年ぶりの朝ドラです。

それでも堤さんは、自分の原点は舞台だと言い続け、映像の仕事が増えてからも毎年欠かさず舞台に立っています。2025年秋には『ライフ・イン・ザ・シアター』でロバートを演じました。2027年2月から3月には、横山拓也さんがシス・カンパニーに書き下ろす新作『立板に水なす』(演出は寺十吾さん)で、東京・新潟・京都の舞台に立つ予定です。日曜劇場の不器用な学者に、2026年秋の『もうパパ!』の父親。舞台で鍛えた芝居の幅が、これからも新しい役を生んでいきます。

Follow me!

コメント

error: Content is protected !!
トップへ戻る
タイトルとURLをコピーしました